DIME2026年7月号では、「不動産のウソ、ホント」を大特集。映画『正直不動産』と大コラボし、不動産の買い時を徹底検証!住宅価格高騰の今知るべき不動産の「ウソ・ホント」を専門家と解き明かしていく!
今回紹介するのは、住まい選びの現実的な選択肢に定着してきた「狭小戸建て」。
従来の〝家〟の概念に縛られることなく、家族の暮らしやすさを優先すれば、オリジナリティーあふれる機能的なマイホームを手に入れられる。

家族の価値観を反映し、 柔軟な暮らし方を実現
東京都心では「新築マンションよりも戸建てのほうが手が届く」という逆転現象が起き、「狭小戸建て」の供給が右肩上がりだ。「狭小」の広さに明確な定義はないが、一般的に10~15坪(約30〜50平方メートル弱)程度の土地を指すことが多い。狭小住宅の設計・施工を長年手掛けてきた一級建築士の渡邉実さんは、人気の理由をこう分析する。
「社会背景に、政府による〝コンパクトシティ構想〟があります。主要都市に人口が集まる動きが加速し、都心部の土地の資産価値が高まる見込みがあるため、狭くても土地の所有権を持つ戸建てのほうが将来的な資産形成に有利になりました。また、ライフスタイルの変化も大きな要因でしょう。夫婦共働きが一般的になり、広さよりも都心へのアクセスの良さや利便性が重視されるようになりました。さらに価値観が〝モノ〟から〝コト〟へと変化し、豪華さよりも自分たちのライフスタイルに合った快適な暮らしを追求する傾向が高まっているように思います」
いざ狭小の注文戸建てを建てると決めたら、部屋の広さや使い方に関する固定観念を捨て、空間を柔軟に活用する発想が重要だ。例えば、子ども部屋の広さにこだわらず、寝る・勉強するなどの「行為」で空間を分ける考え方や、廊下や洗面所をファミリークローゼットとして兼用するなど、限られたスペースを最大限に生かす工夫が必要不可欠だからだ。
渡邉さんが設計した栁原邸(東京都目黒区)にお邪魔すると、随所に家族のこだわりと、それをかなえた専門家のアイデアが詰まっていた。栁原さんは「家族みんながリビングで過ごす」をいちばんのコンセプトに掲げた結果、家族が自然にリビングに集まり、一緒に過ごす時間や密度が増えたそうだ。子どもたちも「自分のお部屋もあるけど、リビングで遊ぶ時間が好き」と口を揃える。
狭小戸建てに興味を持つと、まずは建売物件を探しはじめる人が多いかもしれないが、渡邉さんは「希望エリアに足を運んで老舗の不動産会社を訪ねてみたり、同エリアで実績のある設計事務所に相談してみるといいですよ」と語る。
「狭小戸建ての設計には専門的な知識と経験が必要です。タイミングが良ければ、水面下の優良物件情報にアクセスできる可能性も高まりますし、アフターケアの面でも心強いでしょう」
最後に、狭小戸建てを建てるうえで失敗しないコツを聞いた。
「予算内でどこにコストをかけ、どこを妥協するかを家族で事前に話し合い、優先順位を明確にしておくことが不可欠です。夫婦間でもこだわりを持つ場所は異なります。『外観は夫、キッチンは妻』など、こだわりの場所別の担当制にすれば、意見の衝突を避けつつ、満足度の高い家づくりができます」

株式会社バレッグス
一級建築士 宅地建物取引士
渡邉 実さん
設計事務所アーキブラスト主宰。東京都城南地区を中心に狭小地の住宅設計・建設に18年以上関わる。YouTubeチャンネル「東京狭小地でも空間を最大に生かす家づくり」が人気。
〝みんなで集って、愉しむ家〟
目黒区・栁原さん宅に見る、設計と暮らし方の工夫
【設計POINT 01】常に家族が集うキッチン&リビング

2階のリビングダイニングは17.1畳で広々。天井まで吹き抜けで東南から陽が入り、明るい。キッチン脇にはワークスペースがあり、子どもたちはここで宿題をこなすことが多い。
キッチン脇にワークスペース

【設計POINT 02】逆転の発想が生きる空間の工夫
広い玄関ホールにしたことで圧迫感がなく、友人知人と語らえる場所になった。子ども部屋はベッド上の空間を収納スペースに。3.9畳に感じさせない工夫として、収納扉をなくした。
憩いの空間にもなる玄関ホール

子ども部屋は大胆にコンパクト化

【設計POINT 03】〝ファミクロ〟など、収納は家族でひとまとめに
リネンや下着・パジャマ等の着替えは洗面台・風呂脱衣所の脇にひとまとめ。「脱いで、着替える」が1か所で可能に。そのほかの衣類は1階のファミリークローゼットへ。この発想で、個人部屋の収納スペースを必要最小限に収めた。
着替えの収納は洗面所に集約

狭小戸建てのキモ。ファミリークローゼット

【設計POINT 04】限られたスペースを最大限に生かす
階段下にはトイレを、吹き抜けと天井の隙間にロフトを設けて実用的に活用。ロフトは子どもの遊び場になるだけでなく、妻がひとりでくつろぐ憩いの場となっている。
1階トイレは階段下を利用

ロフトは家族の秘密基地


広さより場所にこだわり、暮らしやすい家になりました!

「みんなでリビングで過ごす」を第1コンセプトにした栁原邸。1階は玄関ホール、2階はLDKを主役にする分、個々の部屋は思い切ってコンパクトに。結果的に狙い通りの暮らしがかなった。

狭小戸建て 成功の秘訣3か条
【1】固定観念にとらわれない
【2】地元の施工会社と密に相談
【3】希望の優先順位を明確に

取材・文/大津恭子 撮影/井上竜馬(R1996) イラスト/岩井勝之 編集/原口りう子
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