テーマパークの経営は、来場者の量から質へと変化しています。その兆しを「東京ディズニーリゾート」を運営するオリエンタルランドの決算から読み取ることができます。入園者数が減少した一方、ゲスト1人当たりの売上高が増加し、増収へとつなげているのです。
テーマパークは、顧客の獲得から顧客満足度の向上へと注力ポイントが変化しました。
チケット代・グッズ販売・飲食代のすべてが増加
オリエンタルランドの2026年3月期におけるテーマパーク事業の入園者数は2753万人で、前期比0.1%の減少でした。コロナの影響が全くなかった2019年3月期は3256万人も来場しています。当時と比較すると、今は500万人も少なくなっているのです。
一方、2026年3月期のゲスト1人あたりの売上高は前期比3.2%増の1万8403円。2019年3月期は1万1815円でした。6500円以上も増えているのです。
東京ディズニーリゾートは変動価格制を導入し、チケット代は1日1万円を超える日も出てくるようになりました。1人あたりのアトラクション・ショー収入は、2026年2月期が9608円。2019年2月期の5352円と比較をすると、1.8倍に増加しています。しかし、注目したいのはそれ以外の項目で、商品販売収入はおよそ1.3倍、飲食販売輸入は1.5倍にそれぞれ増えているのです。
インフレで物価が上がったことは確かにありますが、それであれば、オリエンタルランドはチケット代を下げてでも来場者数を増やそうとするでしょう。アトラクション・ショー収入を犠牲にしてでも、商品販売収入と飲食販売収入でチケット代の値下げ分を補うことができるからです。
しかも、2025年1月からは東京ディズニーシーの新アトラクション「ファンタジースプリングス」の入場制限を解除しました。集客を強化するにはもってこいのタイミングだったのです。
しかし、2026年3月期のアトラクション・ショー収入は前期比で2.4%増加。来場者数は0.1%の微減でした。
オリエンタルランドは来場者数を一定数に抑えつつ、顧客満足度を高めてリピート利用やグッズ・飲食販売に弾みをつけようとしているように見えるのです。
チケット代は1.8倍に増加も満足度が変わらないわけ
東京ディズニーリゾートの顧客満足度が向上したことを示す、興味深いデータがあります。日本生産性本部が毎年日本の企業・ブランドに対して行っている顧客満足度調査です。この中で、「びっくりした」「うれしい」「楽しい」「興奮した」などの感動指標を数値化、ランキングした感動指標があります。
年間の来場者数が3000万を超えていた2019年の東京ディズニーリゾートは、感動指標のスコアが78.5でランキングでは第3位。そして、2025年はスコア75.2でやはり第3位につけました。
通常、入場料が引き上げられると満足度は低下する傾向があります。しかし、東京ディズニーリゾートはチケット代が1.8倍にも高騰していますが、顧客満足度はほとんど変化していません。つまり、価格を引き上げても高い満足度が維持されていることを示しています。
混雑が解消されれば、待ち時間が軽減されて乗り物をスムーズに利用することができます。レストランでの食事や、各ショップでの買い物も快適に行えるでしょう。特に東京ディズニーリゾートはコアなファンが多く、誕生日などの記念日に利用する人が多い場所。高いお金を払ってでも、思い通りの1日を過ごすことを望んでいる人が多いわけで、人ごみの少ない今の環境の方が満足度も自然と高まります。
次回来場する期待値も上がるため、リピート利用を促しやすいのも特徴。運営会社側からすると、あまりディズニーに馴染みのない新規客を獲得する広告費よりも、遥かに低いコストで集客することができるでしょう。
2026年3月期の40代以上のゲスト比率は35.3%でした。2021年3月期は26.6%。来場者の年齢層は上がっています。2026年4月30日の決算説明会では、40歳以上の割合が上がっていることについて問われ、会社側は日本の人口動態を考慮すると40歳以上の比率が今後上がること、そしてこの世代は経済的な余裕がある人が多いことを挙げ、今後も来園を働きかける必要があると回答しました。
40代以上の中年層が顧客の中核であることを認める発言をしています。若年層は来園者の先細り懸念があることから継続的に集客する必要はあるものの、ターゲットはミドル層へと移っているのです。
潜在的なリピート率80%超のクルーズ旅行に挑む
将来的な方向性を考えると、オリエンタルランドが来園者の量から質へと転換しているのも納得ができます。大型プロジェクトが進行しているからです。
2028年に就航し、2029年に通年稼働を計画しているものに「ディズニー・クルーズライン・ジャパン」があります。
「ディズニー・クルーズライン」はクルーズ船の中でキャラクターたちと触れ合うことができ、ショーなどのエンターテインメントを楽しめるもの。すでにアメリカでは1998年に就航していますが、料金は数日間の短いものでも1人10万円を超えます。
「ディズニー・クルーズライン・ジャパン」の投資総額は3300億円。「ファンタジースプリングス」と同規模であり、失敗はできません。
クルーズ旅行はリピーター比率が極めて高いことに特徴があります。国土交通省の「クルーズ市場を取り巻く最近の動き」によると、過去2年間でクルーズを利用したことがあるクルーズ旅行者で、潜在的なリピーターの比率は40代前半~50代後半で84%にも及びます。
顧客満足度を高めてリピート利用してもらうことが勝ち筋なのです。
今後、東京ディズニーリゾートとディズニー・クルーズラインは一体となってファンを醸成し、リピート利用を促す必要があります。そのためにもロイヤルカスタマーの創出が欠かせません。
よく、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの来場者数が東京ディズニーランドを上回ったなどという報道が世間を賑わせますが、経営者が顧客満足度の向上に目を向ける今となっては、その数字にもあまり意味がなくなっているのかもしれません。
※画像/ディズニークルーズ(イメージ) ©Disney
文/不破聡







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