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「寝る前のゲームは睡眠に悪い」は嘘だった!就寝前1時間のゲームが記憶力アップにつながる可能性

2026.05.06

就寝前のビデオゲームは厳禁なのか?

就寝前にはスマホやパソコンなどのブルーライトを放つスクリーンはあまり見ないようにして、カモミールティーなどを飲みながらゆっくり過ごすことが推奨されているが、やるべきこともやりたいことも多い現代人には就寝前にそうした時間を確保するのは難しいかもしれない。

子ども時代に夜遅くまでビデオゲームをやっていて親に咎められた経験を持つ者は多いと思うが、もちろん夜中に長時間ビデオゲームをプレイしていて健康に良いはずはない。寝不足や遅刻の原因にもなるだろう。

ビデオゲームが健康に及ぼす生理的、精神的な影響に関するこれまでの研究では、ビデオゲームが攻撃性の増加、不安感の高まり、睡眠障害と関連付けられるネガティブな報告も少なくない。

しかしその一方でほかの研究では、ゲームがストレスを軽減し、感情の制御に役立つなど、ポジティブな心理的効果があることもまた示されている。

こうした矛盾する報告がある理由の一つは、これまでの研究デザインがしばしば文脈を無視していたことにあり、ゲームのジャンルによって求められる精神的反応は大きく異なることが考慮されていないことにもある。リラックスして取り組めるパズルゲームが、緊張感のあるサバイバルゲームと同じように脳を刺激するわけではないからだ。

ジャンルだけでなくプレイ時間の長さも重要だ。夜遅くまでゲームを長時間続けるのと、就寝前に1時間だけプレイするのとでは心身に及ぼす影響がまったく異なるのは明らかだ。またゲームへの慣れ具合も、脳の反応に影響を与える。頻繁にゲームをプレイする者は、仮想世界を探索する際の精神的な負担に対する耐性を身につけていると考えられる。

一方で普段ほとんどビデオゲームをしない者にとって新しくゲームを始めることは、並外れた集中力と高度な精神的適応能力が求められる。研究によると人間の睡眠構造は学習と記憶の定着に合わせて変化することが多く、新しい課題を学習する必要性が高まると脳が夜間に新しい情報を処理するため、睡眠の連続性と安定性が向上する可能性が高まるという。つまり適度な知的刺激は質の良い睡眠へと導き得るのである。

ビデオゲームが心身に及ぼす影響を検証

伊・カンパニア大学をはじめとする合同研究チームが昨年3月に「Sleep Medicine」で発表した研究は、普段ゲームをしない成人を対象に、アクション性の高いビデオゲームが心身に与える影響を探っている。

実験では非ゲーマーが未経験のアクションゲームをプレイするという突然の精神的負荷が、睡眠パターン、認知能力、そして全般的な精神的健康にどのような影響を与えるかが検証された。

18歳から35歳までの健康な若年成人18名の実験参加者は、普段多くとも週に1時間以内しかビデオゲームをプレイしておらず、ほとんどはプレイ時間がゼロの非ゲーマーであった。参加者は慣れ親しんだ環境を維持するため、実験のすべてを自宅で行った。

実験の最初の1週間では各人の基準となる各種の生理学データが収集された。参加者は活動量計ウェアラブル端末を装着し、毎日の睡眠記録をつけ、普段通りの生活リズムを維持した。

その1週間後、研究チームは家庭用睡眠ポリグラフ検査装置を用いて、参加者の睡眠中の脳活動を記録した。この検査ではセンサーを用いて脳波、眼球運動、筋活動が追跡された。

収集されたデータから、参加者が眠りにつくまでの時間と、浅い睡眠と深い睡眠の段階をどのくらいの頻度で切り替えたかを示す、きわめて精度の高い各人の活動量計データマップが作成された。

次に参加者は、記憶力や注意力などの認知能力を測定するための一連の認知テストも受けた。また現在のストレス、不安、抑うつレベルを評価するために、標準化されたメンタルヘルスに関する質問票にも回答した。

就寝前の1時間ゲームで睡眠の質は下がらない

参加者各人の基準となるデータが測定された週の後、参加者は2グループに分けられそれぞれ4日間続く2つの別々の課題に参加した。

一方のグループの参加者は3晩連続で、就寝前にアクション満載のテレビシリーズ『ペーパー・ハウス(Money Heist)』を1時間視聴したのだが、3日目の夜に睡眠ポリグラフ検査を実施し、4日目に認知テストとメンタルヘルス調査が実施された。この調査により研究チームは、能動的な身体学習や問題解決を伴わないメディア視聴の効果を測定することができた。

もう一方のグループでは、参加者は毎晩1時間アクションビデオゲームをプレイした。ゲームタイトルは人気の高い一人称視点シューティングゲーム『コール オブ デューティ ブラックオプス コールドウォー』で、ゲームプレイでは高いレベルの身体的な関与、迅速な視覚学習、そしてストレスの多い仮想環境における素早いナビゲーションが必要とされてくる。

このグループも3日目の夜に睡眠ポリグラフ検査、4日目に認知テストとメンタルヘルス調査が課された。データ収集後、研究チームは各人の基準週のデータと、テレビ視聴期間あるいはビデオゲーム期間の結果を比較した。

分析の結果、就寝前に1時間激しいアクションゲームをプレイしても、基準週と比較して客観的な睡眠の質に変化は見られなかった。入眠時間、深い睡眠時間、夜間の覚醒回数は完全に安定しており、激しいゲームプレイにもかかわらず、回復を促す脳の状態を整える睡眠構造の構成要素はまったく損なわれていなかったのだ。

一方、テレビドラマを視聴したグループは睡眠効率がわずかに低下していた。テレビを視聴した参加者のほうがゲームをプレイした後よりも眠気を感じたと報告した。他方、ゲームプレイに伴う覚醒度の高まりは、その後の睡眠障害にはつながってはいなかった。

研究チームはゲームをプレイするために必要な高度な学習負荷が、睡眠依存的な記憶処理を引き起こした可能性があると推測している。脳はゲームプレイ中の複雑なコントローラー入力と仮想ナビゲーション戦略を統合するために、質の高い睡眠を必要としていたと考えらえるという。

就寝前のゲームで翌日の認知機能が向上

実験後の朝に実施された認知テストでは、ゲームを行った参加者に明確な精神的効果が見られた。参加者はビデオゲームを行った後、視空間ワーキングメモリのテストでより高いスコアを獲得したのだ。

視空間ワーキングメモリとは、脳が視覚情報を短期的に保持し操作する能力のことで、ゲームプレイにおいて3次元のゲームマップをナビゲートし、複数の動くターゲットを追跡するという精神的な努力が、翌日の認知能力を著しく向上させていたのである。

メンタルヘルスの評価においても、ビデオゲームのプレイ期間後には好ましい変化が見られた。参加者は3晩のゲーム後、基準週およびテレビ視聴グループと比較して、日々のストレスレベルが低下していたのだ。

この結果はビデオゲームが感情調整やリラクゼーションのための効果的なツールとして活用できるという、昨今ますます増えつつあるポジティブな研究結果と一致している。

研究チームは今後、最終的にはさまざまな視覚スタイルやゲームプレイが人間の脳にどのような影響を与えるかを正確に解明したいと考えている。今回の最新の研究結果は、短時間のゲームプレイが疲れた脳を効果的にリラックスさせ得ることを示唆するものとなった。

1時間程度の適度なゲームプレイが熟睡に繋がるばかりでなく認知機能をも向上させるとすれば、思わず今夜からでもコントローラーを握りたくなるかもしれない。しかし就寝前のゲームはくれぐれも1時間程度に留めておきたい。

※研究論文
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1389945725001194

文/仲田しんじ

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北海道生まれ東京育ち。学業ドロップアウト後、小説家を志しつつ広告代理店営業マン、任期制陸上自衛官、家電販売員などを経て経て出版業界へ。アスキーなどで編集者として勤務した後、フリーライターとして活動。科学から心理学まで幅広いテーマを執筆。ネット上の研究論文を読むのが趣味。大型自動二輪免許を持っている。 X: @nakata66shinji

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