ある週刊誌の出版社が、記事の要約をSNSにアップロードした人に対して警告を発したことが一時期話題となりました。
同出版社は警告の理由として、記事の原文を読まなくても内容が分かるような要約は「翻案権」や「同一性保持権」の侵害になり得ることを指摘しています。
記事そのものではなく、要約をSNSに上げるだけでも著作権侵害等に該当するのでしょうか?法律的な観点から解説します。
1. 翻案権・同一性保持権とは
著作権法においては、著作物の創作者(=著作者)が有するさまざまな権利が定められています。とりわけ文章の要約について問題となるのは「翻案権」と「同一性保持権」です。
「翻案権」とは、既存の著作物に基づいて別の著作物を創作する(=翻案をする)権利です(著作権法27条)。典型的には、いわゆる「二次創作」が翻案に当たります。
著作物の翻案は、著作権者またはその許諾を受けた者のみ行うことができます。
「同一性保持権」とは、著作物やその題号を意に反して改変されない権利です(著作権法20条)。同一性保持権は著作者のみが有しています。
著作物の翻案をする場合は、必然的にその著作物の改変を伴うため、翻案権と同一性保持権の侵害は同時に問題となるケースが多いです。
なお、翻案権は「著作財産権」の一つであり、他人に譲渡することが認められています。これに対して、同一性保持権は「著作者人格権」の一つであり、他人に譲渡することができません。
2. 記事の要約は翻案権や同一性保持権の侵害に当たるのか?
翻案権や同一性保持権の侵害が成立するのは、他人の著作物の本質的な特徴を直接感得させるような表現を用いて別の著作物を創作した場合であると解されています(最高裁平成13年6月28日判決、最高裁平成10年7月17日判決)。
注意すべきなのは、翻案権や同一性保持権によって保護されているのは「表現」であって、表現されている「事実」や「思想」などではないということです。
たとえば、記事の中で用いられている表現を無断でそのまま切り取って再構成した要約は、翻案権や同一性保持権の侵害に当たり得ると考えられます。
これに対して、記事の内容を自分なりに理解したうえで、それを自分の言葉でまとめた要約は、翻案権や同一性保持権に当たる可能性が低いと考えられます。記事の情報に由来する事実や思想などが表れていたとしても、表現としてオリジナルの本質的な特徴を直接感得できるとは言えないためです。
前掲の最高裁平成10年7月17日判決では、まさに著作物の要約が同一性保持権の侵害に当たるか否かが問題となりました。
最高裁は、オリジナルの著作物が38行にわたる一方で、その一部をわずか3行に要約したものに過ぎないことを指摘しました。それを踏まえて、当該要約はオリジナルの表現形式上の本質的な特徴を感得させる性質のものではないとし、同一性保持権の侵害を否定しました。
実際の訴訟(裁判)においては、オリジナルと要約につき、表現の面で「似ている部分」と「似ていない部分」を比較対照したうえで、翻案権や同一性保持権の侵害の有無が判断されます。
たとえば細かい言葉遣いのほか、論理構成の類似性なども考慮され得ると考えられます。
3. まとめ
記事を無断で要約してインターネット上にアップする行為が著作権侵害に当たるかどうかは、ケースバイケースなので一概に言えません。
ただし、侵害の有無は「情報の内容」でなく、「表現の特徴」の観点から判断される点に注意を要します。
仮に、要約を読めば記事の内容がおおむね分かるとしても、直ちにその要約が著作権侵害に当たるとは言い切れません。
要約の中で記事と同じような言葉遣いが繰り返し見受けられるとか、論理構成が記事と酷似しているなどの事情があるか否かが判断のポイントになると考えられます。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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