スマホ一つで、SNSにメール、検索、支払いや申し込みなど、何もかもがすんでしまう今の時代。スマホを使ったさまざまな詐欺も横行している。電話でのオレオレ詐欺に、迷惑メール、フィッシング、ロマンス詐欺……詐欺師たちは実に巧妙に仕掛けてくるから、誰もが騙される可能性があるのだ。
だからこそ、自らの身を守り、ひいては大切な情報を漏らさないことは、全ての人が健やかに生きるための術(すべ)といっても過言ではない。
そこで、数々の詐欺師と対決して情報発信を続ける、迷惑メール評論家・GO羽鳥さんのもとへ。最新“詐欺事情”と、いまの時代を生き抜くための“詐欺対策”を聞いた。
10年以上にわたり詐欺師と対決する、迷惑メール評論家「GO羽鳥」さん

ウェブメディア『ロケットニュース24』の編集長であり、みずからもライターとして数々の記事を執筆。また、マミヤ狂四郎の名でイラストや漫画も執筆し、さらには「迷惑メール評論家」という肩書きももつGO羽鳥さん。羽鳥さんは、自身が遭遇したさまざまな詐欺を、10年以上にわたりウェブ、雑誌、ラジオ、TV、講演会などで発信し続けている。

中でも『ロケットニュース24』の記事を読むと、詐欺師を突撃したり、友人のLINEアカウントを乗っ取った“なりすまし詐欺”とトコトン戦ったり、詐欺師とDMやLINEで会話したり……。あえて詐欺師に近づくなんて、飛んで火に入る夏の虫!怖くはないのだろうか?

「もちろん怖いですよ。でも、詐欺師を許すまじ!という気持ちが強いから、追求できるのかもしれません。
そもそも私が迷惑メールに目覚めたきっかけは、2004年にYahooオークションで7万円もの詐欺にあったことです。当時バックパッカーをしながら漫画を描いていたのですが、旅先で仕事に使うパソコンを落札しようとしたら、僅差で落札できなかったんです。それなのに別の出品者から『買いませんか?』とメールが届き、騙されてしまいました。警察からは『絶対に犯人は捕まらないと思います』とハッキリ言われましたが、悔しくて、悔しくて。小さな手がかりから詐欺師がいるであろう埼玉の熊谷に突撃したものの、突き止められず、漫画のネタにして終わりました。

その後、2012年にも楽天アカウントを乗っ取られて、勝手に約10万円もする高級炊飯器と一眼レフを買われてしまったんです。しかもこのときも警察から『被害者は楽天です』と言われて。相手の住所がわかっていたので、高級米を手土産に、その足で8時間かけて大阪まで車で乗り込みました。ただ、いざ出てきた相手にお米だけ渡して帰ってしまったんですが……」

羽鳥さんは、2012年の詐欺被害をリアルタイムで『ロケットニュース24』に執筆。6本にもわたった鬼気迫る記事は、多くの読者から反響を呼んだ。また、ちょうど羽鳥さんの友人にも詐欺被害に遭う方が増えていたこともあり、詐欺の実体験を伝える「迷惑メール評論家」として活動し始めたという。
冷静じゃないときほど人は騙されやすい
羽鳥さんいわく、冷静さを欠いているときほど人は騙されやすくなるそうだ。
「思えば、私が最初に7万円を“詐欺られた”ときもそうでした。一刻も早くパソコンがほしいと焦る気持ちから、疑いもせず、相手の手中にハマってしまったんです」
また、自分に少しでも関係していることは騙されやすさにつながる、とも。
「たとえば、古典的なオレオレ詐欺の電話もそうですし、『Amazonから荷物が届きました』などというSMSとか、楽天カードの請求書を装った迷惑メールとか。ちょっとでも思い当たるフシがあると、妙にリアリティがあり、騙されやすくなります」

近頃では、会社のチャットシステムやメールを悪用した振り込み詐欺まで登場。しかも詐欺師は、抗いづらい上司や社長の名を語るという。
「会社のチャットやメールで、上司や社長から『ここに振り込んで』とメッセージやメールがくるんです。しかも、送られてくるアドレスが精巧に偽装されていたり、本物だとしても乗っ取られたりしているかもしれないので、詐欺と気付きにくい」
上司や社長からの指示とあれば、疑う人のほうが少ないだろう。ましてや、もしも自分が経理担当者だったとしたら、余計に信じてしまうかもしれない……ゾクッとする話である。

「私は『迷惑メール評論家』と名乗っていますが、詐欺とひと口に言っても、手口はメールだけじゃありません。電話、SMS、SNSのDM、チャットサービス、偽装URL、ECやサブスクの偽装アカウント……本当に多種多様で、これに気をつけたら大丈夫とは言えず、何を信じたらいいかもじつはわからないんです」
なんと、数多の詐欺と向き合ってきた羽鳥さんもわからないなんて。詐欺はもはや防ぎようがないのか?頭をかかえる筆者に「でも、だからこそ全ての人がやるべき対策はあります」。
全ての人がAI時代を生き抜く詐欺対策
ここからは、ビジネスパーソンはもちろん、全ての人が今の時代を安全に生き抜くために大切な、羽鳥さんも必ず行っている詐欺対策を紹介する。
(1)全てを信じるな!つねに疑ってかかれ!
まずは心構えから。「全てを信じてはいけない」と羽鳥さん。とくに、便利なチャットサービスやメール、DMなどは対面よりも詐欺被害に遭いやすいため、注意が必要なのだとか。

「たとえば海外旅行で怪しい人が近づいてきたら、目線や言動になんとなく違和感があり、騙されないように気を付けますよね。でも、メールやSNSのDMなど、文面だと相手が見えないので怪しさに気付きにくい。
だから私は知人だとしても、いつもと違う手段で連絡してきたら、まず詐欺を疑います。そして連絡先を知っているのなら、電話してみたり、メールの返事をLINEで返したり、XでDMが来てもFacebookのメッセンジャーで返信してみたり。コミュニケーションの原点である電話に立ち返るとか、他の手段で返事をしたりします」

また、羽鳥さんはSNSに来た知らない相手からのDMは基本的に返さず、スマホに登録されていない電話番号にも出ない。
「知らない電話番号からかかってきたら、インターネットで検索するのもおすすめですよ。インターネットや電話につながっている限りは、つねに疑ってかかってください」
(2)パスワードの入力は慎重に、限界まで長く設定する
アカウントの乗っ取りで多いのが、IDとパスワードを抜かれてしまうフィッシングだ。羽鳥さんはIDとパスワードの入力はかなり慎重に行う。
「いつも利用しているサービスだとしても、IDとパスワードを入力する前に、入力画面を確認しましょう。とくに、ふだん使っていないパソコンからURLを検索して入力する場合は、詐欺サイトの可能性もあります」

また、パスワードは限界まで長く、「!」や「_」を入れるなどして複雑に設定すること。
「忘れてしまうからと、パスワードを共通したものや、短いものにすることはやめたほうがいいです。最低限、パスワードで守ることは必須の詐欺対策です。じぶんで覚えるよりも、外部のパスワード管理ツールやパソコンのマネージャー機能を頼るといいですよ。私は『1Password(ワンパスワード)』というアプリを使って、絶対に破られないようにしています」
パスワードを長くするのは、複雑性を増すことに加え、詐欺師にやぶられるまでの時間稼ぎという意味合いもあるそうだ。
「彼らはランダムに数字や記号を組み合わせてアカウントを乗っ取ろうとしてきます。だからなるべく長いパスワードにするほうがやぶられにくいし、やぶられるまでの時間もより長くなるんです」
(3)メールフォルダは定期的にキレイにする
気が付くと何十件、何百件と未読メールが溜まっている人は注意しよう。羽鳥さんも購読しているメルマガやサブスクのお知らせが溜まっていることがあるそうだが、できる限りメールフォルダをキレイにするよう心がけているという。
未読メールが溜まっている人は、ご用心。
「一時、忙しさもありNetflixのアカウントを3つも契約していたことがあるんです。そうしたら、いちばん簡単なパスワードに設定していたアカウントが乗っ取られて、1年ぐらいペルーで使われていました。しかも単身者なのでいちばんリーズナブルな契約にしていたはずが、高額なファミリープランに更新されていて、5家族分も……。

乗っ取りがわかってメールをさかのぼると、『パスワードを変更された』という通知がきていました。でも、未読メールに埋もれてすぐに気付かなかったんです。メールフォルダは定期的にキレイにしましょう。
それから繰り返しますが、パスワードは複雑に。私が乗っ取られたパスワードは6ケタでした(笑)」
(4)フリーWi-Fiや野良Wi-Fiは使わない
コロナ禍以降、リモートワークやリモート会議が一般的になった。カフェや駅などでフリーWi-Fiにつなぐ機会もあるだろう。しかしこれにも注意が必要だ。

「フリーWi-Fiを装って、個人情報を抜き取るのは古典的な詐欺の手口です。私は必ず自分のスマホとテザリングします。
管理者や設置目的が不明な野良Wi-Fiには、絶対につながない。カフェや駅のサービスで提供されているフリーWi-Fiだとしても、微妙に似ている名前で情報を抜き取ろうとしているものもあります」
(5)送られてきた文章をAIで確認する
近頃では、AIの精度がずいぶん上がった。羽鳥さんは、怪しいDMが来たらまずAIに確認してもらうそうで、これがかなり信頼できるという。

「ChatGPTでもGeminiでもいいと思います。
私はLINEでロマンス詐欺を相手に会話することが多いのですが、基本的に詐欺師はテンプレートを使います。しかし最近は、AIも併用しているのでは……ということがわかりました。私も詐欺師たちとの対応にLINEの有料AIサービスを活用して、自動的に返信を考えてもらうこともあるのですが、詐欺師もそれと似たことをしているんです。
そこでそれを利用して、チャットの全部をAIに読み込ませると、かなりの精度で相手が詐欺師かどうかを判断してくれたりもします。上手にAIを活用して自己防衛するのも有効です」

ちなみに、核心を突くときは詐欺師みずからメッセージを打ってくることも判明したそうだ。やはり人が人を騙そうと思うときに、決定打となるのは人の手というわけだ。怖すぎる……。
手口を知ることも大事な詐欺対策
大事なことは、さまざまな詐欺の手口を知っておくこと、と羽鳥さんは続ける。
「騙される人の多くは手口を知りません。さまざまなケースを知っておくことで、これは怪しいと気が付けることもあります。
手口を知る方法として、事件などの情報をタイムリーにお知らせしてくれる『メールけいしちょう』に登録するのもいいですし、TVでニュースを見るのだって有効です。私もNHKニュースで知ったり、知人からの相談で知ったりするケースもありますよ。つねにアンテナを立てておくことも大事な詐欺対策です」

確かに、手口を知っていたからこそ「母さん、オレオレ!」や警察を装った電話にも騙されずにすんだという話も聞く。つまり、必要以上に怖がり過ぎず、けれども軽んじず。今回教えてもらった、今日からできる身近な防犯対策を一つひとつ実践しよう。そして、このAI時代をたくましく生き抜こうじゃないか!
取材・文/ニイミユカ 写真提供/ロケットニュース24







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