スポーツでも芸術分野でも「あの人のようになりたい」と憧れの対象を作り、その人を真似ることが上達への近道だったりする。仕事においても同様のことがいえるが、ビジネスパーソンの中には、模範とすべき「ロールモデル」が身近に見当たらないという人も多いのではないだろうか?
LinkedInはこのほど、全国の20~69歳の正社員、及び経営者・役員の1,200名を対象に、「キャリア形成とロールモデルに関する実態調査」を実施し、その結果を発表した。
1. キャリア形成におけるロールモデル有無の実態
■ロールモデルが「いない」人は約7割(68.2%)にのぼる一方、その半数以上(50.1%)が必要性を感じている
20代~60代の会社員では、「ロールモデルがいない」と回答した人が68.2%と、最も多い結果となった。世代別に見ると、Z世代は「キャリア形成の参考にしている人はいない」と回答する割合が他の世代と比べて低く、若い世代ほどロールモデルがいる傾向がわかった。
ロールモデルがいない理由としては、「参考にしたいと思える人が身近にいない(52.9%)」が最も多く、次いで「キャリアに興味がない(34.5%)」、「自分と年齢や立場が近いキャリアの人がいない(21.1%)」となった。
特に、ミレニアル世代、X世代、ベビーブーマー世代では「参考にしたいと思える人が身近にいない」との回答が多い一方で、Z世代では「自分のキャリアが見えない(29.2%)」が他の世代と比べて目立つ結果となった。
また、「ロールモデルがいない」と回答した人のうちでも、「ロールモデルは必要だと思う」、「どちらかといえば必要だと思う」と回答した人は、50.1%にのぼった。
これらの結果から、約7割に上る「ロールモデル不在」は、物理的・心理的障壁や、キャリアについて主体的に考える機会の不足に起因している可能性が示唆される。ロールモデルは存在していないのではなく、各世代やキャリアステージに適したロールモデルに”出会う機会“が不足していることが背景にあると考えられる。
■Z世代・ミレニアル世代では、ロールモデルとして職場など身近な存在に加え、SNSでの発信をしている人物を参考にする割合が高い
ロールモデルとして挙げる人物は、「同じ会社の別の部署(43.9%)」、「同じ部署(40.2%)」、「他社の人(28.5%)」と、身近な存在が中心となる傾向が見られた。
その中で、Z世代・ミレニアル世代では、「SNSでの発信をしている人物(Z世代:22.5%・ミレニアル世代:21.7%)」をロールモデルとする割合が、X世代(10.2%)やベビーブーマー世代(2.1%)と比べて高い結果となった。
さらに、「ロールモデルが複数人いる」と回答した割合は、Z世代が22.3%、ミレニアル世代は18.8%と、X世代(11.1%)やベビーブーマー世代(11.1%)と比べて高い傾向にある。
複数のロールモデルを参考にする理由としては、「複数の人の良い部分を組み合わせてキャリアを考えたい(69.5%)」が最も多く、次いで「他人をそのまま真似するのではなく、自分らしいキャリアを考えたい(43.7%)」、「キャリアには1つの正解がないと感じる(40.8%)」が上位に挙げられた。
オンラインを通じて多様な選択肢にアクセスできる現在、身近な存在やSNS上の人物などから、自分に合った要素を取捨選択しながらキャリアを形成するスタイルが、特に若い世代を中心に拡がっていることがうかがえる。こうした傾向から、ロールモデルは「誰か一人を目指す”正解”」から「複数の要素を組み合わせて、自分なりのキャリアを構築するための”パーツ”」へ変化していることが明らかになった。
2. ロールモデル有無が職場評価・キャリア意識に与える影響の実態
次に、ロールモデルの有無による意識差を分析したところ、ロールモデルが「いる」と回答した人は、「いない」と回答した人と比較して、職場に対する評価やキャリア認識において全体的に高い傾向が見られた。ロールモデルの存在は、キャリアの道筋をより具体化する役割を果たし、組織に対するエンゲージメント向上にも寄与している可能性が示唆されている。
・現在の職場(業務内容・職場環境・人間関係・評価制度など)に対して、満足している割合:
「ロールモデルがいる」78.1% /「ロールモデルが複数人いる」66.9% /「ロールモデルがいない」39.6%
・現在の職場では、自身のキャリアステージに合った、明確なキャリアパスが整備されていると思う割合:
「ロールモデルがいる」56.9% /「ロールモデルが複数人いる」67.2% /「ロールモデルがいない」20.5%
・自社の評価制度では、求められるスキルや成果など基準が明確だと感じる割合:
「ロールモデルがいる」55.4% /「ロールモデルが複数人いる」65.0% /「ロールモデルがいない」18.5%
・現在の職場では、自身のスキルが上司や会社に適切に評価されている・認められていると感じる割合:
「ロールモデルがいる」63.1% /「ロールモデルが複数人いる」62.3% /「ロールモデルがいない」21.4%
・昇進・昇給や今後のキャリア形成に必要なスキルを把握できていると感じる割合:
「ロールモデルがいる」69.2% /「ロールモデルが複数人いる」68.9% /「ロールモデルがいない」24.6%
また、将来のキャリアとして、「キャリア志向がない」と回答する人は全体の50.5%と半数に上り、多くの人が将来の方向性を明確に描けていない現状が浮き彫りとなった。
一方で、ロールモデルがいる人において「キャリア志向がない」と回答する割合は8.8%、ロールモデルが複数いる人では13.4%と、いずれも非常に低い水準となっている。この結果から、具体的な参考となる存在がいることで、自身の将来像を描きやすくなり、キャリアに対する関心や主体性が高まる傾向があることが示唆される。
3. 経営者・役員と会社員の職場評価・キャリアに対する意識実態
最後に、会社員と経営者・役員の意識差を分析したところ、企業側が提示するキャリアの指針において、企業の意図と個人の理解との間にギャップが生じていることが明らかになった。
キャリア形成の主体性にも影響を与える職場の制度や評価基準について、個人の理解・納得・実感が十分に浸透していない実態がうかがえる。また、会社員は制度や評価に対して不満や不透明感を抱いている一方で、企業側も明確に「キャリアパスや評価制度が整備されている」などと認識しきれていない“曖昧な状態”にあることも示唆された。
(1)職場に対する評価やキャリア認識において、会社員のほうが経営者・役員と比べてネガティブな回答の割合が高い傾向
・現在の職場では、自身のキャリアステージに合った、明確なキャリアパスが整備されていると思わない割合:「会社員」37.0% /「経営者・役員」20.5%
・自社の評価制度では、求められるスキルや成果など基準が明確だと感じない割合:「会社員」41.2% /「経営者・役員」26.0%
・現在の職場では、自身のスキルが上司や会社に適切に評価されている・認められていると感じない割合:「会社員」30.6% /「経営者・役員」14.5%
・昇進・昇給や今後のキャリア形成に必要なスキルを把握できていると感じない割合:「会社員」34.3% /「経営者・役員」13.0%
(2)職場に対する評価やキャリア認識において、経営者・役員の「どちらともいえない」と回答する割合が、会社員と比べて高い傾向
・現在の職場では、自身のキャリアステージに合った、明確なキャリアパスが整備されていると思わない割合:「会社員」34.0% /「経営者・役員」46.5%
・自社の評価制度では、求められるスキルや成果など基準が明確だと感じない割合:「会社員」32.8% /「経営者・役員」40.0%
・現在の職場では、自身のスキルが上司や会社に適切に評価されている・認められていると感じない割合:「会社員」40.3% /「経営者・役員」51.5%
・昇進・昇給や今後のキャリア形成に必要なスキルを把握できていると感じない割合:「会社員」35.2% /「経営者・役員」43.5%
<調査概要>
調査時期:2026年3月30日~4月1日
調査方法:インターネット調査
調査対象:(1)全国の20歳~69歳の正社員:1,000名、(2)全国の20歳~69歳の経営者・役員:200名
※小数点第一位を四捨五入しているため、合計が 100%にならない場合がある。
出典元:LinkedIn調べ
構成/こじへい







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