本誌連載「玉川徹から働き盛りの君たちへ」では京都をテーマに、さまざまな分野のエキスパートが玉川徹さんと対談している。特に日本一の料亭「菊乃井」の主人村田吉弘さんと料理について語った対談には、深く考えさせられた。
同じ関西でも大阪と京都で追求する味が違う?玉川徹さんが老舗料亭「菊乃井」の主人に直撃取材
玉川さんが「京都で大切な人を招待するならココ」と決めている京都の老舗料亭・菊乃井。 前回は京都の老舗料亭・菊乃井の村田さんが何よりも存続を大事にしていること、そ…
食べ終わってしばらくしてから美味しいと感じる京料理
村田さんは対談の中で、若い頃、料理の師匠である父親から「お前の料理は美味しすぎる」と叱られたと言う。「美味しければ良いのでは?」と当時は反発したという村田さんだが、父親によると、それは違うと言う。京都の和食の美味しさは、口に入れたとたん、ガツンと感じるものではなく、食べ終わってしばらくして、じんわり、しみじみと「あれは美味しかった」と感じられる味を目指すべきだと、村田さんは父親から教えられたと語っている。
私たちは食べたとたん、口が喜ぶ美味しい料理を追い求めがちだ。何なら味ではなく、見た目のインパクトだけで美味しいと感じることもある。有名シェフの料理などは、情報が味覚に影響される。でも、じんわりしみじみ、美味しさの記憶が静かに押し寄せてくる食べ物を、私たちはつい忘れがちなのである。
村田さんが言うように、食べた時は何となく物足りないような味でも、次の日の朝になって「あれは美味しかったなぁ」と振り返ることができるような料理について、ずっと考え続けていた。そして出た結論が、成城石井のポテトサラダである。
店舗によって味に差が出るポテトサラダ
「ポテトサラダの味なんて大して変わらない」と思う人は多いはず。私も実はそう思っていた。成城石井のポテトサラダに出会った後、近所のスーパーで売っているものを片っ端から買って食べ比べたが、味や見た目に差がある。それぞれ個性があって、ジャガイモの食感も違う。甘めのタイプから、お酒のつまみになりそうなものまで、見た目は似ていても、食べると味は大きく異なる。
そして、どの店のポテトサラダも十分に美味しいが、なぜか食べ終わった後、その味が記憶に残らない。成城石井のポテトサラダだけが、静かな余韻を長く残すのである。これはもう、食べないとわからない感覚なのかもしれない。
口に入れると溶けるような、ふんわりした食感に、ごく普通のポテトとニンジン、時々きゅうりが違う食感で優しく現れて、セロリを感じる。口に残るのはマヨネーズと塩と酢の味で、大きなインパクトはゼロだが、肉・魚・野菜、和食から中華まで、どんな食べ物ともマッチする。普通のサラダなのに、明日も、明後日も食べたくなる美味しさなのである。
今後50年、100年と売れ続けてほしいポテトサラダ
成城石井では自家製商品を作る自社製造拠点「成城石井セントラルキッチン」が操業30周年を迎えたのを機に、自家製商品の人気No.1を決める顧客投票を行った。一位、二位になった商品は「成城石井“愛されグルメ”大賞」として増量などの特別規格で販売するキャンペーンを実施した。このサラダ部門で人気No.1を獲得したのが「成城石井自家製 ポテトサラダ」だった。
なぜ成城石井のポテトサラダは美味しいのか。今回、製造拠点である「成城石井セントラルキッチン」を見学してその秘訣が明らかになった。その美味しさの理由を3つ、紹介する。
美味しさの理由1)手作業にこだわり、皮は人が剥いている
ジャガイモはセントラルキッチンで蒸された後、作業員が一つずつ手で剥いている。ジャガイモが蒸し終わると、6人ほどの作業員が一斉に作業台に集まり、まだ熱いジャガイモを一つずつ素早く剥く。ベテランになると1個あたり10秒ほどで次々とジャガイモの皮がなくなる。遠くから見ても大量に湯気が上がっているので、ジャガイモはかなり熱いはずだが、作業は素早かった。
手で剥くことで皮と実の間にある一番おいしいと言われる部分が損なわれずに残るため、ジャガイモの味が濃く感じられる。これがポテトサラダを美味しくしている大きな理由の一つである。
美味しさの理由2)シンプルだからこそ素材は厳選
ポテトサラダに使われる原料は、ジャガイモ、ニンジン、きゅうり、玉ねぎ、セロリ、マヨネーズ、塩、酢である。かなりシンプルで家庭で作るポテトサラダに限りなく近い原料だ。しかし、使われているジャガイモはかなり厳選された、質の高いものを使用している。
2021年に起こった北海道の異常気象によるジャガイモ不作で、質の高いジャガイモが入手困難に陥った時は大変だったと現場の製造責任者は当時を振り返る。サラダの味を左右する重要な食材を求めて、全国の農場を駆け巡ったと言う。今回、「成城石井“愛されグルメ”大賞」では50%増量して販売することが決定して、真っ先に質の良いジャガイモの調達を心配したとも語っていた。
美味しさの理由3)家庭で作ったような味を再現した
成城石井が惣菜部門に進出した背景に、女性の社会参加があげられる。1970年代ごろ、働きながら子育てをする母親が増え、家庭で料理をする時間が減り、買ってそのまま食べられる惣菜に対する需要が高まった。
そのため、成城石井のポテトサラダも食卓に出てくるような家庭的な味わいを再現している。家庭で作ったような味がするからこそ、成城石井のポテトサラダは余韻が残り、記憶に残る味になっていたのかもしれない。
記憶に残る味に響き合うからこそ、長く余韻が残る。そんなポテトサラダは他に無い。現場の製造責任者は「今後50年、100年、売れていってほしいサラダです」と言っていた。成城石井が家庭の味わいを目指して作り上げた、40年以上続くポテトサラダの味を、ぜひあなたも感じてみて。
文/柿川鮎子







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