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静岡市のキャラクターマンホールを見て考える「人口流出に悩む地方都市のこれから」

2026.05.18

「キャラクターマンホール」ほど、その地域の特色を問題点まで含めて表しているものはないかもしれない。

その地域の「顔」となるモノや建造物、或いはゆかりのアニメキャラなどをマンホールの表面に描いて路上に設置する。これは該当自治体の意見表明であると同時に、「その地域でしかできない町おこし」の方向性を公表する手段である。が、それは裏を返せば「その部分に弱みが見える」ということではないか?

今回は静岡県静岡市のキャラクターマンホールを紹介しながら、この地域の課題についても触れていきたい。

地方自治体が市民の生活を保障する21世紀

政治学者の松下圭一は、それまで行われてきた国家統治から市民自治への移行を唱えた人物である。

松下が概念として成立させた「シビル・ミニマム」は、国家ではなく地方自治体という単位で市民に対して最低限の生活を保障するというものだ。これが現代の地方政治に与えた影響は絶大で、たとえば国土交通省が日本版ライドシェア・公共ライドシェアの普及を推し進める時も自治体単位での制度設計が前提である。

ある種の地方分権の形が今ここにあるわけだが、それ故に自治体には極めて大きな責任が課せられている。

敢えて悪い言い回しを使うとしたら、市民自治やシビル・ミニマムといった概念のせいで各自治体はそれまで見過ごしてきた「地域特色のもの」を必死に探してそれを地域外にPRしなければならなくなったのだ。

静岡市の場合は、特産物である茶やみかんなどは産業の面から見ても文化の面から見ても「古参メンバー」であるし、そもそもこの地域は古い歴史を持っている。市民自治の概念が広く浸透する以前は、静岡市を指す文化的記号はそれだけでよかった。もちろん、今はまったく事情が異なる。

それまでは地方行政が見向きもしなかった、少し前までの言い方では「サブカルチャー」と呼ばれる分野のモノやコトに目を向ける必要が出てきたのだ。

「ザクって何?」

静岡市を象徴するサブカル作品といえば、数年前までは故さくらももこの漫画『ちびまる子ちゃん』だった。それしかなかった、というのはいささか言い過ぎかもしれない。が、2020年代に入り静岡市がプラモデル産業の存在を強くPRする前は「静岡市=お茶とサッカーと『ちびまる子ちゃん』のまち」というのが固定化されたイメージだったはずだ。

それが今ではプラモデル、特にガンダムのプラモデルを市のイメージとして強調するようになった。

それはキャラクターマンホールにも表れている。下は2024年にJR東静岡駅北口に設置されたガンダムのマンホールだ。

そして、下の画像はJR静岡駅南口の静岡ホビースクエア前にあるマンホール。こちらはザクである。

ガンダムはともかく、ザクというモビルスーツ(世間一般には「ロボット」と認識されている)があることは静岡市の高齢者は知らないだろう。静岡市民だからガンダムに詳しい、ということは全くない。このマンホールはバンダイナムコグループから寄贈されたものとはいえ、「このザクという緑色のロボットは一体何だ?」と首を捻った静岡市民は少なくなかったはずだ。

機動戦士ガンダムとそれを模型化したガンプラは、静岡市の「地域文化の代表例」としては古参どころか新参者であることを我々は強く意識しなければならない。

人口は絶対に回復しない

2025年12月、静岡市長の難波喬司氏が衝撃的な発表を行った。

これについては地元の各メディアが取り上げているが、以下アットエスの記事からその内容を引用したい。


静岡市の難波喬司市長は12月2日の市議会で「2050年の人口目標を54万人に設定するのが適切」という考えを初めて示しました。人口減少に歯止めをかけるため、若者の雇用を創出していく方針です。

<自民党静岡市議団 丹沢卓久市議>
「市長は見直し後の第4次総合計画の中で人口目標をどのように設定されるのかお答えください」

静岡市議会で質問されたのは、将来的な人口目標です。静岡市の2025年10月末時点の人口は約67万人。市が将来人口を独自推計した結果では、2050年には約49万人に減少し、政令指定都市の指定要件である50万人を割り込むと予測されています。

自民党静岡市議団の丹沢卓久市議は、政策を進める上で今後の行政の社会的ニーズを予測することは不可欠だとして、具体的な人口目標値をただしました。

<静岡市 難波喬司市長>
「流出抑制と流入促進を総合的に進めることで、将来の減少幅を約2割に抑えることを目標に、2050年の人口目標を54万人に設定するというのが適切ではないかと考えております」
(「54万人に設定するのが適切」難波市長が2050年の人口目標を初明言 政令市維持へ若者雇用創出 =静岡市 アットエス)


要約すれば、静岡市の人口は21世紀の中頃までは減る一方であり、何をどうやっても絶対に増えることはないということだ。

人口回復のために静岡市の全ての英知と資源を割り振ったとしても、人口減少のペースが緩やかになるだけである。が、それを怠れば政令指定都市の指定要件50万人を割り込んでしまう。全力を出しても問題は解決しないが、全力を出さなければ問題はさらに悪化する。

そうした苦境の只中で静岡市は「プラモデルのまち」をPRしていることを、我々は考慮しなければならない。

言い換えると、それまでは「サブカルチャー」とされていたモノやコトがシビル・ミニマムの維持を実現するためには欠かせない要素と見なされているということである。そうした現象が、足元のマンホールから見通すことができるのだ。

参考
「54万人に設定するのが適切」難波市長が2050年の人口目標を初明言 政令市維持へ若者雇用創出 =静岡市 アットエス

文/澤田真一

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1984年生まれ。静岡市生まれ相模原市育ち。グラップリング歴20年超。世界のスタートアップ情報からガジェットレビュー、Apple製品、キャッシュレス決済、その他諸々のジャンルの記事を執筆。

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