日本の3大時計メーカーであるセイコーグループ、シチズン時計、カシオ計算機の復調が鮮明になってきました。2026年3月期は3社ともに増収営業増益。セイコーとシチズンは営業利益が前期のおよそ1.5倍、カシオは1.6倍に膨らんでいます。
共通しているのは北米エリアでの好調ぶり。コストパフォーマンスの良さが消費者受け入れられています。
流通経路も富裕層向けに最適化したセイコー
セイコーのウオッチ事業における、2026年1月~3月期の北中南米エリアの売上高は前年同期間比でおよそ4割増加しました。海外では特に高級ブランドである「グランドセイコー」の引き合いが強く、同期間の売上高は3割増加しています。
アメリカの時計市場においては、トランプ関税の影響でロレックスなどスイスの高級時計メーカーが値上げをしました。スイスは日本よりも高い税率が適用されたため、「グランドセイコー」のような時計には有利に働いたのです。
しかし、ラグジュアリー市場において、ロレックスのような時計の数%の値上げが購入の意思決定に大きく影響するわけではないことも事実。北米市場で高い評価を得ているのは、「グランドセイコー」というブランド選好度が高まっているからでしょう。
セイコーは2024年2月に世界最大の「グランドセイコーフラッグシップブティック」をニューヨークに出店しました。富裕層のロイヤルカスタマー化を狙ったものです。グランドセイコーは2017年に独立ブランドとして再スタートを切り、マーケティングやデザイン、製造戦略を改めました。直営ブティックのオープンは流通経路の強化を図ったもの。川上から川下まで一貫したラグジュアリー化を図り、高級腕時計ブランドでの世界トップ10入りを目指しています。
2026年4月14日から開催された世界最大の時計の見本市「Watches and Wonders Geneva 2026」にドレスウオッチブランド「クレドール」を初出展しました。
技術の磨き込みを行うと同時に高級腕時計セイコーブランドの更なる認知拡大にも努めています。
国内におけるインバウンド需要も強く、セイコーは世界中で支持されるようになりました。
ガーミンのアウトドアウォッチ不調でG-SHOCKが人気に?
カシオは2026年1月~3月の北米の売上が1割増加しました。2022年ごろからアメリカの消費マインド低下の影響を受け、売上は一時停滞。店舗を縮小したことも加わり、四半期でマイナス成長だったこともありました。
ここ最近は若者の間でレトロブームが起こっています。その影響を受け、1989年の登場以来からロングセラーを続けてきた「A159」、カラーダイヤルの「MTP-130」などに人気が集まりました。主力のG-SHOCKも底堅く推移している模様。
ライバル社に目を転じると、スマートウォッチに若干の停滞感が漂っています。アウトドアやフィットネス向けのスマートウォッチを販売するガーミンは、2026年1月~3月のアウトドアカテゴリの売上が前年同期間比で5%のマイナスでした。
アウトドアはガーミンの主力カテゴリーで昨年は売上トップでしたが、現在はフィットネスカテゴリーに追い抜かれています。ガーミンの時計はビギナーモデルで3.5万円、ハイクラスのもので20万円近くになります。インフレで消費者の節約志向が高まり、スマートウォッチから安価なG-SHOCKに流れた可能性もあります。
一時は、デジタル腕時計がスマートウォッチに駆逐されるとの見方もありました。しかしインフレの今、状況は一変したのかもしれません。
アメリカの国民性を理解したマーケティングを展開するシチズン
シチズンは2026年1月~3月の北米の売上高が2割超増加しました。
シチズンは北米エリアにおいて、シチズンブランドと2008年に買収した「ブローバ」を展開しています。両ブランドともに好調。百貨店や時計専門店などの主力流通経路での販売が堅調を維持していることに加え、自社ECでは「アテッサ」の高価格帯モデルも伸長しました。
シチズンはアメリカで20万円から30万円台の「アテッサ」の高価格帯モデルの販売に力を入れており、若年層をメインターゲットとしてプロモーションを展開していました。アメリカでは特に時計のストーリー性が重視されます。
シチズンは2024年にアテッサの限定モデルとして、月面探査のスタートアップispaceとのコラボレーション商品を販売していました。シチズンはispaceのパートナーとして支援活動を行っており、探査機のパーツにはシチズンの部材が使われてもいます。
シチズンが買収したブローバは、人類初の月面着陸を果たした有人宇宙船アポロ11号に搭載されるなど、歴史と信頼性を積み重ねてきたブランド。日本ではあまり知られていませんが、アメリカでは根強い人気があります。このようなストーリー性こそが、アメリカでは重視されるのです。高価格帯の「アテッサ」もストーリー性の醸成に力を入れています。
高品質かつ魅力的な価値をまとうことで、アメリカ市場での存在感を高めているのです。
文/不破聡







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