5月上旬から中旬にかけて発表された自動車大手の2025年度決算は、大手4社がいずれも減益となった。自動車は数万点の部品を元に製造されるため、その業績が関連産業を含めた経済全体に与える影響力は大きく、賃金水準や雇用情勢にも直結するとも言われている。
そんな自動車業界の2025年度決算に関する分析リポートが三井住友DSアセットマネジメントから届いているので、概要をお伝えする。
POINT1:米国の関税、EV政策の影響で25年度は大幅減益
自動車大手の25年度決算では、全4社営業減益となった。ハイブリッドを中心に、PHEV(プラグインハイブリッド)、BEV(バッテリー式電気自動車)など、電動車の販売を伸ばしたトヨタとインド市場が下半期急回復したスズキの販売台数は増加したが、日本や中国を含むアジアの販売不振の影響が大きいホンダ、日産の販売台数は減少した。
営業損益面では、米国依存度の低いスズキ(米自動車事業から撤退)も含め、(1)部品・資材調達コストの上昇、(2)米国関税の影響、(3)ドル安とルピー安、などから営業利益は減少した。
BEV事業で多額の減損費用を計上したホンダ(1兆4536億円の影響)が営業利益段階から赤字となり、国内外の工場再編費用を特別損失(5768億円)として計上した日産は純利益が赤字となっている。なお、金融収支の改善を背景に、スズキは純利益段階では増益を達成している。
26年度、4社とも販売台数は増加すると予想しているが、中東紛争の影響を厳しく見ているトヨタ自動車は若干の増加にとどまる想定だ。
■営業利益予想は部品・資材コストの上昇などを理由に保守的な見通し
営業利益予想は、(1)半導体、銅、アルミ、プラスチックなど部品・資材コストの上昇、(2)為替の前提が実勢よりも円高になっている、(3)人件費、研究開発費の増加、などを理由に保守的な見通しとなっている。

ホルムズ海峡封鎖を受け原油価格が上昇、自動車生産で材料として使われるプラスチックの値上がりが避けられない状況となっている。
アラブ首長国連邦をはじめ、サウジアラビアやバーレーンはアルミニウム地金の有力な生産地で、中東紛争はアルミニウムの供給にも影響を与えている。
また、大規模なデータセンターへの投資を背景に、配線に使われる銅の需要が増えているほか、メモリーを中心に半導体の需要も急増。値段も上昇している。各社、資材・部品の調達コストの上昇を厳しめに業績予想に織り込んでいるようだ。
なお、ホンダとスズキの二輪車部門の販売台数は、26年度も引き続き順調に拡大する予想となってい流。

POINT2:グループ各社の業績は、一過性の費用を除くと、合理化効果で増益
トヨタグループ各社の25年度決算では、(1)トヨタの生産・販売台数が増加、(2)ハイブリッド車向け部品やセーフティシステムなど採算の良い製品の売上高構成の上昇、(3)合理化や生産性アップによる原価改善、などを要因に大半の会社が営業利益増益を達成した。
例外的に、エンジン認証関連費用、欧州事業の譲渡損などの構造改革費用が膨らんだ2社が営業利益減となった。
米国の追加関税に関しては、自動車メーカーに対する値上げを進めているが、同時に部材費の値上がりもあり、両者を合わせると顧客の自動車メーカーに完全に転嫁しきれていない会社が多いようだ。
26年度の各社による営業利益予想は、デンソーを除き増益予想となっている。デンソーは、半導体、電子部品、銅、アルミなどデータセンターと競合する部品・材料の購入額が大きいため、部材費等の値上がりを厳しく見て計画していることが、減益見通しの要因と見られる。
デンソー、アイシンなどは中東情勢のマイナス影響をバッファーとして厳しく見込んでいる。
■人件費などの減益要因は合理化による原価改善で採算を維持できると予測
各社は減益要因として人件費の増加、部材費の値上がり、などを見込んでいるが、合理化による原価改善で採算を維持できると見ている。
26年度のトヨタの連結販売台数が、25年度とほぼ横ばいでも、採算の良いハイブリッドなど電動車の構成比率が高まることは業績にプラス材料だ。
また、グループ各社は、欧米やアジアの自動車会社やトヨタ以外の日系メーカー向けに売上高を伸ばすことのできる製品を持っていることも、増益要因となり得る可能性がある。
中でも、オートマチックトランスミッション(AT)、無段変速機(CVT)など駆動力を伝達する装置や構成部品は、多くの自動車会社がBEVへのシフトを見直しているため、トヨタ以外への販売が増えそうだ。
◎個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
構成/清水眞希







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