株式市場の動向を示すデータとして株価指数があるが、中でも「NYダウ」「S&P500」「NASDAQ総合」は米国株の主要3指数と呼ばれ、特に重要視されている。
その概要は「NYダウ」はニューヨーク証券取引所などに上場している米国の主要30銘柄の平均株価、S&P500は米国を代表する約500社の時価総額加重平均、NASDAQ総合はナスダックに上場している米国内外の約3300銘柄の時価総額加重平均を示したものだ。
そんな主要3指数が2026年6月5日に大きく下落したことに関する分析リポートが、三井住友DSアセットマネジメント シニアマーケットストラテジスト・久髙一也(ひさたか かずや)氏から届いたので概要をお伝えする。
米国株は半導体関連を中心に大幅反落、SOX指数は約6年ぶりの下落率
6月5日の米国株式市場では、主要株価指数がそろって大きく下落。S&P500種指数は前日比▲2.6%、ナスダック総合指数は同▲4.2%、NYダウは同▲1.3%で取引を終えた。
ちなみにナスダック総合指数の下落率は2025年4月以来の大きさである。特に、AI関連需要への期待を背景に上昇が続いていた半導体関連株への売りが目立ち、フィラデルフィア半導体株(SOX)指数は同▲10.3%と、2020年3月以来の大幅安となった。
AI関連需要の拡大を受け、半導体などのハイテク関連企業では事前想定を上回る好決算や、強いガイダンス(会社計画)が相次いで示された。
こうした材料を背景に投資家の期待が高まり、4月以降で一時80%程度の上昇を演じたSOX指数を中心に株価が大幅に上昇していたため、きっかけ次第で利益確定売りが出やすい地合いにあったとみられる(図表1)。

同日に発表された5月の米雇用統計が市場予想を上回る内容となったことも、株価下落のきっかけになった。
非農業部門雇用者数は前月比17.2万人増となり、3か月連続で10万人を上回る伸びを記録した。また、3月分と4月分も上方修正され、米労働市場の底堅さが改めて意識される結果となった。
これを受けて、米10年国債利回りは再び4.5%を上回った。金融市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ再開期待が後退するとともに、2026年内の利上げ転換の可能性が織り込まれつつある(図表2)。

中長期の成長期待を織り込んで買われてきた半導体・ハイテクを中心としたグロース(成長)株は、金利上昇局面で株価バリュエーション面の調整圧力を受けやすく、今回の大幅反落につながったと考えられる。
■業績相場に移行した米国株、バリュエーション面では過熱感はみられず
もっとも、今回の株安は、米国企業の業績見通しが大きく悪化したことを示すものではなさそうだ。実際、半導体関連企業では、AI向け需要の拡大が引き続き業績を支えている。またデータセンター投資や高性能半導体への需要も底堅く、情報技術セクターを中心に、S&P500種指数の12か月予想EPSは力強い上昇傾向を維持している(図表3)。

このため、今回の株価下落は「企業業績の悪化を織り込む動き」ではなく、「金利上昇を受けたバリュエーション調整」と整理することができそうだ。
予想EPSが改善基調にあるなかで株価が下落したため、S&P500種指数の12か月先予想PERは6月5日時点で20.4倍となり、2025年10月ピーク(23.1倍)と比べて低位にある。少なくとも、予想PERでみた米国株の株価バリュエーションについては、明確な過熱感は見られない。
また、中東情勢については、日本時間8日未明にイランがイスラエルに向けてミサイルを発射したと報じられるなど、引き続き予断を許さないものの、米国は外交的な解決を目指していると考えられる。
今後も紆余曲折が想定されるものの、中東情勢の緊張緩和により原油価格が落ち着きを示してくれば、先行きのインフレ圧力に対する警戒感も徐々に和らぐ可能性も想定される。
■これからの展開:今後の米インフレ指標、6月のFOMCが注目点
当面の米国株式市場では、
(1)米長期金利が4.5%を大きく上回って一段と上昇するか、
(2)今後発表されるインフレ指標が再加速を示すか、
(3)半導体関連企業の業績見通しが市場想定を下回るトレンドに移行するか、が焦点となる。
現時点では、企業業績の改善基調が続いていることを踏まえると、今回の株安は上昇相場のトレンド転換というよりも、急ピッチな上昇に対するスピード調整と位置付けられそうだ。
まずは、今週発表される5月の消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)でインフレ動向を確認した上で、来週17~18日に開催される6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示されるインフレと政策金利見通しが注目点と言えるだろう。
構成/清水眞希







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