日経平均株価と並ぶ経済指標の一つとして、ニュースになる機会も多い長期金利。一般的には国が発行する「10年物国債」の利回りをいう。長期金利は市場動向によって変動しており、債券が買われると債権価格が上昇して金利は低下、債券が売られると価格は下落して金利は上昇する。
ちなみに長期金利が上昇すると企業にとっては金利負担や資金調達コストが上昇、個人には住宅金利の上昇による購買力低下など、景気減速の要因となる事態も考えられる。
そんな長期金利上昇に関する分析リポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏から届いているので概要をお伝えする。
原油高によるインフレ懸念や財政悪化懸念により、足元のイールドカーブはスティープ化が進行中
5月18日の国内債券市場では、長期金利の指標となる新発10年国債利回りが一時2.8%に上昇(国債価格は下落)して、1996年10月以来、およそ29年半ぶりの高水準に達した。
10年国債利回りは、中東情勢の悪化を受け、2月27日から5月18日までの期間、約62ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇したが、期待インフレ率の上昇によるところが大きく(図表1)、原油高によるインフレ懸念を反映した動きと考えられる。

また、高市早苗首相は5月18日、2026年度補正予算案の編成を視野に入れて、財政上の措置の検討に入ったと明かし、ロイター通信は同日、政府は補正予算の財源として、新たに特例公債(赤字国債)を発行する方向で検討していると報じた。
これを受け、財政リスクに敏感とされる残存期間10年を超える超長期国債の利回りが上昇し、足元の利回り曲線(イールドカーブ)は、右肩上がりで傾きが急になるスティープ化(※編集部注)が進んでいる(図表2)。
※編集部注 「長期金利が短期金利よりも大幅に上昇」または「短期金利が長期金利よりも大幅に低下」することで、曲線の傾斜が急峻になること。

■ここからは改めて、金融政策と財政政策が適切に遂行され、市場の信認を得ることが重要になる
一般に、経済成長率とインフレ率について、緩やかな上昇見通しが形成されるもとでの長期金利上昇であれば、株価にとってそれほど悪いものではないと考えられる。
ただ、インフレ率の大幅な上昇や、中央銀行による利上げが後手に回る「ビハインドザカーブ」、財政悪化などへの懸念が強まるなかでの長期金利上昇は、株式市場にもマイナスの影響が及ぶリスクがある。
特に、ビハインドザカーブに陥った場合、中央銀行は遅れて大幅な利上げに追い込まれてしまうため、景気が急速に冷え込み、株価に大きなダメージを与えかねない。
前述のとおり、足元の長期金利上昇の背景には、原油高によるインフレ懸念や、財政悪化懸念があると考えられることから、ここからは改めて、日銀と政府が、それぞれ金融政策と財政政策を適切に遂行し、市場の信認を得ることがより重要になるはずだ。
■これまでの金融・財政政策見通しに基づけば、足元の長期金利上昇での日本株失速リスクは限定的
三井住友DSアセットマネジメントは日銀の金融政策について、年内は6月と10月、2027年は3月と9月、2028年は3月に25bpずつ利上げが行なわれ、無担保コール翌日物金利の誘導目標は2%程度に達すると予想。利上げ継続によって深刻なビハインドザカーブは避けられるとみている。
なお、日銀は6月の金融政策決定会合で、長期国債買い入れの減額計画について、中間評価を実施する予定だが、市場に配慮しつつ段階的な減額を継続していくと思われる。
政府の補正予算については、ガソリン補助金などの財源を確保するために予備費を増額する案が浮上している模様だ。ただ、高市首相は債務残高GDP比を引き下げることで財政規律に目配りし、市場の信認を確保する考えを示しており、野放図な財政運営の恐れは小さいと考えられる。
以上を踏まえると、長期金利にしばらく上昇圧力は残る可能性があるものの、日本株が急激に失速するリスクは限定的とみている。
構成/清水眞希







DIME MAGAZINE












