「去年より給料は上がったはずなのに、生活がラクになった実感がゼロ」。そんなモヤモヤを抱えている人は多いのではないだろうか。実際、近年は企業の賃上げニュースが相次ぎ、給与明細の額面も増えている。
しかしその一方で、「貯金が増えない」「外食や旅行をためらうようになった」という声も目立つ。
その背景にあるのが、“実質賃金”の低下だ。給料の数字だけでは見えない「本当のお金の価値」は、物価高によって大きく目減りしている。なぜ賃金は上がっているのに生活は苦しいのか? 名目賃金と実質賃金の違い、そして今後の家計への影響をわかりやすく解説する。
給料が増えていても、なぜ苦しいのか?
名目賃金の前年比は、2024年から1.5%を超えて上昇している月がほとんどだ。年度別に見ても、2022年が前年比2%、2023年1.2%、2024年2.8%、2025年2.3%と順調に賃金が増えていっている状況だ。例えば、2021年に給与が30万円だったとき、32万円、32.4万円、33.3万円、34万円と増えていっているということになる。
一方で、実質賃金の前年同月比(CPI総合)を見ると、前年同月比でマイナス、つまり減っている月がほとんどだ。年度別に見ても、2022年は前年比-0.5%、2023年-2%、2024年0%、2025年-0.8%と、年々実質賃金が減っていっている状況だ。つまり、2021年に給与が30万円だった人は、実質29.9万円、29.3万円、29.3万円、29万円と少しずつ減っているということになる。
賃金が上昇しているのに、実感がわかないのは、この実質賃金が下がっているからである。では、同じ賃金のデータで、なぜ一方はプラスで、もう一方はマイナスと、大きく違う数字になるのだろうか。
名目賃金と実質賃金の違い
名目賃金は、まさに実際に賃金を受け取ったときの数字であり、多くの人が目に見える形で実感している数字だ。一方で、目に見える数字だけではその賃金の価値を測ることができない。たとえ、同じ金額でも、今日あるお金の価値が来年同じ価値であるとは限らない。それでは、お金の価値をどう計るかというと、モノをどのぐらいの金額で購入できるかどうかで知ることができる。
今、1,000円で買えるA商品の価格があったとして、来年5%値上がりして1,050円になっていたら、同じ1,000円札を出しても、来年はA商品を買えなくなっており、その1,000円札の価値は下がったということになる。このように、モノの価格が上がり、その結果お金の価値が下がることを、インフレという。どのぐらいインフレしているかは、消費者物価指数(CPI)で知ることができる。
CPI総合の前年同月比は、2022年4月以降、ほとんどの月で2%を超えている。実質賃金は、名目賃金からこのCPIを引くことで、実際のお金の価値を反映した賃金の現状を測ることができる。実質賃金が下がっているということは、受け取る賃金の金額が増えていたとしても、実際のお金の価値を加味した賃金は下がっているということになる。
受け取った賃金で、生活費を支払ったり、モノを買ったりするため、本当に賃金が上がったかどうかは、この実質賃金が上がっているどうかが最も重要なのである。
今後どうなる?注意しなければならないのは?
名目賃金が上昇する一方で、実質賃金は前年比を下回る状況が続いていた。これは、CPIが前年比で2%を超える上昇をしていたからである。ただ、このようなインフレも今年に入って2%を下回り、実質賃金も今年に入って前年比でプラスに転じるようになっていた。しかしながら、2月末から中東情勢が悪化し、ホルムズ海峡の交通が滞っていることにより、4月以降、石油価格の上昇により、食品、日用品、光熱費が大きく上昇する可能性がある。せっかく、落ち着いてきたインフレも再び2%を超える上昇になる可能性がある。その場合、今年に入って前年比プラスへと転じた実質賃金も、再びマイナスに転じる可能性がある。
したがって、再び賃金は上昇しても、生活が豊かになった実感がわかない状況は続くかもしれない。賃金が上がったからといって、昔より贅沢すればモノの価格が上がっていることから、ツケが回ってくる可能性がある。使い過ぎには注意したい。
(参考)
厚生労働省 2026年3月結果速報 賃金の前年比、前年同月比の要因分析
2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年3月分、2024年3月分、2025年3月分、2026年3月分
文/大堀貴子
バイトの時給は35年前からどう変わった?5大ファストフード店の時給を調べてみた
近年ずっと「賃金が上がらない」と言われている我が日本。だが約35年前の時給と比較すると、さすがにどのお店も上昇している。賃金の地域格差も解消していないが、家賃…







DIME MAGAZINE

















