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静岡から神奈川にシフト?2026年W杯日本代表の「出身県別」勢力図をチェック!

2026.06.02

かつて日本代表の中心だった静岡から神奈川へ“王国”がシフト

5月25日から始動している日本代表。今回は大都市圏出身者が多い

 2026年北中米ワールドカップ(W杯)に向け、25日から本格始動した日本代表。31日には壮行試合・アイスランド戦(東京・国立)を経て、事前合宿地かつ第2戦・チュニジア戦の地・モンテレイ入りすることになる。「W杯優勝」という大目標に向かうべく、森保一監督の本番前のアプローチが大いに気になるところだ。

 その日本代表だが、今回のメンバー26人を改めて見てみると、神奈川県出身者が圧倒的に多いことに気づくだろう。

 キャプテン・遠藤航(リバプール)を筆頭に、伊東純也(ゲンク)、板倉滉(アヤックス)、田中碧(リーズ)、久保建英(レアル・ソシエダ)という2022年カタールW杯参戦組5人に、小川航基(NECナイメンヘン)、早川友基(鹿島)、鈴木唯人(フライブルク)の3人が新たに加わり、総勢8人。前回の7人を上回って圧倒的多数を占めているのだ。

 過去のW杯メンバーを振り返ると、初出場した98年フランスW杯はサッカー王国・静岡から9人が選ばれていた。続く2002年日韓大会も6人。静岡はかつて日本代表の一大勢力だったことが分かる。

 だが、長谷部誠(日本代表コーチ)、内田篤人(なでしこジャパンコーチ)らが主力を担った2010年代の後、しばらくは静岡勢の苦戦が続いた。2022年に伊藤洋輝(バイエルン)が滑り込み、今回は20歳の後藤啓介(シントトロイデン)が加わって2人になったが、神奈川とは大きな開きがあるのは確か。今や神奈川は「新サッカー王国」と言っても過言ではない重要度を占めているのだ。

中村俊輔コーチも神奈川県出身

4つのJクラブと高体連の強豪校の存在が神奈川勢を押し上げに寄与

 その要因を分析すると、横浜F・マリノス。川崎フロンターレ、横浜FC、湘南ベルマーレという4つのJクラブが存在することがやはりポイントだろう。交通利便性が高い分、東京都内のFC東京や東京ヴェルディ、埼玉の浦和レッズや千葉の柏レイソルなどにも通える範囲ということで、サッカー少年たちの選択肢が多いことも神奈川の優位性ではないか。

 とりわけ、板倉、田中、久保を輩出した川崎アカデミーの存在価値は大きい。今回、直前のケガで不参加を余儀なくされた三笘薫(ブライトン)、昨夏までは有力候補と目されていた高井幸大(ボルシアMG)も同クラブ出身。2017年のJ1初制覇以降の大躍進によって、全国からセレクションを受けに来る少年が急増したと言われており、この先もタレントが出てくる可能性がありそうだ。

 彼ら以外の神奈川出身の5人を見ると、遠藤が湘南、早川が横浜FMのアカデミー出身。早川は4月から日本代表コーチに就任した中村俊輔コーチが横浜FMで活躍していた頃、小中学生で「俊さんには時々、遊んでもらっていました」と秘話を明かしていた。15~20年の時を経て、その2人が同じ代表チームで2026年W杯に参戦するのは感慨深い出来事である。

 残りの3人は高体連から育った選手。地元の逗葉高校から神奈川大学を経てプロ入り後に大ブレイクした伊東は特異な例ではあるが、小川は桐光学園、鈴木唯人は市立船橋という名門校出身。高校サッカー屈指の強豪校で揉まれた経験値は非常に大きいはずだ。

田中碧は川崎アカデミー出身。谷口彰悟も川崎で飛躍した選手だ

人口が多い、交通至便な大都市圏出身の選手が増加傾向

 神奈川県ほどの大票田ではないが、人口が多く、交通網に恵まれている首都圏や中京圏、関西圏の都道府県には優位性がある。今回、東京都からは塩貝健人(ヴォルフスブルク)、千葉県からは中村敬斗(スタッド・ランス)、埼玉県からは渡辺剛(フェイエノールト)と鈴木彩艶(パルマ)、愛知県からは菅原由勢(ブレーメン)、大阪府からは前田大然(セルティック)と瀬古歩夢(ルアーブル)、兵庫県からエースナンバー10・堂安律(フランクフルト)が名を連ねていて、首都圏・中京圏・関西圏合計で16人も選ばれている。そこは大いに目を引く点だ。

 鎌田大地(クリスタルパレス)にしても、生まれは愛媛県ではあるが、中学からガンバ大阪ジュニアユース入りし、京都の東山高校でブレイクした選手。やはり人口が多く、選手同士が切磋琢磨しやすいうえ、遠征をしやすいロケーションにある都市圏はエリートが育ちやすい傾向が強いのだろう。

鎌田大地は愛媛県出身だが、関西で大きく成長した

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地方で奮闘する四国の愛媛。九州も選手育成の伝統が光る!

 その分、地方はやや厳しい環境にあるが、愛媛県は1つ、注目すべき地域である。2002年日韓・2006年ドイツW杯参戦の福西崇史(解説者)を皮切りに、2010年南アフリカ大会から5回連続W杯出場となる長友佑都(FC東京)、鎌田大地とキーマン3人を輩出しているからだ。

 同県は愛媛FC、FC今治という2つのJクラブが存在し、サッカー熱が高いことで知られている。さらに、関西や九州に比較的出ていきやすい地域性も追い風なのだろう。香川、徳島、高知からW杯選手が出ていない四国エリアにとって、同県は希望になっているはず。長友、鎌田の今大会の活躍には期待したいところだ。

 一方で、九州も見逃せないエリア。今回も熊本県出身の谷口彰悟(川崎)、福岡県出身の冨安健洋(アーセナル)、鹿児島県出身の大迫敬介(広島)の3人がリスト入りしている。

 98年の城彰二(解説者=鹿児島出身)に始まり、2010・14年の大久保嘉人(ソル・ナシエンテ・オーナー=福岡県出身)、2014・18年の大迫勇也(神戸=鹿児島県出身)、2014~2022年の3大会に参戦した吉田麻也(LAギャラクシー=長崎県出身)など、重要メンバーを多数輩出してきたのが九州。伝統をしっかりと守った格好だ。

 九州はもともと国見、鹿児島実業、東福岡、大津など高体連のチームがユース年代を長くリード。確固たる基盤あることに加え、アビスパ福岡、大分トリニータ、サガン鳥栖などのJクラブのアカデミーも徐々に台頭。令和の時代になっても選手が育つ環境がしっかりと整備されている。今のところ佐賀・宮崎両県と沖縄からはW杯メンバーが出ていないが、今後は空白地帯からも逸材が出現してほしいものである。

愛媛県を象徴する5大会連続出場の長友佑都

鈴木淳之介の出現で沸く岐阜。メンバーゼロの北海道・東北。北信越・山陰の今後に期待

 そして今回、W杯メンバーを初めて誕生させた県として着目すべきなのが、岐阜県。鈴木淳之介(コペンハーゲン)が出てきたことで、地元関係者も大いに喜んでいるだろう。

 岐阜の場合は隣県の愛知や三重、静岡といったサッカー先進エリアに選手が流れる傾向が強かったものの、鈴木淳之介は実家の各務原市から帝京大可児へ進学。そこで寮生活を送りながらプロへの道を切り開いた生粋の岐阜県人。そういう人材が大舞台でどんな仕事ぶりを見せてくれるのか、今から気になる。

岐阜県初のW杯選手となった鈴木淳之介

 こういったエリアとは対照的に、今回は北海道・東北・北信越・山陰からの代表メンバー入りはなかった。岡山県津山市出身の佐野海舟(マインツ)が高校時代を米子北で過ごしたという事例はあるものの、生粋の山陰出身選手ではない。人口減、少子化の時代が進む中、そういった地方エリアからW杯選手を送り出すのは難しくなる一方かもしれないが、大きな夢を抱いてトライを続けてほしいものである。

 いずれにしても、今回は最大勢力の新王国・神奈川勢の活躍に期待しないわけにはいかない。とりわけ、エース級と位置づけられる伊東、久保らアタッカー陣にはオランダ・チュニジア・スウェーデンを切り裂くゴールを奪ってほしいところ。地元関係者もワクワクしながら見守っているに違いない。2026年W杯で活躍する選手がどこの出身かをチェックしながら大会を見るのもまた一興である。

岡山県出身の佐野海舟は鳥取県の米子北高校で成長した

●98年フランス大会
群馬2、千葉1、神奈川1、山梨1、静岡9、愛知1、滋賀1、三重1、奈良1、島根1、広島1、鹿児島1、ブラジル1
*北海道生まれの城彰二は鹿児島出身で計算
●2002年日韓大会
岩手1、茨城2、群馬1、千葉1、神奈川2、山梨1、富山1、静岡6、愛知1、滋賀1、奈良1、大阪2、広島1、愛媛1、ブラジル1
*転勤族だった中田浩二(鹿島FD)は滋賀出身で計算
●2006年ドイツ大会
岩手1、埼玉1、東京1、千葉1、神奈川2、山梨1、富山1、静岡3、滋賀1、奈良1、大阪3、兵庫1、和歌山1、愛媛1、熊本2、鹿児島1、ブラジル1
*中田浩二は同上
●2010年南アフリカ大会
宮城1、埼玉2、東京1、千葉2、神奈川2、静岡4、京都1、奈良1、大阪2、兵庫1、和歌山1、山口1、愛媛1、福岡1、鹿児島1
●2014年ブラジル大会
宮城1、埼玉1、東京1、千葉1、神奈川1、新潟1、静岡2、三重1、大阪2、兵庫2、広島1、愛媛1、岡山1、福岡1、大分1、長崎1、宮崎1、鹿児島2
●2018年ロシア大会
青森1、埼玉2、東京1、千葉1、神奈川1、新潟1、静岡2、滋賀1、京都1、三重1、大阪2、兵庫3、広島1、愛媛1、長崎1、熊本1、鹿児島1
●2020年カタール大会
青森1、茨城1、埼玉1、東京2、千葉1、神奈川7、静岡1、三重2、大阪3、兵庫1、愛媛2、福岡1、長崎1、熊本1、アメリカ1
*シュミット・ダニエル(名古屋)はアメリカ生まれ・宮城育ち
●2026年北中米大会
茨城1、埼玉2、東京1、千葉1、神奈川8、静岡2、愛知1、岐阜1、大阪2、兵庫1、岡山1、愛媛2、福岡1、熊本1、鹿児島1

取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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