2026年5月16日、東京・秋葉原のベルサール秋葉原にて「RE-ROBO FESS 2026」が開催された。本イベントは、一般社団法人Akiba Tech Connectが主催する、ロボット・ドローン関連の学生サークルやスタートアップ約40団体が一堂に会する初の試みとなる。モノづくりの聖地である秋葉原を舞台に、年齢や所属、企業規模の垣根を超え、テクノロジーを通じて自由に交流できる「混沌の場」を創出することを目的に掲げている。
蚊を自動で捕獲:帝京大学理工学部
帝京大学理工学部の蓮田裕一教授の研究室の学生チームが開発したのは、蚊の発生を自動で検知・捕獲するシステムだ。このトラップは炭酸ガスや熱、匂いなどを利用して蚊を誘引し、捕獲する仕組みを持つ。顔検出機能により、トラップが蚊を捕獲した際には即座にサーバーへ情報を送信。遠隔地にいる管理者も、捕獲時刻や位置情報を専用アプリを通じてリアルタイムに把握できる。
また、本システムには広域の蚊の発生状況を予測・管理する機能も備わっている。特定の地域で蚊の発生が確認されると、管理者によって緊急地震速報のようなアラートが発信され、地域住民のアプリへ注意喚起が届く。常日頃からデング熱などの感染症リスクに対する予防意識を高め、刺された際の場所を特定するなど、公衆衛生の向上に寄与するソリューションとして開発されている。
災害対応の自動化:京都先端科学大学
京都先端科学大学のブースでは、災害現場の状況を詳細に把握するためのドローン技術が展示された。同大の研究では、まず大型のドローンが現場の地図情報や地上の障害物をスキャンし、その後、小型のドローンがより詳細な環境調査を行うという、役割分担型の運用を想定している。小型ドローンにはCO2濃度や温度などを測定する各種センサーが搭載され、複雑な地形にも入り込んで被災者を発見する役割を担う。
また、同大は遠隔操縦ロボット技術の実証プロジェクト「Avatar Robot Challenge」にも参加している。このプロジェクトは、アバター技術を通じて遠隔就労や遠隔観光、介護など、人が立ち入りにくい場所や人手が足りない現場を支える社会基盤の構築を目指すものだ。展示では、ぬいぐるみ型ロボットを用いた遠隔操作体験などを通じ、ものづくりや工学の楽しさを伝える取り組みも紹介された。
水中環境調査の最前線:タイレル・インダストリーズ
タイレル・インダストリーズは、慶應義塾大学SFCの学生を中心に結成されたスタートアップで、海洋環境調査や安全保障を目的とした水中ドローン「Siren」を開発している。地上のドローンとは異なり、電波が届かない水中での運用を実現するため、あらかじめ設定したルートを自走する仕組みや、潜水艦のように深度や速度を計測して現在地を把握する技術が組み込まれている。スクリューを上下前後に配置することで自由度の高い移動を可能にし、カメラや各種センサーによる調査を行う。
同社では用途に応じたモデルを展開しており、短時間の調査用だけでなく、数週間単位の長期運用を想定したモデルの開発も進めている。本展示会場で紹介されたモデルは製品第一号となり、部品の調達を経て現在組み立ての最終段階にある。今後は水中という過酷な環境下での長期観測技術を確立し、さらなる高精度な環境モニタリングを目指す。
ロボット競技と伝統機構の融合:ZENSHIN
15歳から18歳の若者を対象にした国際的なロボット競技会「FRC」に挑戦する団体ZENSHIN ROBOTICSは、機械の原点ともいえる「虫歯車機構」を活用した技術を披露した。この虫歯車機構は、あるメーカーからの依頼を受けて製品化した実績を持つ。時計の駆動など古くから使われてきた技術を応用し、モーター制御に頼らずともギア自体で往復運動ができる特徴が評価されている。
競技チームとしては、FRCにて3対3のポイント奪取ゲームに挑んでいる。大会ごとに課されるルールや使用するボールの種類は毎年大きく変わり、その都度求められる機能も変化する。過去には世界大会への出場実績もある強豪チームであり、競技を通じて得た知見を次の機体設計に活かすサイクルを構築している。今後はFRCに加え、レゴを用いた「FLL」への参戦も予定しており、ロボット製作の裾野を広げようとしている。
生成AIとの連携によるコミュニケーションロボット:ユニロボット
コミュニケーションロボット「unibo」を開発するユニロボットからは、生成AIの解釈能力とハードウェアの動きを統合する「フィジカルAI」の可能性が提示された。単なる会話機能にとどまらず、顔認証による個人の識別や、ノンプログラミングで機能を拡張できる「スキルクリエイター」機能を備え、企業受付や運送業界のアルコールチェック補助といった実務での導入が進められている。
特にトラック運行管理の現場では、深夜の対面業務といった人手不足が課題となるシーンで、ロボットが法改正に伴う実証実験の一環として点呼業務を代替する役割を担っている。今後は、ロボットが蓄積した会話アルゴリズムを電話の自動化エージェントに応用するなど、技術をフィジカルな筐体からソフトウェアの領域へと展開し、さらなる運用コストの最適化を図る方針だ。
家族をつなぐ癒やしのロボット:ユカイ化学
ユカイ化学は、日常に溶け込むコミュニケーションロボットを展示した。「BOCCO emo」ちゃんは、アプリと連動する機能を持つ。スマホの操作に不慣れな高齢の親と、離れて暮らす子供との間を仲介する役割を担い、送られたテキストメッセージをこのロボットが声で読み上げることで、リアルタイムな通話が難しい状況でもチャット形式でのコミュニケーションを可能にする。
リマインダー機能を設定すれば、服薬の時間や日々の予定をロボットが音声で伝えるため、高齢者の見守りや生活サポートにも役立つ。単なる連絡ツールではなく、子供の声で呼びかけることで親の行動を促すといった情緒的なつながりを重視した設計が特徴だ。Wi-Fi環境がない場所でも使用できるよう通信機能を備えるなど、各家庭の状況に合わせたプロダクト展開を行っている。
日本刀のグローバル展開:arte
arteは、日本刀文化振興協会と連携し、職人の支援と日本刀の海外輸出をサポートする取り組みを展開している。現在、国家資格を持つ職人は国内に約190名登録されているものの、実際に刀作りで生計を立てているのは50名以下という状況にある。本プロジェクトは、海外の顧客を日本へ招き、体験を通して日本刀の購入を促す「インバウンドによるオーダー販売」をメイン事業としている。
主なターゲットはアメリカ、フランス、および近年オイルマネーの影響で関心が高まっている中東の王族層などだ。法改正により、協会発行の証明書があれば海外への持ち出し手続きが当日に完結するようになったことも大きな追い風となっている。価格は短い短刀で50万円前後、長いものや名匠の手によるものでは数百万円からスタートし、現代の刀工が制作する最高級品は1,000万円を超えるものもある。
写真・文/ゴン川野







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