アメリカの首都ワシントンD.C.のスターバックス。日本と同じチェーンでも利用実態は大きく異なる。
日本でおなじみのカフェチェーンといえばスターバックス。友人との待ち合わせや仕事、勉強など、さまざまな目的で利用する人が多いだろう。
だが、発祥国アメリカのスターバックスを訪れると、日本とはまったく異なる光景に出会う。
最大サイズのドリンクは約1リットル。フラペチーノは飲み物というより巨大なデザート。そして近年はプロテイン入りドリンクまで人気を集めている。
日本人にとってスターバックスは「コーヒーショップ」だが、アメリカでは「水分補給」「気分転換」「栄養補給」まで担う、多目的な存在になっている。
今回は実際にアメリカのスターバックスを訪れ、日本との違いを「サイズ」「甘さ」「プロテイン」の3つの視点から見てみたい。
日本最大サイズをさらに上回る!? 約1リットル級の「トレンタ」
まず驚かされるのがサイズだ。
日本ではショート(約240ml)、トール(約350ml)、グランデ(約470ml)、ベンティ(約590ml)が基本サイズとして知られている。
一方アメリカでは、トール(約355ml)、グランデ(約473ml)、ベンティ(約710ml)が標準サイズ。さらに一部のコールドドリンクでは、日本未導入の「トレンタ(約890ml)」が注文できる。

トレンタは、日本のベンティと比べても約300ml大きい。もはやコーヒーカップというより、小型の水筒に近いサイズ感だ。
筆者は、イチゴとアサイーのベース、ココナッツミルク、フリーズドライのイチゴをブレンドしたフルーティーな「ピンクドリンク」のトレンタを注文してみた。
手に持った瞬間、「これ本当に1人分?」と思わず笑ってしまった。日本のスターバックスではまず見かけないサイズである。
それでもベンティとの差額はわずか50セント(約80円)程度。アメリカ人が「せっかくなら大きい方を」と考えるのも理解できる。
味はイチゴミルクに近いが、フリーズドライのイチゴの酸味も残っており、見た目ほど甘すぎる印象はない。アメリカの若者やインフルエンサーのSNSにも頻繁に登場する定番ドリンクだけあって、味そのものは非常に完成度が高かった。
ただし、やはり量は圧倒的だった。飲み進めてもなかなか減らず、結局その場では飲み切れずに持ち帰ることになった。

トレンタサイズ誕生の背景には、猛暑地域の需要や長距離通勤文化がある。猛暑が厳しい南部の州では、暑い時期に、もっと大きなサイズのコールドドリンクを飲みたいという要望が数多くあった。そして、長時間かけて車通勤する人も珍しくないアメリカでは、一度に大量の飲み物を購入したいというニーズも強かったのだ。
それと、競合他社との競争という側面もあった。大手ファストフードやコンビニなどでは、大容量のドリンクが安価で提供され、人気を集めていた。それに対抗するためにも、トレンタサイズが導入された。
もはや飲み物ではなくデザート? 甘さ全開のフラペチーノ文化
次に驚くのが甘さだ。
アメリカのスターバックスで人気のフラペチーノは、日本人の感覚では「飲み物」というより「食べるデザート」に近い。
今回試したのは人気メニューの「キャラメル リボン クランチ フラペチーノ」。

トップには山盛りのホイップクリームが盛られ、その上から濃い茶色の「ダークキャラメルソース」が何重ものリボン状にたっぷりとかけられている。仕上げとして、カリカリ食感の「キャラメルシュガーの結晶」が大量にトッピングされている。透明なカップの内側からも、トップの山盛りの存在感が際立っている。
見た瞬間に「甘い」とわかるビジュアルだ。
実際に飲んでみても、その印象は裏切られない。
キャラメルの濃厚な甘さが次々と押し寄せ、日本で飲むフラペチーノ以上にスイーツ感が強い。

一般的なフラペチーノは約300~500キロカロリーで、種類によってはショートケーキ1個分に匹敵する。
「キャラメル リボン クランチ フラペチーノ」はアメリカの若者の間でも人気が高いメニューだ。山盛りのホイップクリームと濃厚なキャラメルソースによるインパクトのある見た目はSNSとの相性も良く、自分へのご褒美として楽しむ人も少なくない。実際に飲んでみると、コーヒーというよりデザートに近く、アメリカ人がフラペチーノを「ご褒美」として捉える理由がよくわかる。
アメリカでは甘いものを「たまの贅沢」ではなく、日常的な気分転換として楽しむ文化がある。フラペチーノ人気の背景には、こうした食文化も影響しているのかもしれない。
筋トレ帰りにスタバ? プロテインドリンクが人気の理由
最後に紹介したいのが、プロテイン系ドリンクの存在だ。
日本ではスターバックスといえばコーヒーやフラペチーノのイメージが強いが、アメリカでは高たんぱくを意識したドリンクやカスタマイズへの関心も高い。
筆者はキャラメルプロテインラテを試してみた。アメリカのスターバックスでは、こうした高たんぱく系のカスタマイズも一般的だ。

グランデサイズで摂取できるたんぱく質量は、一般的なプロテインバー1本分に匹敵するレベルだ。味は意外にも本格的なカフェラテに近く、キャラメルの風味も強い。健康飲料というより、普通においしいドリンクとして成立している。
実際に店舗では、ジム帰りと思われる利用客がプロテイン系ドリンクを注文する姿も見かけた。フィットネスに取り組む人が多いアメリカでは、「カフェで栄養補給する」という発想も珍しくない。
こうした背景には、近年の健康志向やフィットネスブームの広がりがある。アメリカでは高たんぱく食品市場が急速に拡大しており、プロテインバーやプロテインシェイクを日常的に利用する人も多い。スターバックスも単なるコーヒーショップではなく、食事代替や栄養補給の場として利用されるケースが増えている。
つまりアメリカのスターバックスは、コーヒーを楽しむ場所であると同時に、忙しい日常の中で手軽にエネルギーや栄養を補給する場所としての役割も担っているのである。
巨大サイズ、デザート級の甘さ、そしてプロテイン
日本のスターバックスが「コーヒーを楽しむ場所」だとすれば、アメリカのスターバックスはそれに加えて水分補給、エネルギー補給、栄養補給まで担う場所になっている。
約1リットルのトレンタ、ケーキ1個分に匹敵するカロリーのフラペチーノ、そしてプロテインドリンク。
日本でもおなじみのスターバックスだが、アメリカの店舗を訪れると、その役割や利用スタイルは驚くほど違って見える。

巨大サイズのドリンクを片手に長距離通勤し、フラペチーノをデザートとして楽しみ、プロテインで栄養補給をする。同じスターバックスでも、国が変わればその役割や利用スタイルは大きく異なり、そこにはアメリカの生活文化がそのまま表れているように見えた。
文/ 阿部貴晃
在米ジャーナリスト。日系メディアのワシントン支局で20年以上、国際関係の報道に携わる。2025年4月からはワシントンD.C.を拠点にフリージャーナリストとして活動。米政治・社会・文化、日米関係に加え、ライフスタイルやトレンドなど幅広いテーマで執筆している。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ(https://www.kaigaikakibito.com/)」会員。
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