バイク好きならいつかは乗ってみたい、ハーレーダビッドソン。でも、その大柄なサイズに尻込みしてしまう人も多いはず。
まして、バイクの中型免許や乗用車の免許しか持っていないなら、「乗りたいけど、無理だな……」と諦めているだろう。
筆者もそのうちの一人。学生時代のバイクブームで中型免許「普通自動二輪車免許」は取得したけれど、やがて「普通自動車免許」を取得すると、日々の忙しさの中でバイクに乗る機会はめっきりと減って、大型バイクに乗る夢には結局、手が届かず……。
似たような状況で、ハーレーダビッドソンなど大型バイクを諦めているバイク乗りって、案外多いのではないだろうか。
そんな中、最新の2026年モデルをはじめとするハーレーダビッドソンのトライクに乗る機会を得た。
積年の想いを果たすのは今。梅雨前の晴天に憧れのハーレーダビッドソンにライドした。
なぜ「普通自動車免許」で乗れるの?
いちがいに3輪の車両といっても、様々な種類がある。
ハーレーダビッドソンのトライクの場合は、左右輪間の距離が460mm以上あり、4輪車のように車体を傾けず、ハンドルを切って曲がるタイプとなる。
これを一般的に「トライク」といい、道路交通法では普通自動車として扱われる。管轄は警察庁だ。そのため、「普通自動車免許(MT)」を保有していると運転できるのだ。
また、国土交通省が管轄の道路運送車両法では、側車(サイドカー)付二輪自動車扱いになる。車検証には「側車付二輪自動車」と表示されるので、ナンバープレートは二輪自動車のものとなる。
ちょっと説明がややこしくなったが、免許はマニュアル車が運転できる普通自動車のもの、車検などは側車付きの二輪自動車と区別するとわかりやすいはず。
そして新車登録時の車検は3年間、以後2年間有効となる。
ハーレーダビッドソンのトライクは普通自動車免許で乗れるため、ヘルメットの装着義務は発生しない。しかし、車室で覆われていないので、事故などで車両から振り落とされる可能性があり、また、走行中は飛び石や虫などに目などが当たるリスクもあるので、バイク用のヘルメットやグローブ、ブーツ、胸部や脊椎を守るプロテクターなどの装着が推奨される。
ちなみに、高速道路の走行も可能。法定速度は80km/hとなり、通行料金は2輪のバイク同様、「軽自動車等」が該当する。
ハーレーダビッドソンのトライクってこんな乗り物
では、2026年モデルのハーレーダビッドソンのトライクに乗る前に、操作などを確認していこう。モノ好きにはたまらないディテールが満載だ。
■「CVO STREET GLIDE 3 LIMITED」をチェック
今回乗った車両は、「CVO STREET GLIDE 3 LIMITED」でカラーは「エレクトリックコースト」だ。
まずは、車名の説明から。CVO とは、「カスタム ビークル オペレーションズ」の略。熟練した職人による手作業で組み上げられていて、パーツも細部までこだわった、完全受注生産による限定モデルだ。
「STREET GLIDE 3」とは、ハーレー伝統のバットウイングフェアリングをまとったグランド アメリカン ツーリングのトライクを指す。そして「LIMITED」は、プレミアムペイントやグラフィックなどを施した特別なモデルを意味する。
つまり、CVOによる、ストリートグライドのトライクの特別モデルと理解したい。希望小売価格は800万5800円~とこちらもスペシャル。ハーレーダビッドソンのトライクの頂点モデルとなる。
ちなみに日本で購入できるハーレーダビッドソンの2026年モデルのトライクは、「ROAD GLIDE 3」が553万5200円からラインアップする。
■気になるスペックをご紹介
モノ好きとしては、スペックがやはり気になるところ。ハーレーダビッドソンのトライクがどんなものか? ザックリ理解しやすいと思うので、簡単にご紹介しておこう。
全長:2685mm
シート高:735mm
燃料タンク容量:22.7L
車両重量:582kg
フロントタイヤ:130/60B19 61H
リアタイヤ:P215/45R18 83T
エンジン形式:Milwaukee-Eight(ミルウォーキーエイト) VVT 121
エンジン排気量:1977cc
最大出力:115HP/5020rpm
最大トルク:182Nm/3500rpm
■エンジンは空冷のミルウォーキーエイト VVT 121
「CVO STREET GLIDE 3 LIMITED」に搭載されるのは、ミルウォーキーエイト VVT 121エンジン。121という数字はキュービックインチを表し、121キュービックインチは1977ccとなる。
このエンジンはV型2気筒となるので、片バンクでの排気量は1000cc弱。6気筒なら6000cc級、8気筒なら8000cc級のエンジンと思うと、その巨大さを理解しやすいはず。
最大出力は115HPと控えめだが、最大トルクは182Nmを3500rpmで発生する。軽くスロットルをひねるとすぐに最大トルク近くとなるため、582kgの車重でもグイグイ加速する。
■ミッションは6速。リバースには電動モーターを採用
ミッションは6速。きめ細やかなシフトチェンジが可能となる。また、重量級のトライクにはリバースがもはや必須。2026年モデルの「CVO STREET GLIDE 3 LIMITED」は、電動モーターによるリバースが可能。
2025年モデルまではスターターモーターとリバースモーターが別だったが、2026年モデルのトライクはスターターモーターがリバースモーターもカバー。軽量化に貢献する。
また、ボタンではなくスロットル操作が可能となり、より安定してコントロールができるようになった。
■ディスプレイがデカイ。Apple CarPlayの日本語ナビやオーディオも完備
ロングツーリングでも快適なバットウイングフェアリングのおかげで、ディスプレイメーターは巨大。312mmのTFTディスプレイを採用。視野角も広くて日中でも見やすい。
Apple CarPlayに接続可能で、日本語でのナビも自在だ。また、フロントカウル左右、リアシートの左右には、専用設計のH-Dオーディオ パワードバイ ロックフォードフォズゲート ステージⅡシステムによる、オーディオスピーカーを搭載する。
■ベンチレーションが快適
大型フェアリングは快適でもあるが、やはり風を感じて走行したいもの。
「CVO STREET GLIDE 3 LIMITED」にはベンチレーションを各所に配してクーリングにも配慮される。
■グリップ回りは機能的
操作系が集中するグリップ回りも、機能的にまとめられている。
右手側は、キルスイッチやウインカースイッチ、ハザードランプやディスプレイのモード切り替えなどを配置。リバースへの操作もこちら側のスイッチを活用する。ディスプレイのモード切り替えも可能。
左手側は、トラクションコントロールやオートクルーズボタンなどを装備。ホーンボタンもこちら側に装備。
■ラゲッジスペースは大きく、使い勝手良好
ロングツーリングで安心な大容量201Lのラゲッジスペースを、「CVO STREET GLIDE 3 LIMITED」は用意する。
パッセンジャー用バックレストと一体になったトランクは、左方向に大きく開く。トップにはラゲッジラックが用意されており、アウトドアギアなどの積載に重宝する。もちろんキーロックが可能だ。
リアタイヤ間のトランクスペースは、後方に開放。キーロックができ、乗用車感覚での利用がありがたい。
リアサスの改良で、乗り心地が激変
「CVO STREET GLIDE 3 LIMITED」のディテールを細かくチェックしたところで、このトライクの大まかな姿がわかってきたはず。
そろそろ試乗といきたいが、2026年のハーレーダビッドソンのトライクでのエポックメイキングはリアサスペンションの改良だという。こちらの解説をしたい。
2026年モデルでは、ド・ディオン式のリアサスペンションを採用する。
従来のライブアクセルから変更することで、ホイールトラベルは58mmから127mmと2倍超へと伸展した。
さらに、2025年モデルまではディファレンシャルギアをスイングアームに付属していたが、改良によりボディ側(メインフレーム側)に搭載することとなった。
そのため、ばね下重量をなんと30kgも削減することに成功。これによりコーナーリング時の追随性が高まったという。
また、リアサスペンションの減衰力は、簡単に調整できる。
そこで、従来モデルと2026年モデルではリアサスペンションの可動域がどう変化したのか、波状路を使って試してみた。
■従来型は「ドスン、ドスン」と左右に揺さぶられる
まずは従来型のトライクで波状路を歩く程度の速度で通過してみる。
もちろん、リアサスにより衝撃を吸収する感覚はあるが、ストロークが足りないのか、波状路を走行するのに躊躇する。
ハンドルも左右に振られるので、直進を保つのが難しい。パッセンジャーにとっては正直不安しかないはずだ。
一方、2026年モデルでは、左右に振られるものの、振り落とされるような勢いではない。直進を保つのも容易だ。
ハーレーダビッドソンのトライクは大きいというより軽快だった
悪条件となる波状路を走行することで、トライクの安定性に自信を得た筆者。続いてS字路での走行を試してみた。
幅3m程度のS字路を走行すると、「これはバイクとは違うな」と思わされる。
それは「遠心力のかかりかた」と「車幅感覚の違い」だ。
バイクはコーナーでは基本、カーブの内側へと車体を傾ける。一方トライクはカーブでは遠心力が外側にかかるので、コーナーの外側に身体が傾く感覚となる。
この感覚に最初はちょっと戸惑う。そして、「コーナーでハンドルを切る」のも新鮮だ。
2輪やリーン(傾く)3輪バイクの場合、コーナーでハンドルを切るというよりは、目線をコーナーの先に向けて、身体を傾けることでカーブを曲がっていくが、明らかにハンドルをカーブに合わせて切る。
これは、乗用車っぽい感じかもしれない。
また、車幅感覚も不思議だ。ハンドルを切ると、内側のリアタイヤが自分でイメージするよりもイン側をトレースする。内輪差が大きいという感覚だ。
そのため、コーナーの内側というより、車線の真ん中をたどるようイメージすることにした。
以上の2点、ハンドルを切る感覚と車幅感覚。この2点で意識と感覚が一致するようになってくると、俄然トライクでの走行が楽しくなってくる。
2輪のバイクと違い、停車でわざわざ足を地面に下ろす必要がないので、停止がまずラク。だんだんと乗用車感覚になってくる。すると、屋根などで周囲を囲われていない開放感を楽しめるようになる。
風や陽射しといった自然を感じながらも、安定して走行できるのは、実に快適だ。
さらに、最初は内輪差を感じて車幅に戸惑っていたけれど、実際は乗用車よりもスリムなことに気がつく。全幅は1455mm。これも軽快に感じる理由だ。
ハーレーダビッドソンと聞くと、大きくてハード、そんなイメージがあるかもしれないが、トライクは想像以上に軽やかだ。
全長は2685mmだが、軽自動車より短い。車重は582kgあるが、2Lクラスの乗用車なら1500kgくらいが標準になっている。
それなのに、エンジンは1977cc。トルクも太い。
大型バイクがベースなのに、軽やかに感じるのはトライクならではかもしれない。車両の重さを自分の身体で支える必要が無いというのは、想像していたより快適だ。
トライクという乗り物が特殊だというのは、試乗した後も非日常感は常にある。
でも、多忙なビジネスシーンから離れ、開放的な非日常感を求めるなら、こんなに楽しい乗り物も少ない。一度味わうと、逃れられない魅力が詰まっている。
大型バイクの免許がなくて、ハーレーダビッドソンを諦めていたアナタ。一度、トライクを試してみてはいかがだろうか?
【参考】2026トライク | Harley-Davidson JP
取材・文/中馬幹弘
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