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なぜ、木更津には〝ヤンキー服の専門店〟が残り続けるのか?明治39年創業「あさひや」が今も必要とされる理由

2026.04.30

木更津といえば、氣志團とゆかりのある土地であり、ドラマ『木更津キャッツアイ』の舞台としても知られ、地元の人でなくとも、どこか親しみを感じる街だ。

その一方で、〝ヤンキー文化〟のイメージを思い浮かべる人も少なくないだろう。

そんな木更津に、時代の流れとは異なるベクトルで、確かな存在感を放ち続ける店がある。明治39年創業の老舗洋品店『あさひや』だ。

近年、木更津では大型商業施設の開発が進み、街の風景は大きく変化している。しかしその中にあっても、地域に根付くヤンキーファッションは形を変えながら、今なお確かな支持を集め続けている。

今回は、木更津のヤンキーファッションが支持され続ける理由と、100年以上にわたり歩んできた『あさひや』との〝街と服〟の関係性について、店主に話を聞いた。

作業着から〝やんちゃ服〟へ、街の仕事着が〝カルチャー〟に変わるまで

老舗洋品店『あさひや』は、木更津近辺に暮らす人であれば、一度はその名を聞いたことがある、路面のメンズ洋品店だ。

一見すると、ヤンキーファッションは懐かしさをまとった過去の文化の延長線上にあるようにも見えるが、その実態はむしろ、地域の空気と密接に結びついたリアルな装いでもある。『あさひや』ではいつ頃からヤンキーファッションを取り扱うようになったのだろうか。

「もともと『あさひや』は、国鉄工事が敷かれる前、当時の作業着や手甲、脚絆、足袋などの製造販売からスタートしているんです。

そこから徐々に、輸入デニムやスカジャン、カラースーツといった、〝派手なファッション〟も扱うようになっていって、今のようなスタイルに発展していきました。その後、メンズのカジュアルウェアも取り入れるようになり、そのあたりから、〝やんちゃなファッション〟を取り扱うお店のイメージを持たれるようになったのかもしれませんね

『あさひや』で学生服のヤンキーファッション、いわゆる〝変形学生服〟が目立ち始めたのは、1970年代後半から80年代くらいです。当時は今みたいに学校ごとで制服の違いもあまりなかったので、うちでもドカンやボンタンといったアイテムを扱っていました。ただ、学ラン自体はやっていなくて、ズボンだけをメーカーさんにお願いしてオリジナルで作っていたんです。

作業着を扱っていたこともあって、工場と直接やり取りができる関係性が既にあったので、そういうオーダーにも素早く対応できたのだと思います」



興味深いのは、当時『あさひや』で扱っていた作業服が、現在語られる特攻服の原型にかなり近い点だ。


中でもブランド『寅壱』のアイテムは象徴的で、店主によれば、当時は作業着業界の大看板として、派手さと粋さを兼ね備えていたという。

現在の『寅壱』は、モダンで洗練されたイメージも持ち合わせ、『リミ フゥ』などのアパレルブランドとのコラボレーションも展開しているが、一昔前のアイテムを振り返ると、驚くほど鮮やかで大胆な色使いのものが多く見られる。

「当時の『寅壱』の作業着は、木更津では作業着業界の大看板であり、特別な存在でした。今も作業着界の〝ドルチェ&ガッバーナ〟と呼ばれるほどの人気です。いまでは『あさひや』での取り扱いはありませんが、岡山に本社を置く『寅壱』の商品を、関東でいち早く扱っていたのがうちだったらと聞いています。

鳶職の方たちは、仕事着をかっこよく着こなす意識が高く、当時はそうした別注オーダーにも応えていたのが『寅壱』さんでした。実際に、メーカーさんが置いていった商品の中には、形が特攻服にかなり近いものもあって、紫みたいな派手な色もあったんですよ」

また、変形学生服が本格的に流行する以前の木更津では、制服にあえて細いネクタイを合わせるスタイルが流行していた。

「それともう一つ印象に残っているのが、近隣の私立高校の制服ですね。今とは制服も違っていて、当時は紺のネクタイだったのですが、うちでは学校指定よりも少し細いネクタイを扱っていたんです。値段もそこまで高くなくて、素材感も似ているものです。そうすると、やっぱりその細いネクタイのほうがかっこよく見えたみたいで、生徒たちがよく買いに来ていました。

その流れで、制服のカスタムが進行し、徐々に太い学生ズボンの〝変形学生服〟のほうに移っていったのではないかなと思います。


当時は、先生に没収されて何度も買いに来てくれた学生の姿が、すごく印象に残っています。ズボンを没収された後、あの子たちはその日どうしていたのだろうとか(笑)。ジャージで過ごしていたのか、それとも別のものを用意していたのか…。そんなことをふと思い出しますね」

お祭りに氣志團。鯉口シャツがつなぐ木更津の現在地

そして、「あさひや」でスカジャンと同じく定番アイテムなのが、派手な和柄が目を引く『鯉口シャツ』だ。

鯉口とは、もともと作業時に着物が汚れるのを防ぐため、その上から羽織られていた衣服であり、袖口が細くすぼまり、その形が鯉の口に似ていることから「鯉口」と呼ばれるようになった。

普段はあまり意識する機会がなくても、祭りや屋台の風景で一度は目にしたことがあるはずだ。さらにイメージしやすい例でいえば、ドラマ『ごくせん』で、山口久美子の実家・大江戸一家に登場する若頭・テツが着ていた〝あのシャツ〟と言えばピンとくる人も多いだろう。

「鯉口も『あさひや』では定番のアイテムですね。もともとは市内にあった祭り用品専門店が閉店してしまったこともあり、うちでも取り扱うようになりました。

木更津では毎年7月に八剱八幡祭りが開催されていて、〝八幡さまのまち〟と呼ばれるほど、地元に根付いた代表的な夏祭りなんです。その影響もあって、5月頃から鯉口の動きが一気に活発になります。

このあたりの地域はお祭り自体も多くて、だいたい7月から10月くらいまで、週末には何かしらのお祭りが開かれているんですよ。特に南のエリアに行くと、その傾向はより強いですね。

鯉口は、任侠映画に出てくるような〝漢〟のイメージを持たれることも多いんですが、ここ5〜6年くらいで少し変化があって。『氣志團万博』のようなフェスに着ていくと目立つ、という理由から、最近では女性のお客さんも増えてきています」

あの「やっさいもっさい」の歴史は浅い!?

また、木更津の夏祭りといえば、ドラマ『木更津キャッツアイ』で全国的な知名度を獲得した「やっさいもっさい」の踊りも、多くの人が知るところだろう。毎年8月に開催される「やっさいもっさい」は、いまや千葉県を代表する夏の風物詩として広く親しまれている。

しかし意外にも、この「やっさいもっさい」の歴史はそれほど古くはないという。

「皆さんご存知の『やっさいもっさい』は、実は後からできたお祭りなんですよ。ちょうど今から50年くらい前に始まった踊りで。

1960〜70年代の木更津周辺では、日本製鉄の君津製鉄所ができたこともあって、もともとの住民だけでなく、新しく移り住んでくる人が一気に増えたんです。たしか、2万人くらい増えたんじゃないかな。

そういう中で、昔からの住民と新しく来た住民が交流できる場として、〝みんなでうまくやっていきましょう〟という思いで始まったのが、この踊りです。

だから、『やっさいもっさい』は、まだ50年くらいの歴史しかないんですよ」

なぜ今また売れる?ガルフィーとカラースーツに見る巡る〝ヤンキー美学〟

現在の「あさひや」では、スカジャン、カラースーツ、鯉口と、時代を変わらず人気だが、ジャージに関しては、変化が起きているという。

現在でも、渋いジャージのセットアップが並ぶ一方で、若者のあいだでは依然としてブランド「ガルフィー」が人気を集めている。近年ではその流れがさらに広がり、若い女性のあいだでも着用者が増えているという。

「ガルフィーも、かれこれ20年以上前から取り扱っていますね。一昔前は〝やんちゃ〟なブランドのイメージが強かったですが、『あさひや』では昔から今と変わらず、中学生くらいの男の子がガルフィーの服を着て自転車に乗っている、そんな光景がしっくりくるブランドなんです。

2000年頃は問屋から仕入れていましたが、現在はガルフィーの販売元であるク・ラッチさんと直接取引をしています。

もう20年以上前の話になりますが、ドラマ『木更津キャッツアイ』の放送当時、木更津の女の子たちがガルフィーを着ているのを見て、テレビのスタッフの方が『あさひや』に取材に来たこともありました。〝なぜ木更津の女の子はガルフィーのジャージを着ているのか〟と、不思議がっていましたね。

その流れで、『木更津キャッツアイ』に登場するマスターの奥さんの衣装として、ガルフィーのジャージを貸し出したこともあります。

最近では時代が巡り、レディースラインの『CANDY GALFY』も木更津の女の子たちに人気ですね。お孫さんや娘さんのために購入されるお客さんも多いです」

また、店頭に並ぶカラースーツも、いまなお根強い需要があるという。

「今では想像しにくいかもしれませんが、バブルの頃の木更津では、夜になるとみんなこのカラースーツに着替えて遊びに出かけていたんです。

もちろんバブルの影響もありますが、当時は街そのものがとても活気にあふれていました。商業統計を見ても、昭和40年代の時点で、千葉県内では船橋や千葉に次いで、3番目くらいに飲食店が多く、経済的にもかなり力のある地域だったんです。

今では駅前のロータリー周辺も落ち着いた雰囲気ですが、当時は飲み屋が立ち並び、夜の街としてにぎわっていました。だからこそ、カラースーツを着たお兄さんたちの姿も本当に多かったですね。

現在では、矢沢永吉さんのファンの方や、カラオケ大会に出演されるおじさまが購入されることが多いです。永ちゃんファンの方の中には、スーツの背中に刺繍を施すなど、思い思いの着こなしを楽しまれていますね」

そして、店内に飾られたサインにも注目したい。

氣志團のものをはじめ、ご当地アイドルのC-Styleや、テレビのロケで訪れた際の記念サインなど、その顔ぶれは実に多彩。

一面に並ぶサインからは、多くの人々が「あさひや」に関心を寄せ、わざわざ木更津まで足を運んできた軌跡が見えてくる。ここが、数多くの著名人に愛されてきた店であることは一目瞭然だ。

長年地元の人々を中心に愛され続けている理由は、この店でしか手に入らないアイテムの豊富さはもちろんのこと、店主の人柄もあるだろう。木更津にまつわる興味深いエピソードを気軽に聞ける——そんな〝会話のある店〟であることも、この店の大きな魅力のひとつだ。

今年4月で『あさひや』は創業120周年を迎えた。この街とともに歩んできた時間の積み重ねこそが、その存在を何よりも確かなものにしている。

もし木更津を訪れたときには、ふと『あさひや』に足を止めてみてほしい。そこには、この街に根付くカルチャーの〝今〟が息づいている。

取材・文/Tajimax

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東京都出身。2018年からSNSを中心に90年代〜00年代の平成ガールズカルチャーをメインに紹介している。以降、『オリコンニュース』『現代ビジネス』『WWD.JAPAN』『クイック・ジャパン』『Fashion Tech News』『東洋経済オンライン』などで平成カルチャー関連のインタビューや執筆・寄稿に携わる。古雑誌をメインに平成ガールズカルチャー関連のアイテムを膨大に所有。

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