現在、コーヒーは第三次コーヒーブームを迎えている。50年から始まった第一次は大量消費の時代で、インスタントコーヒーや喫茶店文化が定着した。第二次はシアトル系カフェなど大規模チェーン店の台頭が目立ち、ブルーボトルコーヒーが新しいコーヒー文化を切り拓いた。第三次の今はスペシャリティコーヒーが登場し、消費者が質の高いコーヒーを求め、深煎り一択だったコーヒーから、浅炒りや、カフェラテなど多様なニーズに進化している。
テクノロジーがカバーするスペシャリティコーヒー
消費者の高品質志向や味の多様性に対応するため、コーヒーショップでは日々、工夫を重ねている。しかし、豆は農産品で、味を安定させるのは意外と難しい。特に国内では労働力不足で店舗の省人化対策も必須である。
そんな中、LDH kitchen(本社東京都目黒区、代表取締役社長CEO鈴木裕之氏)が運営し、EXILEのTETSUYAさんがプロデュースする「AMAZING COFFEE」全4店へ、スイスの業務用全自動コーヒーメーカー・フランケコーヒーシステムズ(本社スイス、アールブルク 代表マルコ・ザンコロ氏)の最先端コーヒーマシン「Mytico(ミティコ)」が導入された。
「経験の浅いスタッフでも一杯目から高いクオリティが実現できます。レバー一つで同じクオリティのミルクが作れるのには、感動しました」とTETUYAさん。ミティコに初めて触れた時から一目惚れしたと言う。毎朝、豆の量を量ったり、豆の引き目を調節する行程を行い、品質を保つのが重要な課題だったが、ミティコの導入でそれが誰でも可能になった。
今回、ミティコの導入にあたって、期間限定のコラボレーションドリンク「MYTICOラテ」を作成した。スイスではコーヒーにチェリーとチョコレートを入れるドリンクが人気で、それを日本人向けに開発したアレンジコーヒーである。深い味わいのチョコレートとコーヒーにフルーツの後味がさわやかな一杯となっている。
アレンジコーヒーはフルーツの酸味に注目
スペシャリティコーヒーを自分なりにアレンジしてもっと自由に楽しみたい。そんな意識が高まっている。ネスレ日本(本社兵庫県神戸市、代表取締役社長兼CEO深谷龍彦氏)は、水や炭酸に混ぜるだけで手軽に爽やかな新しいコーヒー体験が楽しめる、スティックタイプの新商品「ネスカフェ クーラー」を、3月に新発売した。
浅煎りコーヒーに、果実を思わせるみずみずしい香りと柔らかな酸味を加えた新しいリフレッシュドリンクで、1)酸味が心地よい「レモン」と、2)華やかな香りとやわらかな甘酸っぱさが楽しめる「ラズベリー」、の 2つのフレーバーで展開している。
これまで、コーヒーにプラスするものは砂糖とミルクのみで、レモンなど柑橘系の酸味はコーヒーの味に合わないと考えられていた。しかし、2022年頃から、レモンコーヒーダイエットがSNSで話題となり、コーヒーにレモンを入れた、酸味のあるコーヒーが広がった。
コーヒー豆はもともとコーヒーの木に生るコーヒーチェリーの、実の中にある種を取り出したもの。コーヒーチェリーそのものに酸味があり、コーヒー豆には酸味に合う味のベースが整っていた。今後はレモン以外にもラズベリーやオレンジ、カシスなど酸味のある果実と合わせるアレンジが広がっていくと期待されている。
特に近年の気候変動から、暑い期間が長くなり、コーヒーもアイスを飲む傾向が強くなってきた。消費者行動研究所「飲み物調査」によると、国内で飲用されるコーヒーの約 40%がアイスコーヒーだった。レモンやラズベリーなど酸味のあるジュース感覚で飲める「ネスカフェ クーラー」は、これまであまりコーヒーを飲む機会が少なかった層にも訴求できる商品となっている。
暑い夏のお供!?さわやかスパークリングコーヒー
さらに今夏、新たなコーヒー飲料として注目されそうなのが、スパークリングコーヒー(もしくはコーヒーソーダ)と呼ばれる炭酸入りコーヒーである。今回は定着しそうな勢いがある。ネスレ日本の新商品「ネスカフェ クーラー」も炭酸水に溶かして飲むことを選択肢として推奨している。
また、同社の「ネスカフェ ゴールドブレンド」のボトルコーヒーおよび濃縮ポーション製品は今年3月に刷新し、 アイスコーヒーに特化したブランド「ネスカフェ アイスブレンド」シリーズとして新展開している。リニューアルしたのは「ネスカフェ アイスブレンド ボトルコーヒー」 (900ml:甘さひかえめ、無糖)と「ネスカフェ アイスブレンド ポーション」(7 個、18 個:甘さひかえめ、無糖)だが、どちらも簡単に炭酸飲料で割って飲める。
さらに家で作るのが面倒な人はすでに完成されたボトルコーヒーの新商品もお勧めである。伊藤園(本社東京都渋谷区、社長本庄大介氏)は、「TULLY’S COFFEE」ブランドから、炭酸コーヒー「TULLY’S COFFEE FIZZPRESSO LIME TONIC」と「同 FIZZPRESSO BITTER BLACK」の2つを5月に新発売する。
これは「FIZZ(炭酸)」と「ESPRESSO(エスプレッソ)」を掛け合わせたコーヒー味の炭酸飲料で、ライムトニックは爽やかなライムの香りとエスプレッソのほろ苦さを楽しめる。ライムは有糖だが、ビターブラックは無糖でカロリーゼロ。当社製品と比較してカフェインが約1/4と少なめで、夜でも安心して飲めるスパークリングコーヒーとなっている。
カフェインレスコーヒーも今夏から定番に
こうしたカフェインレスコーヒーは、これまで妊婦さんが飲む特別なコーヒー、というイメージが強かった。カフェインレスコーヒーには定義があり、全日本コーヒー公正取引協議会はカフェインを90%以上除去したコーヒーをカフェインレスと定義している。さらにカフェインが全く入っていないコーヒーはノンカフェインコーヒーと言う。
睡眠前のリラックスタイムにコーヒーを楽しみたい人は多く、コロナ禍後、在宅時間が長くなり、カフェインレスコーヒーへの期待は高まっている。カフェインレスコーヒー市場は2020年から2024年にかけて年平均成長率(CAGR)9.4%と高い伸びを記録しており、市場規模は約1.5倍へと拡大中。昨年2025年のカフェインレスコーヒーの輸入量は、史上最多となった。
ネスレ日本が行った調査でも、20代ではカフェインコントロールに対する意識が高いことが明らかになっている。しかし、長い間、カフェインレスは美味しくないとか、化学薬品でカフェインを除去するため、身体によくないというイメージが付きまとっていた。
2日間の期間限定でオープンしたUCC上島珈琲「さようなら先入観カフェ」ではカフェインレスコーヒーに対する先入観を払拭させた。
日本では化学物質を使ったカフェイン除去方法は禁止されており、最近では技術も向上して、カフェインが入っているコーヒーとの味の違いはほとんどない。特に大手のUCC上島珈琲(本社兵庫県神戸市、社長芝谷博司氏)が力を入れてきて、カフェインレスコーヒーは、今夏から定番の一つとして確立しそう。
UCC上島珈琲は「UCC おいしいカフェインレスコーヒー」シリーズの各アイテムを3月2日にリニューアルして発売中である。液体二酸化炭素抽出法でカフェインを97%カットしたカフェインレスコーヒーで、ブラジル産アラビカ豆を100%使用し、コクと香りを残した「ドリップ」「インスタント」「粉」「ペットボトル」など豊富なラインナップとなっている。
今回、記事に合わせて「おいしいカフェインレスコーヒー ワンドリップコーヒー コク深め」のドリップタイプと、カフェイン入りの「UCC職人の珈琲」ドリップタイプを両方入れて飲んでみたが、美味しさの優劣は全く無かった。カフェインレスに対する従来の常識は、確実に塗り替えられている。
たった一杯ですっきり目が覚めたり、くつろぐ感覚を味わえるコーヒー。今年の夏も猛暑の予測だが、酸味のある柑橘系のアレンジと、炭酸入り、そしてカフェインレスなど、様々なアイスコーヒーで楽しみながら乗り切りたい。
文/柿川鮎子







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