ボルドーワインといえば、フルボディの赤、高級ブランドの赤のイメージが強いかもしれない。その一方で、ごく普通にカジュアルに楽しめるワインも増えてきた。ブランドイメージで敬遠していてはもったいない。ボルドーワインの新事情を紹介しよう。4月に開かれたボルドーワイン委員会(Conseil Interprofessionnel du Vin de Bordeaux、略称CIVB)のボルドーワイン年間計画発表会を取材した。
きびしさを増す世界のワイン事情
はじめに近年の世界のワイン事情をざっと見てみよう。フランスに本部を置く国際ブドウ・ワイン機構(OIV: Organisation Internationale de la Vigne et du Vin)は5月12日、2025年の世界のワイン輸出量を発表した。前年比4.7%減で、減少は4年連続。大きな要因は世界的に見られる酒離れ、特に若者のワイン離れの流れだ。昨年はこうした市場低迷にトランプ関税がのしかかった。もちろん、これらマイナス要素はワインに限った話でも、ボルドーワインに限った話でもない。
日本市場に向けては「昨今のユーロ高、円安の影響も大きい」と話すのは、輸出マーケティング責任者キャロリーヌ・ヴィニュロンさん。それでもなお、日本におけるボルドーの知名度、信頼の高さは大きなアドバンテージであるとして、「店頭でのワイン試飲の機会を増やし、ボルドーは特別な機会に飲むものではなく、親しみやすい、バラエティ豊かなワインであることをアピールしていきたい」と話す。
また、「過去5年間でぶどう畑面積は20%減少しています」と、かなり衝撃的な数字を明かすのは中国・日本市場担当のオレリー・ティオリエールさん。ワインのトレンドを「特に赤ワインの減少が顕著な一方、辛口の白、ロゼ、クレマン(ボルドーのスパークリングワイン)が伸びています。日本ではよりフレッシュなワインが好まれる傾向にありますが、これは世界的な傾向でもあります」と言う。
伝統的なイメージが強いボルドーワインであるが、一方でボルドーの生産者や販売者は、現代の嗜好に合ったワインづくりを追求しつづけてきた。気候変動に対応するぶどう品種の開発、サステナビリティ向上をめざした畑づくりにも取り組んでいる。これら課題に直面するボルドーワインはどんな変化を遂げているのか。
メドックの白、冷やして飲む赤「ボルドー・クラレット」の登場
ボルドーワイン委員会は、ボルドーワインの変化として、「より果実味豊かで、フレッシュかつバランスの取れたスタイルへの進化」「色や飲用シーンの多様化」を挙げる。それを端的に物語るのが次の4つの動きだ。
1.「メドックの白ワイン」の誕生
メドックはボルドーワインの代表的な地区。「シャトー・ラフィット・ロートシルト」「シャトー・ラトゥール」「シャトー・マルゴー」などの五大シャトーを擁する。そんな赤ワインの代表的な銘醸地から2026年4月「AOCメドック・ブラン」が初リリースされた。
赤ワインが有名過ぎるものの、メドック地区では以前から白ワインが生産されてきた。しかし、フランスワインの品質のお墨付きともいえるAOC「原産地統制呼称」の認可を受けていなかったため、ラベルに「メドック」と表示できず、認知度が低かった。(AOCの認可とは、「シャンパン」(フランス・シャンパーニュ地方)、「夕張メロン」(北海道夕張)のようなブランド力の高い原産地名を名乗れることを意味する)
「AOCメドック・ブラン」誕生の背景にあるのは、世界的な白ワイン人気の上昇だ。ボルドーのカテゴリー別生産量では、過去10年で赤ワインの割合は3%減少、辛口白ワインは9%増加している。果実味とフレッシュさが味わえ、見た目にも軽い白ワインの人気はボルドーにも広がっている。
2.冷やしておいしい「ボルドー・クラレット」の登場。
新AOCの話題をもうひとつ。2025年ヴィンテージからボルドーAOCに加わった新カテゴリーが「ボルドー・クラレット」だ。タンニン(渋味に関わるポリフェノールのひとつ)が少なく、果実味が豊かな赤ワイン。しっかり冷やして飲むスタイルが推奨されている。しっかりといっても12℃。
もちろん好みの温度で飲めばいいのだが、一般的に赤ワインは常温で飲むものと教わる。ヨーロッパの常温とは14~18℃くらいを差し、赤ワインもそれくらいが美味しい、冷やすと香りが立ちにくくなる、というのが定説だ。
ボルドー・クラレットはそんな一般論を軽やかに飛び越えたフレッシュな赤ワイン。ボルドーワイン委員会では「食前酒にぴったり」とおすすめしている。
3.「アントル・ドゥ・メール」から赤ワイン登場
アントル・ドゥ・メールはボルドーワインを代表する産地のひとつで、1937年にAOCに認められた辛口の白で有名だ。その地で2023年から赤ワインの生産が始まっている。1で紹介したメドックの白ワインと対照的な動きだ。
アントル・ドゥ・メールは、日本ではメドックほどの認知度はないが、そのせいか手頃な価格のものも多い。白で有名な産地から赤がAOC認可されたのも、「色や飲用シーンの多様化」を顕著に表しているだろう。
4.スパークリング「クレマン・ド・ボルドー」の存在感の高まり
「クレマン・ド・ボルドー」はボルドーのスパークリングワイン。この10年ほど人気上昇を続けている。色は白からロゼ、甘さは辛口から中辛口まであり、嗜好や飲用シーンに合わせやすい豊富なバリエーションが特徴。ヴィンテージもあればノンヴィンテージもあり、価格も予算に合わせやすい。
1500円からリストアップ「ボルドーワインセレクション2026」
ボルドーにとって日本の存在感は決して小さくない。2025年は輸出先として世界で5番目、約1,600万本が輸出された。
日本の輸入ワイン市場から見ると、輸入元はチリとフランスで上位を争う。日本人のフランスワイン好きは健在だ。そのフランスワインの中で数量、金額とも最大のシェアを占めるのがボルドーワインだ。
そんな日本市場向けに、ボルドーワイン委員会は、日本で入手可能なワインを対象に70種以上の「ボルドーセレクション2026」を選定している。選定に当たった審査員は、日本のワイン専門家。情野博之氏(レストラン・アピシウス)、矢田部匡且(東京エディション虎ノ門)、大葭原風子(コンラッド東京)、吉田英子(Bistro DECO)らである。
価格帯は1500円から5000円。赤ワイン、白辛口、白甘口、クレマン・ド・ボルドー、上では紹介していないが、ロゼ、クレレと幅広いラインナップだ。
ボルドーワイン委員会輸出マーケティング責任者のヴィニュロンさんは、日本の「ワインセレクション2026」の特徴をこう説明する。
「今年は比較的新しいヴィンテージが多く、ボルドー=長期熟成型ワインという従来のイメージではなく、若いうちから楽しめる親しみやすいボルドーワインの魅力も感じられるラインナップになっています。価格を抑えながらも、より複雑な香りや豊かな味わいを備えたキュヴェも含まれており、多様なニーズに応えられるセレクションです。
特に今回はクレマン・ド・ボルドーの存在感が高まっています。ボルドー産スパークリングワインの広がりと、日本市場における関心の高まりを反映しています。
加えて、非常に個性的なラベルデザインや、環境配慮型の取り組みを行う生産者が増えていることに現在のボルドーワインの変化が表れています」
日本は輸入ワインの総額の4割をスパークリングが占める。世界的にもスパークリングワイン人気が高く、クレマンへの注目も高いと言えるだろう。
季節は夏を迎える。今年は爽やかな、果実味あふれるボルドーワインを探してみてはいかがだろうか。
また秋には、2021年から開かれているイベント「渋谷フレンチフェスティバル」が予定され、200以上の飲食店でボルドーワインが提供される見通しだ。
取材・文/佐藤恵菜
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