海外ではフライトが「キャンセル」になることはままある。中東情勢が不安定な今、ジェット燃料も不足がちになり、今後は「間引き運航」も含めてキャンセルが今以上に増える可能性も否定できない。
また間引き運航の影響などで、数十分単位できなく数時間の「遅延」なども増加するかもしれない。
そんなときどうなるのか。そしてどうすればいいのか。筆者の経験から伝える。
ケース1:昼間の国内線のキャンセル。フライトの代替案は?
最初に紹介するケースは昼間のキャンセルだ。
チリのサンティエゴからオーストラリアのメルボルンで乗り継ぎし、自宅があるブリスベンに帰る途中のこと。メルボルンに朝到着し、予定乗り継ぎ時間は3時間ほどあったのでパソコンを開き、腰を据えて仕事をしていた。
出発予定時間の約30分前、搭乗予定時間に近づいたので、近くにあったフライトスケジュールを示す電光掲示板を見てみると、「エンジニアの要求により遅延」という意味の英語が表示されていた。
とりあえず出発予定だったゲートに行くことにした。少なくともほんの数分前までは「遅延」状態だったので、搭乗のスタンバイをしていた地上係員がいるはずである。
「フライトがキャンセルになったのですがどうすればいいですか?」
「電話番号やメールアドレスは弊社に登録していますか?」
「はい。どちらも」
「それならば振り替えで乗っていただくフライトに関して連絡が行くはずですからお待ちください。あっ、それと空港内で使える飲食券が提供されるはずなので1番ゲートそばにある弊社のインフォメーションカウンターに行っていただけますか?」
係員が言う通りインフォメーションカウンターに向かって歩いていると、航空会社からメールとメッセージが届いた。
最初に届いたのは「フライトがキャンセルになりました。20分以内にまた連絡します」という内容。
同じ内容のものがSMS(ショートメッセージサービス)でも届いた。その後「何時何分発のこの便を用意したが、これでいいか承認してください」という内容も。その時点から4時間以上後の便だ。
ケース2:シンガポールでは夜のフライトがキャンセル!
次は私が住むブリスベンからシンガポール経由で某国の首都まで飛び、そこから地方都市に飛んだときの話。通常であればドバイまたはドーハ経由の乗り継ぎ1回で済むのだが、このご時世なので乗り継ぎ2回。ブリスベン空港から最終目的地の空港まで32時間という長旅である。
事件が起こったのはブリスベンでシンガポール行きの飛行機に乗り込もうと搭乗口で並んでいたときだった。突然メールで次のフライトで使う航空会社から「シンガポール発パリ行きのフライトはキャンセルになったので、予約を取り直してください」との連絡。頭が真っ白になったのは言うまでもない。
その「予約取り直し」のリンク先に行っても、航空会社のコンピューターシステムが混乱しているのか要領を得ない。「とにかくシンガポールまで行くしかない」と腹をくくった(ちなみにシンガポールまでは機内wi-fiはなかったのでメールチェックできず)。
シンガポールまでとそこから先は別の航空券だったため、いずれにせよ一度手荷物をピックアップしなければならない。シンガポール空港到着後、手荷物カルーセルで自分のスーツケースが出てくるのを待つ間に、この先のフライトをキャンセルした航空会社のサイトにアクセスして、新たなフライトを取り直すことにした。
宿泊場所や交通費、食費はどうする?
夜10時半過ぎだったフライトが翌朝9時ごろになったので宿泊場所を確保しなければならない。その航空会社のサイトを確認したところ「あなたの新たなフライトが翌日に延期になった場合はホテルの宿泊とホテル往復の交通を提供する」との記述を発見。
というわけで航空会社ではなくシンガポール・チャンギ空港そのもののインフォメーションセンターに行き、事情を説明。「その航空会社の人と話したいのですがどこに行けばいいですか?」と聞くと、カウンターにある電話で航空会社に連絡してくれた。
その担当者とやりとりをして判明したのは「ホテルもそこまでの交通も用意してくれるのではなく、自分で手配して後で請求しなければならない」ということだった。
請求額が支払われるのはいいが……
さて、宿泊した翌日、善は急げとばかりにその航空会社にある請求用のページに「ホテル代、往復交通費、夕食代」と「銀行口座情報」を入力、各領収書の画像も添付して送付。すぐに「照会番号」と請求の進行状況をトレッキングできるサイトのリンクが送られてきた。
ところが……。待てど暮らせど「現在確認中」の表示がでてくるばかり。
そして航空会社からようやく連絡があったのは請求から4週間ほど経ったある日。無事に請求した約3万円が支払われるだけでなく、なんと「欠航や大幅な到着遅延がございました際には、欧州圏内有効の法律( EC Regulation 261/2004) に基づいてご補償が検討される」とのことで、「補償金600ユーロ(約11万円)」も同時に支払うとのことだった。
この約11万円を高いと見るか安いと見るか。個人的には今回の旅で最も行きたかった(逆に言うとそこに行けるからこの旅を申し込んだ)場所にフライトキャンセルのせいで行けなかったことや、シンガポール・チャンギ空港でのハラハラドキドキさせられたことや、不必要な宿泊と移動を余儀なくされて貴重な時間を10時間以上奪われたことを改めて考えると、まあ妥当な線かなと思う。だがそんなものが出るとは思っていなかったので、うれしくはある。
とはいえたとえばサッカーワールドカップなど観たかったスポーツの試合や日本では見られないアーティストのコンサートに間に合わなかった場合などは「この程度の補償金で……」という気分になるだろう。
また会計上の手続きとやらで「入金までに4週間前後かかる」とのことで、実際にそれが終了するまでは安心できない。
フライトキャンセルに遭ったらどうする?
さてこうしたフライトキャンセルは誰の身にも降りかかる可能性がある。そのとき慌てないように注意点や準備しておくべきことを列挙しよう。
1 メールやSMSを受け取れる環境にしておく
航空会社からの連絡はメールやSMSで来るからだ。「空港の無料wi-fiを利用すればいいのでは?」と思う方もいるかもしれないが、それがない空港やターミナルもある(実際、上記のメルボルン空港の国内線用ターミナルではなかった)。
よって最終目的地だけでなく、乗り継ぎ空港がある国でも使えるeSIMやモバイルwi-fiがあると安心だ。
2 WhatsAppもインストールし、電話番号を登録しておく
航空会社によってはWhatsAppで電話番号を登録できるところがある。WhatsAppとは日本でよく使われるLINEのようなSNSだ。国外に出てSMSでのメッセージが受け取れない環境でもWhatsAppで連絡をもらえる。
3 英語に自信がない場合は「通訳アプリ」を用意
上記のメルボルン空港やシンガポール空港でのやりとりはすべて英語だ。日本語ができる担当者がいる場合もないわけではないだろうが、稀なケースだろう。
4 できれば事前に航空会社のサイトで「キャンセルの際の対応」をチェック
実際にキャンセルに遭う前に確認しておけばいざというとき安心。「転ばぬ先の杖」だ。
さらにそういう事態に陥ったときも諦めずに確認したり交渉したりすることも大事だ。
メルボルンでは搭乗口のカウンターに行ってみなければ「飲食券」が出ることを知ることができなかった。
シンガポールでは宿泊やそこまでの交通費が提供されることをサイトで確認しなければ、貧乏性の私の空港のベンチで一夜を過ごしていたかもしれない。
5 海外旅行保険に加入しておく
今回紹介したシンガポールの事例で利用した航空会社はフルキャリアだったから、宿泊代なども請求できたがLCCの場合は不明。フライトキャンセルの際の宿泊費などもしっかりカバーされる海外旅行保険に入っておくと安心だろう。
6 1泊分くらいの着替えなどは「機内持ち込み手荷物」に入れておく
上記の事例ではシンガポールまでとその先が別のチケットだったので、預け入れた手荷物(大きなスーツケース)を一度受け取った。だが一枚のチケットで乗り継ぎ空港からの先のフライトがキャンセル・振替になった場合、預け入れ荷物は自動的に振替便に積まれる。つまり預け入れ荷物から何かを取り出すことはできない。
よって1泊分くらいの着替え(下着)やいざというときに必要なものは機内のオーバーヘッドロッカーなどに収納する「機内持ち込み手荷物」の中に入れておくといいだろう。
備えあれば患いなしという。今回の記事が皆さんの参考になれば幸いだ。では良い旅を!
文/柳沢有紀夫
世界約115ヵ国350名の会員を擁する現地在住日本人ライター集団「海外書き人クラブ」の創設者兼お世話係。『値段から世界が見える』(朝日新書)などのお堅い本から、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)などのお笑いまで著書多数。オーストラリア在住







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