■連載/阿部純子のトレンド探検隊
2020年の改正健康増進法以降、公共空間での分煙は大きく進展しているが、「外で吸える場所」が制限されたことで、現在、喫煙本数が最も多い場所は「自宅」となっており、家庭内こそ最も配慮が求められる場となっている。
こうした状況から、家庭内などのプライベート空間向けの新製品として、エルゴジャパンが、5月20日よりタバコ専用スモーククリーナー「SMOKE ZERO(スモークゼロ)」の発売を開始した。
エルゴジャパンは、オフィスや飲食店、ホテル等で使われている業務用高性能喫煙ブース「SMOKE CLEAR(スモーククリア)」を販売しており、2019年発売以降、累計導入5000台超で業界トップクラスのシェアを確立している。
「スモークゼロ」は業務用喫煙ブースの知見や性能を応用した、プライベート空間での喫煙環境改善へ向けた家庭用ソリューションとなる。
家庭内での喫煙者・非喫煙者双方のストレスと健康への影響を解決する新製品
JTが2024年12月に行った全国喫煙者実態調査では、1日当たりの場所別喫煙本数で1位は9.6本で「自宅」となっており、喫煙は公共から私的な空間に移行。家庭内での喫煙は、喫煙者、非喫煙者の双方にストレスを与えているのが現状だ。
「家庭内の喫煙環境はいまだ未解決の領域であり、最も配慮が必要な場所です。喫煙者はベランダや換気扇の下で、家族の視線に気を遣いながら喫煙して孤立感を抱えています。また、非喫煙者は受動喫煙による健康不安を抱えており、非喫煙者の45%が家族や子どもの健康影響を最大の懸念として挙げています。
我々の調査では、非喫煙者の54%は喫煙者と同じ空間で過ごすことは難しいと回答しています。一方で喫煙者は約70%が『自宅の喫煙で気を遣う』と答えており、約50%が『環境を改善したい』と考えていながらも、解決の手段が不足していることが課題であるとわかりました。
多くの家庭では、家族だから我慢している状態が続いており、だからこそ家庭内で喫煙者、非喫煙者が共存するための環境が必要であると考え、我慢と孤立を解消するパーソナルクリア分煙の時代に向け、新製品『スモークゼロ』を発売することになりました」(株式会社エルゴジャパン 取締役 スモーククリア営業部 兼 管理部 福田裕二氏)
「スモークゼロ」は、たばこから出るすべての煙を空間に残さず、拡散する前にその場で除去するという発想から生まれた。空気清浄機との大きな違いは、1回のろ過でタバコ由来の有害物質を空間に残さず完結させる「1pass」であるということ。
「一般の空気清浄機はホコリの溜まっている下から空気を吸って上から吐き出す仕組みで、空気を循環させることによって、より大きな空間をきれいにする特長を持っています。ただ空気清浄機では、循環させながら徐々に空気をきれいにしていくことにとどまり、特にタバコ由来の有害ガス成分に関しては、空気清浄機では取りきれず、逆に部屋中に有害ガスが拡散してしまい、タバコに対してはあまり良い状況ではありません。
スモークゼロは、1回のろ過で取り切ることで、有害物質を限りなくゼロにして、空間に残さないことが大きな特長です。1passを可能にするのが2つの高性能フィルターで、ろ過しや空気は、室内の空気をよりきれいにすることができます」(株式会社エルゴジャパン 取締役 企画本部長 大麻裕二氏)
1回で有害物質を除去するには高いろ過性能が求められるため、「スモークゼロ」は、一般的な家庭用空気清浄機の10倍以上の性能を持つヨーロッパ最高規格の「H14 HEPAフィルター」と、特許取得済の「高圧縮カーボンフィルター」を搭載。プレフィルターを含めた三層構造となっている。
第三者機関での除去性能に関するエビデンスは以下画像の通りだが、粉じん除去率はH14 HEPAフィルターの性能で、1回での捕獲が難しいと言われている 0.1~0.2μm粒子を99.995%以上捕獲する。
他の4項目に関しては、「スモークゼロ」の吸い込み口でタバコ2本を焚いた状況で、排出口でガスを測定。ニコチン、ペンゼン、アクロレインに関しては測定器が測定できる限界を超えてしまったため不検出という結果となっている。
健康増進法におけるTVOC(総揮発性有機化合物)は、飲食店やオフィスなどの屋内に喫煙ブースを設置する際の除去性能基準として定められており、厚生労働省から出されている基準では除去率が95%以上とされている。
タバコの先端から発生する「副流煙」を吸い込むリスクから、非喫煙者だけでなく喫煙者自身も解放し、好きな時・場所で喫煙でき、移動の手間や家族への気遣いによるストレスを軽減するといった新しい喫煙環境を提供する。
喫煙歴30年のジャーナリスト・堀潤氏が「スモークゼロ」を分析
トークセッションでは、喫煙歴約30年というジャーナリストの堀潤氏が登壇。NHK時代には上司の前でも平気でタバコを吸っていたというエピソードを披露し、平成から令和へ時代を経て喫煙者の意識や環境が大きく変化したと話した。
「僕が喫煙者だと言うと『タバコのにおいがしない』と驚かれることがあるんですが、それだけ周りに気を遣っているんですよ。僕がNHKに入局したのは平成13年ですが、あのころと比べると喫煙者の意識は大きく変わりました。
でも、モラルや人への配慮は公共の空間であれば当たり前ですが、一人のプライベート空間の時に、その気持ちを保ち続けるのは正直難しい。人はそんなに強くないし、そんなに正義漢でもないので、つい良いだろうとか、面倒くさいということはあると思います。
『スモークゼロ』は、家庭内というプライベート空間でも、非喫煙者はもちろん、喫煙者自身の健康にも配慮しますよという最終ラインを製品として提供しており、非常に重要な社会課題解決だと思っています。
僕の取材テーマは『分断』で、世界各地の様々な地域の分断、身の回りに潜む分断、これをテーマに10年以上現場を歩いて取材してきました。解決策はやっぱり互いを知ることしかありません。
互いを知り衝突を防ぎながら合意形成するとなっても、モラルだけでは結局長続きしません。モラルも同意できないとなったら破談してしまうことが世界各地で続いています。そうなった時の一番の解決策は“調停する力”なんです。
調停するときには具体的なインセンティブが必要です。これがあるからやめませんか、これがあるからお互いの矛を収めませんかというものですね。
『スモークゼロ』は、喫煙・非喫煙者双方の気持ちがわかります、現場も調べました、エビデンスも取っています、『スモークゼロ』があれば同じ空間に集うことができます、という提案で、これがとても重要だと思っています。喫煙者の立場でもありながら、一方でやはりその非喫煙者の方々が普段から抱えている不安を一緒になって考えるというのは、とても重要なアプローチだと思いますね」(堀氏)
堀氏が実際に喫煙して「スモークゼロ」を体験した。写真ではわかりにくいが、煙を吐いたとたんすっと中に吸い込まれていく様子が見えた。筆者の席とは2mほどしか離れていなかったが、においはまったく感じられなかった。
デスク周りやリビングなど日常空間に自然に馴染むコンパクト設計を採用。強弱の運転モード切り替えや一定時間での自動停止機能など、日常使いしやすい簡単な操作性となっている。
フィルター交換の目安は、プレフィルターが1000本、HEPA・カーボンが3000本となっており、一般的な喫煙本数は1日16本、職場と家庭で各8本を想定し、交換は年1回が目安となっている。
価格は本体のみが148,000円、ワゴンセットが187,000円。カラーはダークブルー、オフホワイトの2色。製品サイズはW379mm x D418mm x H435mm (電源コードを除く)、重量は約14kg。販売は公式オンラインショップ、Amazon、楽天など。
【AJの読み】少々高くても家庭内分断が避けられるなら導入価値あり
筆者自身は20数年前に妊娠を機にタバコはやめたが、やめてから他者のタバコのにおいが苦手になり、においにとても敏感になった。電車で隣に座った人が“ヤニ臭い”と席を移動するし、映画館では耐えられず途中で退出したこともあった。
拙宅では夫のみが喫煙者で、換気扇の下で吸っているが、それでもにおいがするので「くさい」「いいかげんにタバコやめたら」と繰り返し言っているため、夫もストレスになっていると思う。
こうした家庭内の「分断」を解決するのが「スモークゼロ」。デモンストレーションでタバコを吸っている人のすぐ後ろと、反対側の空気の出口でにおいを確認したが、50cm離れているとほぼにおいを感じない。煙は吸い込み口にすーっと吸い込まれていき、周囲に広がることもなかった。
喫煙の際は「スモークゼロ」の中央の吸い込み口に顔を寄せ、そこに煙を吐き出す形で使用する。別売の「SMOKE ZERO専用灰皿」(4,000円)は自動消炎灰皿で、吸い殻を入れれば自動的に火が消え、においも外に漏れない。
タバコはやめるに越したことはないとは思うが、どんなに寒い日でもベランダに出たり、換気扇の下でちまちま吸ったり、家族から文字通り煙たがれたりしても、やめられない人はやめらない。
手軽に導入できる価格ではないが、喫煙者本人、周りの家族、双方のストレスを解消して環境に配慮してくれる「スモークゼロ」を高いお金を払っても使ってほしいというのが家族の本音だ。
取材・文/阿部純子







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