長崎県のテーマパーク「ハウステンボス」に異変が起きている。筆者が約10か月前に訪れた時、園内は「ミッフィー・ワンダースクエア」を楽しむファミリーや女性同士のゲストで賑わっていた。しかし、2026年4月末に園内で楽しんでいたのは、ファミリーたちに加えて、多くの男性ゲスト、そしてコスプレイヤーだ。そして手に持っているのは、「極秘」と書かれた銀色の謎の封筒――。
異変の理由は、2026年4月24日(金)誕生の『エヴァンゲリオン』をテーマにした8Kライドアトラクション「エヴァンゲリオン・ザ・ライド – 8K – 」。ハウステンボスをNERV認定「迎撃要塞都市」として始動させた仕掛け人、マーケティング本部長CMOの糸山尚宏氏にその狙いを伺った。
男性の来場者も増加。幅広い世代・性別に愛されるテーマパークへ
「エヴァンゲリオン・ザ・ライド – 8K – 」は、ハウステンボスが掲げる成長戦略第三弾のプロジェクト。ハウステンボスを訪れる人たちが「旅行」として花やイルミネーションを楽しみにくるゲストが多かったため、「テーマパーク」としての魅力を強化するための戦略だ。ちなみに成長戦略第一弾として2025年6月にはミッフィーをテーマにした新エリア「ミッフィー・ワンダースクエア」が、第二弾として2025年9月には超絶景ライドアトラクション「エアクルーズ・ザ・ライド」がオープンしている。
そして糸山氏はエヴァンゲリオン開発総責任者・赤木リツコのように、「エヴァンゲリオン・ザ・ライド – 8K – 」の戦略立案と実行を担当。成長戦略第三弾に『エヴァンゲリオン』のアトラクションを導入した一番の理由は、ハウステンボス史上最高の大興奮が体感できるようなアトラクションに、『エヴァンゲリオン』の世界観や歴史の深さが完全にフィットしていたからだと話す。
糸山氏「スリル系のアトラクションの強化を考えた時に、国内外で支持されている『エヴァンゲリオン』がぴったりだと思い、ライセンサーのカラー様に相談いたしました。ハウステンボスは30年以上の歴史があり、そして『エヴァンゲリオン』もアニメ初放映から30周年を迎えており、一緒に頑張りましょうという話になりました。私自身、アニメ初放映当時は碇シンジや綾波レイと同じ14歳で、『エヴァンゲリオン』世代のど真ん中。長く愛され続けていることを、実感しています」
テーマパークにおいて、人気のキャラクターとコラボレーションすれば、そのファンの人が遊びに来てくれるという大きなメリットがある。実際、ハウステンボスは近年「ミッフィー」をテーマにしたイベントやアトラクションなどを数多く展開し、新たなリピーターを獲得してきた。
一方で、それまでそのキャラクターを認知していなかったゲストがテーマパークで触れることによって、キャラクターのファンになるという現象もあり、それは「ミッフィー」で実証されているという。
糸山氏「ハウステンボスがキャラクターの“ファン増幅装置”になることが、我々から協力いただいたライセンサーの方々にお返しできることだと考えています。今後は『エヴァンゲリオン』の作品を今まで見たことがない方も、ハウステンボスでその世界観を体感し、その後、映画やアニメを見てくれるという連鎖が生まれると思います」
ターゲットとして設定しているのは、アトラクションを通して本格的な大興奮を楽しみたい老若男女。約30年間愛され続けている『エヴァンゲリオン』のファンはもちろんのこと、
スリルを感じたい人など、幅広いゲストに来てもらうことを想定している。
糸山氏「あらゆる方に、格別の興奮と感動をお伝えしたい、という気持ちでアトラクションを設計しました。『エヴァンゲリオン』のファンも1995年に放映されたアニメを見ていた40代~50代や、2010年~2020年代の映画で触れたという20代~30代など、幅広い世代です。身長100cm以上が対象なので、小学生や中学生のお子様連れにもお楽しみいただけます」
アトラクションが開業し、すぐにハウステンボスを訪れたのはやはり『エヴァンゲリオン』の本格的なファンたち。コスプレイヤーや、海外から遠路はるばるやってきた訪日外国人も、アトラクションや、それに付随するショーやグルメを楽しんでいた。
また、成長戦略第一弾の「ミッフィー・ワンダースクエア」オープン後にはファミリーと女性同士のゲストが増加したが、今回は男性のゲストも増加。男性一人で来ている人も複数人見かけ、テーマパークは誰かと来るもの、という固定概念を覆しているようにも感じた。ターゲットは広く設定しているものの、新たな顧客層の集客に成功し、来園者数全体として増加が見込めるという。
糸山氏「オープン直後は、『エヴァンゲリオン』のコスプレイヤーの皆様がたくさんお越しいただき、とても嬉しかったです。ハウステンボスは、365日、コスプレOK。お着替えするスペースも用意しています。それを広く知っていただくきっかけにもなりました。
また、これまでハウステンボスが得意としていた花や街並みの美しさは、男性には刺さりにくい傾向にありました。しかし、今回のコラボレーションでは男性の『エヴァンゲリオン』ファンの方も来ていただいているのを感じています」
一見、いつものハウステンボス。でも、裏には特務機関「NERV」存在が
ただ、ハウステンボスは中世のヨーロッパにいるかのような世界観。筆者も訪れるまでは、『エヴァンゲリオン』の世界観とマッチするのか、正直疑問が残っていた。
しかし、実際に現地に訪れると、その疑問は払拭。ハウステンボスの美しい街並みはそのままに、実は秘密裏に「特務機関『NERV』佐世保支部」が存在しているというストーリーが、見事に表現されているのだ。糸山氏は、このハウステンボスと『エヴァンゲリオン』の“調和”にこだわったと話している。
糸山氏「アトラクションは、ヨーロッパのレンガ造りの建物の中に入ると、実は『エヴァンゲリオン』の舞台になっている、という設計にしました。ハウステンボスの風景は守りながら、自然に『エヴァンゲリオン』の世界が存在する、というのが狙いです」
「エヴァンゲリオン・ザ・ライド – 8K – 」では、ゲストはNERV佐世保支部の臨時職員として、バッテリー輸送任務に急遽参加。しかし使徒が現れ、ハウステンボスを舞台に激闘が繰り広げられるというストーリーだ。自分の足元から頭上まで広がる高精細8K LEDドーム型巨大スクリーンに映像が映し出され、本当に自分も激闘の中にいるような臨場感を楽しめる。
また、ヨーロッパの街並みの中、多くのゲストが持っていたのが「銀色の封筒」。これは「NERV佐世保支部 作戦稟議書スタンプラリー」で、ゲストはNERVの臨時職員になって、スタンプラリーを楽しみながら、葛城ミサトから指示された極秘任務を遂行することができる。
その極秘任務はスタンプラリー参加者のみに知らされ、「エヴァンゲリオン・ザ・ライド – 8K – 」のストーリーにも繋がってくる。参加しない人は、皆が何をしているのかまったくわからないので、ハウステンボスの世界観も守られている。
糸山氏「スタンプラリーでこだわったのは、なるべく敷居を低くすること、そしてより深く『エヴァンゲリオン』の世界を楽しんでもらうことです。心が折れることなく、最後まで完遂できるようにしながら、ファンには『そう来たか』と思ってもらえるようにしました。
たくさんの考察要素を散りばめたのも、こだわりです。これは『エヴァンゲリオン』の世界がディープだからこそ、実現できたこと。実は『エヴァンゲリオン』のアニメでも佐世保が登場し、ファンの方はアニメとのリンクも楽しめると思います」
2026年9月13日(日)まで開催中のナイトショー「シャワー・オブ・ライツ : HARMONICS WITH EVANGELION」も、“調和”を意識したという糸山氏。『エヴァンゲリオン』の劇中のクラシック音楽をテーマとしたスペシャルバージョンのナイトエンターテインメントショーだが、『エヴァンゲリオン』を知らなくとも、生演奏や圧巻の噴水&花火の演出に圧倒される。
糸山氏「ファンの方でしたら、ライティングの色使いも含め、劇中のシーンを想像してもらえるようなナイトショーとなっています。ファンの方も、そうでない方も、すべての方に桁違いの興奮と感動を味わってもらう。それが、私たちの目指すところです」
遊び心あふれる仕掛けは「グルメ」にも。「初号機 暴走パエリア~味は暴走しません~」や「エヴァに乗れ、でなければ カ(エ)レー+逃げちゃダメだ辛口ソース付」など、『エヴァンゲリオン』の名シーンや名言にちなんだ料理が登場している。シェフの中には『エヴァンゲリオン』ファンもおり、見た目も味もこだわり抜いた限定グルメがファンを魅了する。
糸山氏「ハウステンボスは和食、フレンチ、イタリアンなど幅広いシェフがそろっていて、そのメンバーが本気で作ったコラボレーションなので、味には絶対の自信を持っています」
『エヴァンゲリオン』とコラボレーションすることにより、新たな顧客層へのアプローチを成功させた「ハウステンボス」。『エヴァンゲリオン』ファンなら、遠方からわざわざ訪れたいと思う仕掛けが満載で、それをきっかけにハウステンボスのリピーターも増えるだろう。一人旅でも良いし、ミッフィー好きの家族と一緒に行くのも良い。幅広いニーズに向けた戦略が功を奏すのか――2026年はハウステンボスにとって要となる年になりそうだ。
・ハウステンボス
HP:https://www.huistenbosch.co.jp/
(C)カラー
取材・文/小浜みゆ
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