一度はどこかで見かけたことがある、ポップな犬のイラストが印象的な『リトルボブドッグ』。家庭科の裁縫箱や駄菓子屋で出会い、気づけば子どもの頃から記憶に残っている——そんな不思議な魅力を持つキャラクターだ。いま改めて振り返ると、その空気感には、平成らしいポップな雰囲気がぎゅっと詰まっている。

このリトルボブドッグを手がけてきたのは、株式会社サンワードだ。『家庭科のドラゴン』をはじめとする独自のキャラクター展開は、令和に入り〝懐かしさ〟とともに再び注目を集め、時代の変化のなかでも確かな支持を得てきた。
しかし、『家庭科のドラゴン』の認知がさまざまな場面で広がりを見せているのに対し、同じく看板キャラクターであるリトルボブドッグについては、私たちは意外なほどその実像を知らない。
果たしてリトルボブドッグは、どのような軌跡を歩んできた存在なのだろうか。
今回は、サンワードの営業担当・川中靖博さんにリトルボブドッグ誕生の裏側から、長く愛される理由、そしていま再び注目されるリトルボブドッグの面白さまで、その魅力についてたっぷりと伺った。
交通事故から目覚めた超能力!? 知られざる、リトルボブドッグの設定
かの有名な『家庭科のドラゴン』とともに知られる、サンワードの看板キャラクター『リトルボブドッグ』。1988年の誕生以来、算数ドリルや裁縫箱などの学習教材を中心に展開され、親しまれてきた存在だ。リトルボブドッグは元々どのような経緯で誕生したのだろうか。
「当時のキャラクター業界は、淡いピンクやブルーを使った猫やうさぎなど、いわゆる〝ファンシー〟なキャラクターが主流でした。ただ、担当していたデザイナー自身は、そういった〝かわいい〟方向性にはあまり関心がなくて、黒一色で力強いラインを生かしたキャラクターを描きたいと考えていたそうです。
ちょうどその頃、アメカジの流行もあって、元気でインパクトのあるキャラクターが求められていたタイミングでもありました。そんな中で、パジャマメーカーさんから『アメリカっぽい男の子向けのキャラクターはないか』という問い合わせが会社に入ったんです。

それをきっかけに、デザイナーがその日のうちに一枚のコピー用紙にさっと描いたものが、リトルボブドッグの原型になっています。モチーフになったのは、当時デザイナーが飼っていた白い雑種の犬だったそうです。
ただ、キャラクターとしては、リトルボブドッグはダルメシアンの設定なんですよね(笑)。身近にいた白い犬から着想を得ながら、最終的にはダルメシアンとしてデザインされたという、少しユニークな経緯があります」
そして1990年には、すでに活躍の場へと躍り出ていたリトルボブドッグ。記憶の片隅にあるように、算数ドリルやオリオンのお菓子、銀行のキャラクターなど、その活躍はめざましいものがある。
しかし振り返ってみると、私たちが知っているのは、やはり『一度はどこかで見たことがある』キャラクターとしての〝リトルボブドッグ〟にすぎない。
果たして、リトルボブドッグはどのような犬なのだろうか。その裏には、想像をはるかに超える意外な設定が存在していた。
「リトルボブドッグは〝アメリカっぽさ〟を意識したキャラクターということで、当時アメリカの男の子に多かったとされる『ボブ』という名前を付けて、『リトルボブドッグ』と名付けたそうです。今も多いのかは分かりませんが、当時は『ボブ』が一般的な名前だったと聞いています。
出身はジョージア州アトランタなのですが、これにも理由があって、アメリカを象徴する飲み物といえば〝コーラ〟という発想から、コーラ発祥の地であるアトランタが選ばれました。
当初はボブドッグ1匹のキャラクターで展開されていたのですが、仲間がいたほうが世界観が広がるということで、彼女とされるチェリーや、兄弟のリタ、ジーノといったキャラクターが加わっていきました。その後も仲間は増えたり減ったりしているようですが、現在は公式ホームページに掲載されているキャラクターが現行メンバーとなっています。
実は少し意外な設定もあって……。リトルボブドッグはもともと普通の犬だったのですが、交通事故に遭ったことをきっかけに、目が覚めたら何故かしゃべれるようになり、さらに超能力まで使えるようになったそうなんです(笑)。YouTubeのアニメでも描かれているのですが、ただの犬のキャラクターではなく、実際はかなり奥深い設定のキャラクターなんですよ」
算数ドリルの域を超えた、驚きの海外展開

さらに、リトルボブドッグの意外な一面はそれだけにとどまらない。日本では、算数ドリルや家庭科の裁縫箱など、小学生向けの学習商材のキャラクターとしての印象が強いが、1994年には海外展開も果たしている。
そして海外では、日本とは異なる文脈のなかで、また別の広がりを見せていったという。

「中国のNHKにあたるといわれている『中国中央電視台』では、3Dアニメーションの教育番組として放送されたほか、子供用おむつのキャラクターとしても採用されています。そこから、おむつを卒業した子ども向けの商品、さらに年齢が上がった子ども向けの商品へと展開が広がっていきました。
ブランドとしても独立しており、現地での取扱店舗は50店舗以上にのぼります。コラボカフェや子ども服のファッションショーが開催されるなど、アパレル分野でも積極的に展開されていきました。
中国でのリトルボブドッグは、それほどまでに広く浸透し、非常にポピュラーな存在になっています」
また、中国にとどまらず、台湾や韓国などアジア各地でも広く知られる存在となっており、その認知のされ方は日本とは大きく異なる。日本でのリトルボブドッグは『一度は見たことがある……』という記憶の断片にとどまりがちだが、海外ではより明確なブランドとして浸透している点が特徴的だ。
「1994年に中国へ進出していますが、それ以前には台湾でも展開されていました。台湾で親しまれていた流れのなかで、そのまま中国へと広がっていった経緯です。
その後は韓国にも展開が広がり、いずれの地域でも、赤ちゃん向けのおむつを起点にアパレルへと発展していきました。日本では主に小学生向けのキャラクターとして認識されていますが、海外ではベビー向けから展開が始まっている点が大きな特徴です」
知れば知るほど奥深い、〝リトルボブドッグワールド〟
実は、国内外で意外な広がりを見せてきたリトルボブドッグ。日本においても多彩なデザインが展開され、独自の文脈のなかで着実に広がりを見せてきた。海外に劣らず、国内でもその存在感は静かに発揮されていた。

「これまでに変えてきた点は、かなり多いと思います。キャラクターデザインや設定も大きく変化してきました。
現在、公式サイトなどで見られるのは『元気ボブ』と呼ばれるデザインの系統のもので、いわばひとつの〝流派〟のような位置づけです。初代は『クラシックボブ』という設定で、オリオンのお菓子に採用されているのは『キュートボブ』、中国のおむつでは『ベイビーボブ』といった具合に、用途や展開地域に応じてさまざまなバリエーションが存在します。
そうした変化のなかでも、やはり原点である『クラシックボブ』は、今後も大切にしていきたいですね」
現在も定番のお菓子をはじめ、コンペ形式でのアパレル展開などを通じて活躍の場を広げているが、かつてのように学習商材としての展開も再び実現していきたいという。
「今後については、さまざまな展開を考えていますが、中国や韓国のように、日本の市場においても改めて影響力のあるキャラクターへと育てていきたいと考えています。

その第一歩として、2025年には着ぐるみをリニューアルし、現在はさまざまなイベントに積極的に参加しています。特に今年はユーザーと直接触れ合う機会をさらに広げていく予定です。
また、子ども向け商材からスタートし、徐々に大人向けへと展開を移しながら、子どもから大人まで幅広く愛されるキャラクターを目指しています。
将来的には、おむつなどのベビー向け商品への展開も視野に入れつつ、『家庭科のドラゴン』と同様に、学習商材としての展開も再び実現していきたいですね」
子どもの頃から、気がつけばいつもそばにいたリトルボブドッグ。けれどその存在は、どこか不思議で、想像以上に奥深い魅力を秘めているキャラクターでもあった。
もし次にリトルボブドッグ見かけた時は、ぜひもう一歩踏み込んでみてほしい。きっとその先には、これまで気づかなかった〝リトルボブドッグの世界〟が広がっているはずだ。

取材・文/Tajimax
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