最近、健康への配慮を機能として付加したお茶を目にする機会が増えている。
ペットボトルやティーバッグなど形態もさまざまで、コンビニやスーパーの売り場でも、その存在感は確実に大きくなっている。
甜茶やびわの葉茶、ルイボスティーなど、ひと昔前にはあまり見かけなかったお茶も、いまでは日常的な選択肢のひとつだ。さらに、「伊右衛門 特茶」や「胡麻麦茶」、「ぎゅっと濃い十六茶」といった、特定保健用食品や機能性表示食品として展開される商品も目立っている。
こうした変化の背景には、どのような需要の広がりがあるのか。なぜいま、日常の中で〝お茶〟という選択肢が広がっているのか。その背景を探るため、今回は和漢素材を扱う生薬メーカーとして長い歴史を持つ小川生薬の常務取締役である小川萌々子氏に話をうかがった。
健康茶の広がりは、単なる流行ではなく、日常に根付きつつある〝静かなブーム〟といえそうだ。
実際に近隣のスーパーやコンビニを数店舗回っただけでも、機能性を打ち出したお茶が10種類以上並んでおり、その広がりを実感させられる。

そもそも健康茶とは何か
健康茶という言葉に、明確な定義があるわけではない。一般的には、特定の健康効果を期待して飲まれる植物由来の茶や飲料を指すことが多いが、その範囲は非常に広い。
たとえば、花粉症対策として知られる甜茶や、古くから民間で親しまれてきたびわの葉茶、さらには海外由来のルイボスティーなども、広く健康茶に含まれる。
こうした〝健康茶〟の捉え方について、小川氏は「特定の効能だけでなく、日々の体調や生活に合わせて取り入れられるものも含めて考えています」と話す。
一方で、特定保健用食品(いわゆるトクホ)や機能性表示食品のように、一定の科学的根拠にもとづいて機能を表示できる飲料も増えている。これらは「脂肪の吸収を抑える」「血圧が高めの方に適している」といった具体的な働きを表示できる点が特徴で、消費者にとっては選びやすさにつながっている。
ただし、こうした制度の対象となる商品は、国が定めた基準やルールに基づいて表示が管理されている点で、一般的な健康茶とは位置づけが異なる。
現在の〝健康茶〟は、こうした機能性を打ち出した商品と、伝統的な生薬由来の茶の両方を含む、幅広い概念として捉えられるようになっている。
健康茶が広がる3つの理由
健康茶の種類が増え、日常的に選ばれるようになった背景には、いくつかの共通した理由がある。大きく分けると、「続けやすさ」「安心感」、そして「ライフスタイルとの相性」の3つに整理できる。
また、こうした動きについて小川氏によると、コロナ禍以降、健康茶の需要は一段と高まったという。外出自粛や生活習慣の変化を背景に、日常の中で無理なく取り入れられる健康習慣として、お茶が選ばれる場面が増えたとみられる。
(1)習慣化しやすい〝続けやすさ〟
まず挙げられるのが、日常生活に取り入れやすいという点だ。
お茶は食事や休憩の延長にあり、特別なタイミングを必要としない。サプリメントのように「飲まなければならない」と意識するものではなく、あくまで自然な流れの中で摂取できる。
そのため、無理なく継続できるというメリットがある。健康への意識はあっても、手間や負担が大きい方法は長続きしにくい。そうした中で、お茶という形は〝続けられる健康習慣〟として受け入れられている。
(2)〝効きすぎない〟という安心感
健康茶が支持されるもうひとつの理由は、その〝ほどよさ〟にある。
医薬品やサプリメントのように明確な効果を期待するものではなく、「なんとなく体によさそう」「日々を整える」といった感覚で取り入れられている点が特徴だ。
強い効果を求めるのではなく、日常の中でゆるやかに体調を整える。こうした〝効きすぎない安心感〟が、健康茶の選ばれる理由のひとつになっている。
(3)ライフスタイルに合う選択肢の広がり
さらに、ノンカフェインの健康茶が多いことも見逃せない。
夜でも飲める、家族で共有できるといった点から、日常のあらゆるシーンに取り入れやすい飲み物として広がっている。
また、甜茶やびわの葉茶のように特定の悩みに応じたものや、ルイボスティーのように味や飲みやすさで選ばれるものなど、目的や好みに応じて選べる選択肢が増えていることも大きい。
こうした変化について、小川氏も「健康のために何かを〝頑張って取り入れる〟というより、日常の中で無理なく続けられるものとしてお茶を選ぶ方が増えている印象があります」とみている。
健康茶の広がりは、単なる商品数の増加ではなく、健康との向き合い方そのものの変化を映し出しているといえそうだ。
健康茶は「選ぶ」時代へ
日本では長らく、お茶は単なる飲み物ではなく、日々の習慣や体調を整える存在として親しまれてきた。地域ごとに手に入る植物が用いられ、その効能が経験的に活かされてきた側面もある。
一方で、ここ数十年は水分補給としての役割が強調され、〝とりあえず飲むもの〟として捉えられる場面も多かった。
しかし近年は、体調やシーンに合わせて選ぶ〝軽いセルフケア〟の手段へと、あらためて位置づけが変化しつつある。
たとえば、カフェインの有無を基準に飲み分けるといった行動もそのひとつだ。日中は緑茶やコーヒーを選び、夜はノンカフェインのルイボスティーや麦茶、あるいは生薬由来の健康茶に切り替えるといった具合である。
また、甜茶のように花粉の季節に取り入れるものや、びわの葉茶のように日々の体調管理を意識して選ばれるものなど、目的に応じた使い分けも広がっている。
こうした変化について小川氏は、「お茶は単に水分補給のためのものではなく、その時の体調や気分に合わせて選ばれる存在になってきていると感じます」と指摘する。
健康茶の広がりは、飲み物との向き合い方そのものを変えつつあるといえそうだ。
健康茶の広がりを支える〝飲みやすさ〟
健康茶の広がりを語るうえで見逃せないのが、「飲みやすさ」の進化だ。
以前は、健康茶といえば、苦味や独特の風味があり、継続して飲むにはハードルがあるものも少なくなかった。
しかし近年は、日常的に取り入れやすい味わいへと改良された商品が増えている。無理なく続けられることを前提とした設計が、健康茶の裾野を広げてきたといえる。
この点について小川氏は、「健康のために取り入れるものであっても、飲みづらいものは続きません。日常の中で自然に飲める味わいにすることはとても重要だと考えています」と強調する。
健康茶が〝特別なもの〟から〝日常のもの〟へと変わっていく背景には、こうした開発側の工夫がある。
健康茶を〝体験〟として届ける理由


小川生薬では2年前から、京都でレストランやカフェ、宿泊もできる複合施設を展開している。ここでは健康茶を実際に味わえる場づくりにも力を入れている。
商品として手に取るだけでなく、食事や空間とともに体験することで、健康茶をより身近な存在として感じてもらう狙いがある。
こうした取り組みの背景には、〝飲み方〟そのものを伝える必要性もある。お茶は単に購入するだけでなく、どのような場面で、どのように取り入れるかによって印象が大きく変わるからだ。
小川氏は「海外からのお客様も多く、日本の生薬やお茶の文化に興味を持っていただく機会になっています」と語る。
近年は海外で日本茶への関心が高まっているが、その先に、より日常的に取り入れられる健康茶や生薬由来のお茶が広がっていく可能性もある。
健康茶は単なる飲料にとどまらず、文化として伝わっていくフェーズに入りつつあるといえそうだ。
取材・文/内山郁恵
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