「スーパーカートリオ」の一員として一時代を駆け抜け、引退後も指導者や鉄道写真家として人生を謳歌する屋鋪要。
彼自身の著書に込めた思いを軸に、父から託された『宮本武蔵』、田中角栄の名言集、中国古典『菜根譚』まで、学びと挑戦を手放さない「人生の指南書」を選んでもらった。
後悔なき人生のヒントが静かに浮かび上がるはずだ!

〈選者〉屋鋪 要さん
大洋、横浜、巨人で活躍し「スーパーカートリオ」の一員として活躍した元プロ野球選手。現在は社会人や小学生に野球を指導しつつ、鉄道写真家としても活動するなど、第二の人生を楽しんでいる。
ハマのスピードスターが語る後悔なき人生論
『ノーサインで走れ!』
著/屋鋪 要 小学館 1760円

多彩な趣味を楽しむ著者。なぜ、それほど第二の人生を楽しめるのか? 幼少期から大切にしている学び&挑戦をしつづける姿勢を一冊に。
父が息子に伝えた武蔵の生き方
『宮本武蔵(一)』
著/吉川英治 新潮社 693円

私がプロ野球の世界に入った1978年。関西から上京する際に、生活用品と一緒に荷造りされた段ボール箱には吉川英治著『宮本武蔵』全4集(※)が詰められていた。
父は無類の読書家で、未知の世界に旅立つ息子に、苦難を乗り越えるべき強さを宮本武蔵の生涯に託したのだと思った。吉川英治が綴る、江戸初期にその名を轟かせた剣豪、宮本武蔵の幼少期は、手のつけられないほどの悪童だったようだ。沢庵和尚との出会いによって、己の生きる道を剣に定めて極めるべく、死の恐怖と向き合いました。二刀流は、打者で例えるならスイッチヒッターでしょう。
私自身も、2年目にスイッチヒッターへ転向した経験を、武蔵とダブらせたものでした。本書で紹介されていませんが、彼の残した剣術の極意『五輪書』は、打撃の神様、川上哲治の愛読書で、芸術面にも長けていた魅力的な宮本武蔵でした。
耳順(じじゅん)を過ぎた屋鋪さんのバイブル
『田中角栄名言集 仕事と人生の極意』
著/小林吉弥 幻冬舎 1056円

私の母は新潟に育ちました。令和の現在も、新潟県の高齢者は、田中角栄元総理を、神のように崇めています。その魅力を余すことなく伝えてくれるのが、小林吉弥氏の『田中角栄名言録』でした。
本書は、田中角栄が自民党の幹事長時代の昭和44年12月から、逝去された平成5年12月までの密着取材によって得られた、数々の名言を紹介してくれている。苦労人であった田中角栄が、一国の総理にまで駆け上がっていくための心得や、生きていくために必要な気遣いまで、政治家でなくても参考になる言葉が、4章に分けて綴られている。
人々に愛された田中角栄は、どのようにして万人の心を掴んだのか。上に立つべき人間のあるべき姿勢等々、この書は、50歳を過ぎてからの、そして60歳後半に差し掛かった私自身の生き方のバイブルになり、時々読み返している。
中国の著作家・洪自誠(こうじせい)の教えを基に生きる
『図解 菜根譚 ─バランスよければ憂いなし』
著/齋藤 孝 ウェッジ 1320円

私は若い頃から中国の古典書はよく読んでいて、特に心に残った一冊が洪自誠の『菜根譚』でした。齋藤孝の菜根譚解説を目にした時、迷わずに購入。第一章から、日々すこやかに過ごす基本。気持ちが楽になる心の持ち方。幸せになる生き方。生きやすくなる物の見方。自分も相手も心地いい関係の作り方の5章にわたり、人はどのようすれば、穏やかにかつ幸福に生きていけるかを教えてくれている。
第一章で「一苦一楽。一疑一信」は、考え抜いて行動することで、後悔と不安が消えると解き、第三章では、決めるのは自分自身であると締めている。人間はともすれば、誰かの指示で動くことを好みがちだが、一度きりの人生それで後悔しないのだろうか。60代後半に差し掛かっている私だが、残り人生も、誰かに支えてもらいながら、洪自誠『菜根譚』の教えを基に、生きていこうと考えています。
※屋鋪さんが上京時に持参したのは、吉川英治全集15、16、17、18の『宮本武蔵』(講談社)。絶版のため、新潮文庫版を掲載。
撮影/黒石あみ 編集/寺田剛治







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