2025年9月にサントリーから発売された「赤玉プレミアムブレンデッドワイン」。ワイン事業はサントリーグループの創業の事業。長い歴史を持つ「赤玉ブランド」からの新商品として話題を集め、発売後3日で14万本を出荷し同社のボトルワインとしては過去10年間で最速の売上を記録した大ヒット商品だ。
今回は、商品開発を担当したサントリー株式会社 マーケティング本部 ワイン部 国産・輸入ワイングループ 猪村洋平さんに、商品誕生までの経緯や商品に込めた想いについて伺った。

*本稿はVoicyで配信中の音声コンテンツ「DIMEヒット商品総研」から一部の内容を要約、抜粋したものです。全内容はVoicyから聴くことができます。
SNSに投稿された3万枚以上の写真を調査し、「和食に合うワイン」の開発へ

1907年、創業者の鳥井信治郎氏によって発売された赤玉は、日本のワイン文化の扉を開いた象徴的なブランド。当時、ワインは薬用として認識されていたが、鳥井氏は大阪の港で国際的な文化に触れ、嗜好品としてのワインの可能性を見出した。新商品となる赤玉プレミアムブレンデッドワインの開発背景について、猪村さんは次のように話す。
「直近、日本国内のワイン市場は少し踊り場に来ている状況です。赤玉ブランドからも新しい商品で新しい需要を創造して、ワインを広く飲んでいただき、ワインを通してお客様を幸せにしていきたいという思いがありました。改めて市場を広げるための商品という位置づけで今回開発の企画をしました」
調査の結果から、日本では約7割の方が「夕食時にお酒を飲む」ことがわかったものの、さらにSNSからもリアルな情報を集めたという。
「チームで手分けをして、SNSに投稿されている写真を5年分ほど遡りました。3万枚以上の晩酌写真をプリントアウトして、会議室の部屋に貼り出し、何を食べているのか、何を飲んでいるのかをグルーピングしたんです。そこから、ワインを洋食と合わせている人が圧倒的に多いこと、そもそも日本の食卓では洋食もあまり出てこず、和食が多いという気づきがありました。ワインをもっと飲んでもらうには『みんなが食べている和食に合うワインがないと駄目だよね』というところから開発がスタートしました」

祖業ブランドであり、長い歴史を持つ赤玉だからこそ、開発時にはたくさんのハードルがあったと猪村さんは振り返る。
「赤玉は、社歴が長ければ長いほど思い入れがあるブランドです。ベテラン社員それぞれの頭の中に『自分の思い描く赤玉像』みたいなのものがあって、現場からは『こうじゃないか、ああじゃないか』という意見もありました。創業家出身の副会長が当社のマスターブレンダーなので、商品開発時は上申をして、最終的にコンセプトと味を見てもらったため、通常の開発よりもステップも多かったんです」
赤玉プレミアムブレンデッドワインの開発を進めるにあたり、改めて「赤玉ブランドとは何か」を定義し直したという。
「赤玉の美味しさを成立させるファクターは何かを整理するために、昔の役員の手記などを含め過去の文献を紐解けるところからすべて紐解きました。甘さだけではなく国産の生の葡萄も使っているのでフレッシュな味わいがありつつ、熟成感がある。口に入れた瞬間は甘やかで美味しいんですが、それだけではなく、その後の熟成感があとを引くところがポイントだと、社内でわかりやすく要点をまとめて、構成している要素を改めて規定しました」
「ワイン単体で美味しい」「食事に合う」の両立の難しさ

赤玉プレミアムブレンデッドワインは、当社が培ってきた多様な洋酒づくりの知見を生かし、複数の厳選したワインに、様々な原料酒を使うことで独自の味わいを引き出している。
「通常のワインはブドウだけでつくっています。赤玉プレミアムブレンデッドワインもメインはブドウですが、そこにブランデーや和のボタニカルスピリッツなど、通常のワインづくりでは考えられない原料酒を少しブレンドしています。ブドウのフレッシュさがありながら、シェリーを模したものや、ブランデーのあと引く芳醇さが感じられつつ、最後は和のスピリッツが効いてきて、後半はすっといなくなるという、通常のワインづくりではなかなか成しえない味わいの構成を成り立たせました」
開発担当者は130以上試作を作り、猪村さん自身ものべ300回以上の試飲を行ってきたという。
「食事と一緒に合わせながら、かなりの数の試飲を行ってきました。その中から厳選して、10回に1回以上は上司や同僚にも飲んでもらいました。食事と合うものができてもワイン単体で飲んだら美味しくない、単体で美味しくなると今度は主張が強すぎて食事と合わないといったこともありました。いろいろと改良を重ねながら、単体でも美味しく、食事ともしっかり合うことを成立させるのに苦労しました」
デザイン面では、赤玉らしさを残しつつも、高級感のある日本の商品であることを伝えるために試行錯誤があったという。
「食事と合うことをわかってもらうこと、価格は1000円前後と安くはないため高級感ある見た目になるようにしました。ブランドを名乗る『赤玉らしさ』が感じられるところをいろいろと考えて、方向性だけで30以上の案が出ました。最終的には高級感をありつつ、日本語も入っていて安心して日本のものだと選んでいただける今のデザインを採用しました」
日常的にワインを飲んでいなかった層からの支持で大ヒット

そうして完成した赤玉プレミアムブレンデッドワインは、発売後3日で14万本を出荷し、サントリーのボトルワインとしては過去10年間で最速の売上を記録した。
「日本では、普段からお酒は飲むものの、ワインを飲むことにハードルの高さを感じている方が大半です。ワインを飲む時はちゃんとしないといけない、襟元を正して飲まなければといったイメージもあるかもしれません。ただ、今回の商品はなかなか手が伸びなかった方々に支持をしていただきました。日常的にはワインを飲んでいなかった方たちが、今一番買い支えてくれているお客さんになっています」
猪村さんはヒットの理由として、流通各社の協力とテレビCMの二つを挙げる。
「今回、流通各社さんからこの商品の志に共感していただき、お客さんが購入できる場所をしっかりと用意できました。国内に流通しているワインは、ヴィンテージの違いを含めると1万5000種類以上あると言われています。お店によっても売っている商品はまちまちですが、今回はいろいろなお店で一気に取り扱っていただけたことがヒットの要因の一つです。
また、夫婦でワインを注ぎ合うテレビCMを実施したことも、広く知っていただくきっかけになったと思います」
日本の食卓での〝当たり前の存在〟を目指して
ヒットを生み出すコツについて、猪村さんは基本に立ち返ることが大切だと語る。
「商品のコンセプトを考えるにしても、商品開発するにしても、やはり生活者の方にいかに真摯に向き合うか。そして、その人たちの生活をより幸せにしていくという思いが、一番大事なところだと思います。当たり前のことではあるんですが、それがすべてかなと改めて思っています」

「『赤玉パンチ』という赤玉スイートワインをベースにしたワインサワーをリニューアルして新発売しました。元々すっきりとした甘さが特徴だったんですが、甘さはそのままに、使っている原料酒の数を倍以上に増やしています。複層的な奥行きのある味わい、かつすっきり切れる飲みやすい味わいにつくり上げています。『超入門ワイン』のような位置づけですので、若い世代にも届いたらいいなと思っています」

最後に、猪村さんは今後の展望についてこう話してくれた。
「赤玉という接点でワインカテゴリの扉を開くことを、チームの合言葉にしています。このブランドを通して、ワインというものに触れていただき、もっとワインを身近に感じていただきたいです。目指すのは、日常の食卓風景に溶け込んでいて、当たり前の状態になっていることです。ワイン文化を広げたいという創業者の夢のその先の姿を目指して頑張ります」
取材/DIME編集部 文/久我裕紀







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