スーパーなどでは「特売」や「大安売り」などの表示をよく見かけます。購買意欲を掻き立てられますが、このような表示が1年中行われているとしたら、法律上問題ないのでしょうか?
1. 一般消費者を誤認させる「有利誤認表示」
商品が安いかのように勘違いさせる不当な表示は「有利誤認表示」と呼ばれており、景品表示法で禁止されています。たとえば、商品の価格について「定価2万円のところ、今だけ1万円」という表示がなされているとします。5割引き(半額)なので、かなり安い印象を受けます。
しかし、仮にこの商品がいつも1万円で売っているとしたら、5割引きではなく定価で販売しているに過ぎません。この場合、「定価2万円のところ、今だけ1万円」というのは、一般消費者に不当な誤解を与える「有利誤認表示」に当たります。
なお上記のように、定価と実際の販売価格を並べて表示することにより、実際の販売価格が安いという印象を与える表示は「二重価格表示」と呼ばれています。
二重価格表示は、事実に沿って適切に行われていれば問題ないものの、一般消費者に不当な誤解を与える場合は有利誤認表示となります。
2. 1年中「特売」や「大安売り」と表示するのは問題ない?違法?
「特売」や「大安売り」などの表示は、値下げの具体的な金額や割合を示していなくても、一般消費者に対して「普段よりもかなり安いのだろう」という印象を与えるものです。
このような表示も、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与える場合は、有利誤認表示として違法となります。
たとえば普段は定価1万円で売られている商品が、「大安売り」と称して9900円で売られていたとします。1%の値下げですが、「大安売り」とまで言えるでしょうか?少々疑問に思われます。
もし1万円という定価が示されておらず、「大安売りで9900円」という表示だけを一般消費者が目にするとしたら、どのくらいの定価を想像するでしょうか。おそらく、1万円よりはかなり高い金額をイメージする人が大半でしょう。
そう考えると、大安売りと称して1%しか値下げしないのは、有利誤認表示に当たる可能性が高いと思われます。
そのほか、たとえば「全品大安売り」と表示しているのに、実際に大幅な値下げを行っているのは一部の商品に限られている場合なども、有利誤認表示に当たる可能性が高いです。
「特売」「大安売り」といった抽象的な表示でも、一般消費者の目から見て「おかしい」と感じられるものは、有利誤認表示として違法になり得ます。
3. 有利誤認表示をした事業者に対する処分
有利誤認表示をした事業者は、消費者庁長官による措置命令や課徴金納付命令、さらに刑事罰の対象となります。
(1)措置命令
有利誤認表示の差止めや、再発防止のために必要な措置を命じる行政処分です。
(2)課徴金納付命令
ペナルティとして課徴金の納付を命じる行政処分です。有利誤認表示の課徴金額は、原則として有利誤認表示をしていた期間の売上の3%とされています。
(3)刑事罰
故意に有利誤認表示をした者は「100万円以下の罰金」に処されます。また、法人にも「100万円以下の罰金」が科されます。
措置命令に違反して有利誤認表示を継続した場合は、さらに刑が加重されます(2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)。
4. 有利誤認表示に関する通報先
事業者による有利誤認表示については、消費者庁がウェブサイト上で情報提供(通報)を受け付けています。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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