長い間、店主ひとりの個人経営が大部分を占めていたラーメン業界。中には一代で大成功をおさめ、何店舗も経営する店主も珍しくはなかったが、近年その風潮が変わってきた。そんな誰もが知るような店が、ラーメン以外の異業種企業とM&Aを行なう事例が増えているのだ。なぜこのような現象が起きているのか?
大手資本が高騰する原材料費や光熱費などへの対抗策に
M&Aによって発生する双方のメリットについて、M&A総合研究所の福島崇広さんはこう語る。

M&A総合研究所 企業情報本部 マネージャー
福島崇広さん
金融業界で多くの経営者が抱える事業承継問題の深刻な実態に触れ、M&A業界へ転身。ラーメン店を含む複数の承継支援実績を持つ。
「オーナー側にとっては大手資本が入ることで大量仕入れによる原価低減が期待でき、高騰する原材料費や光熱費などへの対抗策となります。また店舗を拡大する際、数店だったら従来のやり方でも対応できる一方、多店舗展開するには採用力や教育ノウハウを持つ大手傘下に入るほうがメリットだと考える。そんな店主が増えているんです。
一方買い手の企業からすると、ラーメンは老若男女に人気なので拡大を見込みやすい一方で、異業種だと自社にノウハウがなく、成功するかは不透明。ある程度資金力があれば、M&Aで人気店を譲り受けて運営をするほうが効率的と考える企業が増えています。また近年は海外でも成功を収めるラーメン店も少なくないので、海外展開の足掛かりとなります」
そして個人のラーメン店と大手企業のM&Aは、もちろん消費者にとってもメリットはあるという。
「多店舗展開が可能になることで、より多くの場所で名店の味を身近に楽しむこともできるようになります。また人材育成のノウハウにより、後継者不足による廃業が少なくなる。ほかモバイルオーダーやキャッシュレス対応がより整備されるケースも期待できると思います」(福島さん)
ちなみに吉野家では昨年夏に初の麺メニュー『牛玉スタミナまぜそば』をリリースし、冬シーズンにはばり嗎とのコラボメニュー『とんこつ醤油牛鍋膳』を出して話題に。こういった企画が楽しめるのも、消費者にとっての新たなメリットといえそうだ。
近年、話題になったラーメン店のM&A事例
『六厘舍』→ 松屋フーズホールディングス
『春木屋』→ ダイタンフード/『麺屋たけ井』→ 壱番屋
『ソラノイロ』→ OICグループ
『麺屋猪一』→ サザビーリーグ
カラオケ(鉄人化HD)× 直久

創業112年の老舗と大手カラオケ店が合併して拡大
大正3年に創業した超老舗ラーメン店。特製麺と名古屋コーチン等を煮込んだすっきりとした正統派のスープが特徴。M&A後はグループ内の豊富な知見や研修制度を活用することで、人材育成や組織力を強化。組織全体の底上げにつなげている。

『直久こく旨醤油』
〈なぜM&Aしたの?〉
これまで培ってきたブランドや商品力を守るため、新たな経営基盤のもとで事業の再生を図る。
居酒屋 × 狼煙(のろし)

人気居酒屋がラーメン事業の狼煙を上げた!
埼玉を拠点とし、厳選素材を炊き上げた超濃厚な魚介豚骨スープと、自家製極太麺によるつけ麺が大人気。M&Aにより磯丸水産を経営するクリエイト・レストランツ・ホールディングスの高い物件開発力を活かして良い立地への展開も可能に。

『つけ麺』
〈なぜM&Aしたの?〉
コロナ禍や大規模災害などでも従業員の雇用を守り、より良い労働環境を提供するため。
牛丼チェーン店×ばり嗎(うま)

グループ成長戦略としてラーメン業界に進出
時間をかけて豚骨と鶏ガラを煮出し、醤油の深いコクを重ねたスープが楽しめる『最強トロ炊きとんこつ鶏ガラ醤油らーめん』が看板メニュー。昨年10月には吉野家とのコラボ商品『とんこつ醤油牛鍋膳』が吉野家店舗で限定発売された。

『味玉ばり濃』
〈なぜM&Aしたの?〉
吉野家HDが成長事業の軸としてラーメン事業を位置付け。新たな日常食の提案を発信。
取材・文/高山 惠 編集/寺田剛治







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