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殺人などの重い犯罪でも執行猶予が付くことはあるのか、弁護士に聞いてみた

2026.07.01

犯罪の疑いで刑事裁判にかけられたときは、「執行猶予」が付くかどうかが大きなポイントとなります。

執行猶予は、犯罪が比較的軽い場合に付くことが多いですが、実は殺人などの重い犯罪でも執行猶予が付くことがあります。

どのような場合に執行猶予が付くのか、法律のルールを踏まえて弁護士が解説します。

1. 執行猶予とは

「執行猶予」とは、犯罪について有罪判決が確定しても、直ちに刑を執行せずに一定期間猶予することを意味します。

たとえば「拘禁刑2年、執行猶予4年」という有罪判決が確定したとします。

この場合、すぐには刑務所へ収容されず、拘禁刑の執行が4年間猶予されます。4年間再犯などをせずに過ごせば、拘禁刑の言渡しは効力を失って執行されません。

ただし、再犯などによって執行猶予が取り消されることもあります。この場合は、拘禁刑によって2年間刑務所に収容されます。

また、再犯についても拘禁刑が科された場合は、その刑期が加算されます。たとえば、再犯について「拘禁刑3年」が科された場合は、合計で5年間刑務所に服役しなければなりません。

執行猶予の対象となる刑罰は「拘禁刑」と「罰金」です。拘禁刑は従来の「懲役」と「禁錮」を一本化した刑罰で、2025年6月から施行されました。

ただし実際には、罰金について執行猶予が付されることはほとんどなく、拘禁刑(または懲役、禁錮)の執行猶予が大半となっています。

なお執行猶予には、刑の全部の執行が猶予される「全部執行猶予」と、刑の一部のみ執行が猶予される「一部執行猶予」の2種類があります。

一部執行猶予は主に薬物事犯に用いられていますが、全体的に見れば全部執行猶予が大半となっています。本記事ではこれ以降、全部執行猶予について解説します。

2. 執行猶予が付くのはどんなとき?

執行猶予を付けることができるケースは、刑法によって定められています。殺人や強盗などの重い犯罪でも、ごく稀ではあるものの、執行猶予が付されることがあります。

2-1. (全部)執行猶予を付けることができる要件

全部執行猶予を付けることができるのは、次の(1)~(3)のいずれかを満たす場合です(刑法25条)。

(1)次の(a)および(b)を満たす
(a)前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない
(b)3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の言渡しを受けた

(2)次の(a)~(c)をすべて満たす
(a)前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがある
(b)(a)の刑の執行を終わった日またはその執行の免除を得た日から5年以内に、拘禁刑以上の刑に処せられたことがない
(c)3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の言渡しを受けた

(3)次の(a)~(e)をすべて満たす
(a)前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがある
(b)(a)の刑の全部の執行を猶予された
(c)2年以下の拘禁刑の言渡しを受けた
(d)情状に特に酌量すべきものがある
(e)保護観察中の再犯でない

執行猶予中の再犯(上記(3))の場合は、執行猶予を付すための要件が特に厳しくなっています。

2-2. 殺人などの重い犯罪でも、執行猶予は付くのか?

拘禁刑について執行猶予を付すためには、初犯の場合でも刑期が3年以下であることが必要です。3年以下の拘禁刑であれば、重い種類の犯罪であっても、情状によって執行猶予が付される可能性があります。

たとえば殺人罪(刑法199条)の場合、法定刑の下限は「拘禁刑5年」です。3年を超えているので、原則として執行猶予は付きません。

しかし、たとえば次に挙げる場合には、刑の減軽が行われることがあります。

・心神耗弱の場合(刑法39条2項)
・自首した場合(刑法42条1項)
・未遂に終わった場合(刑法43条)
・幇助犯にとどまる場合(刑法63条)
・情状に酌量すべきものがある場合(刑法66条)
など

刑の減軽が行われる場合、有期拘禁刑の下限は「2分の1」に減らすことになっています(刑法68条3号)。

したがって、殺人罪の刑が減軽される場合は、法定刑の下限が「拘禁刑2年6か月」となります。3年以下の拘禁刑が言い渡される場合には、執行猶予を付すことができます。

実際に殺人罪で有罪判決を受けたものの、執行猶予が付された例がしばしば報道されています。ただし、過酷な状況で被害者を長年にわたり介護した、被害者から酷い虐待を受けていたなど、加害者側に同情すべき側面が強い事案に限られています。

殺人罪のような重大な犯罪についても執行猶予が付されるケースはあるものの、よほど例外的なケースに限られるというのが実態です。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw

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