3分程度のゲームがうつ病の特徴をとらえる手がかりに?
わずか3分程度のリンゴ狩りゲームが、うつ病の特徴をとらえる手がかりになる可能性があるとする研究が報告された。健康な人よりも早くにゲームの主要な活動であるリンゴの収穫をやめる人は、「アンヘドニア(無快感症)」を抱えている可能性が高かった。アンヘドニアとはうつ病患者の約70%に見られる症状の一つで、通常なら楽しいと感じることを楽しめなくなる症状である。
米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部神経科学教授でトランスレーショナル神経科学研究所所長のPaul Glimcher氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に5月18日掲載された。
このゲームでは、プレイヤーは木から落ちてくるリンゴを収穫する。収穫を続けると、木から得られるリンゴの数は減っていく。そのため、プレイヤーは別の木に移動するかどうかを判断しなければならない。研究では、うつ病患者50人と健常者70人を対象に、プレイヤーがどの時点でその木からの収穫を切り上げ、別の木へ移るのかを調べた。研究グループは、人は出来事を「期待」と比較しながら評価するという前提に立ち、その判断の基準となる「参照点」がうつ病患者では高くなっている可能性があるという仮説に基づき、このゲームによる課題を設計した。
その結果、健常者は木から収穫できるリンゴの数が平均5個になるまで同じ木にとどまって収穫を続けていた。一方、うつ病患者は、うつ症状の重症度にもよるものの、その木から得られるリンゴの数が8~9個になった時点で別の木に移動する傾向が見られた。研究グループは、「これは、うつ病患者では健常者に比べて、収穫を切り上げる際の参照点が健常者よりも約50%高くなっている可能性を示している」と説明している。
Glimcher氏は、「このゲームによって、うつ病患者の脳内で何が起きているのかについて手がかりを得ることができる。将来的には、血圧測定により心疾患を見つけるのと同じくらいの信頼性でうつ病を特定できるようになることを期待している」と述べている。一方、論文の筆頭著者であるNYUのAadith Vittala氏は、「うつ病患者は、状況の変化に応じて期待値を適切に調整することが難しいようだ。それは、脳内でどのような仕組みの異常が起きているのかを示す手がかりになる」と説明している。
研究グループは、本研究結果は、患者ごとに異なるタイプのうつ病を見分けるのにも役立つ可能性があると見ている。共著者の1人であるNYUグロスマン医学部精神医学教授のDan Iosifescu氏は、「うつ病は現在、複数の異なる病態を含む包括的な概念として考えられるようになってきている」と指摘する。その上で、「参照点の測定によって、アンヘドニアに関連する特定のうつ病サブタイプを特定し、その脳内メカニズムを明らかにしながら、患者ごとに適した治療法を選択できる可能性がある。また、患者にスマートフォンゲームを毎週数分プレイしてもらうことで、対面診療を繰り返さなくても遠隔で状態を把握し、迅速に治療を調整できるようになるかもしれない」と話している。(HealthDay News 2026年5月22日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2518826123
Press Release
https://nyulangone.org/news/three-minute-video-game-identifies-patients-who-have-depression
構成/DIME編集部
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