先日父の誕生日を家族でお祝いした。70代も後半に差し掛かり白髪になった父を見て改めて親も年をとったな、と感じた。父が「ちょうど俺の親父が死んだ年齢になったんだよ」と言ったのを聞いて心臓がきゅっとした。
「事前相談」を体験
いつかは自分が喪主になる。とくに一人っ子の場合、いざその時が来たら、判断も段取りも、基本的に全部自分だ。
でも正直、参列経験はあっても「喪主って何をするの?」「何を決めるの?」ということは何も知らない。
30代の毎日は忙しい。仕事に追われ、生活を回し、気づけば親のことは“心配だけど後回し”になっていく。そもそもいくらかかるのか、おそらく全然足りていない貯金のことを考えて不安を覚えた。
今回、燦ホールディングス傘下の公益社の会館で「事前相談」を体験してみて痛感した。
漠然と不安がある人ほど、事前相談に行った方がいい。その理由を、取材で聞いた内容をもとに整理する。
<取材協力>
公益社 雪谷営業所長兼田園調布営業所長 阪本さん
今回話を聞いたのは、公益社の雪谷営業所長兼田園調布営業所長で、一級葬祭ディレクター(※)も務める阪本さおりさん。実はこの仕事は、阪本さんにとって高校生の頃からの夢だったという。
(※)葬祭ディレクターとは、厚生労働省認定の「葬祭ディレクター技能審査制度」に合格した葬祭のプロフェッショナルです。
高校生の時、一緒に暮らしていた祖父が亡くなり、当時喪主を務めた祖母を支えていた女性の葬祭ディレクターの姿に衝撃を受けた。
「こんな仕事があるんだ!自分もこの仕事がしたい」と進路を決めたことを朗らかに話してくれた。
話しやすく、柔らかい空気をつくってくれるタイプで、こちらが「こんなこと聞いていいのかな」と一瞬迷うような質問も、笑いを交えながら受け止めてくれる。事前相談に「何回も来る人がいる」と聞いた時も、正直すぐに納得できた。
そもそも「事前相談」って、どんな人が行くもの?
阪本さんによると、事前相談は「明確な希望がある人のための場」ではない。むしろ逆で、最初はこんな状態の人が多いという。
・何が不安なのか、自分でも分からない
・何を聞けばいいか分からない
・「縁起でもない」気がして、考えることを避けてきた
「皆さん、葬儀を知らないことが大前提です。喪主を経験している方って、まずいらっしゃらないので」
相談の場ではまず、葬儀の流れや、何を決める必要があるのかといった「前提」から整理していく。事前相談は、「決めに行く場」というより「理解しに行く場」でもあるようだ。
話を進める中で、「色々お話を聞く中で、あ、じゃあ私ってこういうのが良いんだねって分かって頂けたりします」と、その家に合う形が見えてくるケースも多いという。
30代、40代の相談者はまだ少数派。でも「行った方が良い」理由
事前相談の来訪者は60~70代が中心で、30~40代は決して多くない。葬儀というテーマ自体が、「差し迫った状況にならないと向き合いにくい」からだ。
ただ阪本さんは、むしろこう話す。「余命幾ばくです、という時にあれこれと考えるのは辛い。だから、冷静に判断できるうちに来てほしい」
「漠然とした不安」の段階で行く意味の1つ目は、まさにここにある。
事前相談では「どこまで」質問していい?
結論から言うと、かなり広く聞ける。葬儀そのものだけでなく、終活寄りの話も含めて相談可能だ。
取材中に話題に上がったのが「エンディングノート」。
介護や延命治療の希望、葬儀・お墓のこと、資産や運用、デジタル関連(ID・パスワード)まで網羅できる「覚え書き」だ。
公益社では、事前相談をした人に、希望があればエンディングノートを渡しているという。
ただし注意点もある。 エンディングノートは遺言書ではなく、法的効力はない。
一方で、書き直しが簡単で、残された家族が迷わないための「道しるべ」になりやすい。
「故人が何を望んでいたのだろう、分からない遺族が本当に多い。だから、あった方が迷わない」
子どもが親に渡す場合もあるが、やはりなかなかハードルが高いという場合もあるだろう。そういった場合は、事前相談に一緒に行ってみるのもいいかもしれない。
相談時は「実際の会場」の案内も。雰囲気が分かるのは大きい
事前相談のイメージは、机を挟んで話を聞くだけ、だったのだが、実際は違った。
相談内容に応じて、実際に葬儀を行う会場の案内もしてくれる。
会場の広さや、雰囲気などは、言葉だけではなかなか想像できないので実際に見て回れるのは良かった。
見積もりのサンプルをもらって、初めて「おおよそいくら」が掴めた
今回、相談をして見積りを出してもらった。
そもそも私は、「葬儀に何が必要で、どこにお金がかかるのか」をほとんど想像できていなかった。だからこそ、見積もりを見ることで費用の内訳が具体的にイメージでき、さらに「だいたいこのくらい」という金額感まで掴めたのが大きかった。これが事前相談に行くべき2つ目の理由だ。
特に最近は「家族葬」「直葬」など様々な葬儀のキーワードは聞くが、自分の想像している「お葬式」というものはどういうもので、何に費用がかかってくるのか、ということがわかるのは大きい。
金額の話は、気まずくて聞きづらい、そう思っていたが、阪本さんはむしろ「比較のためにも見積もりは大事」と言う。
見積もりで必ず聞いておきたいのが、この一言。
「これで足りないことは、もうないですよね?追加オプションになることはありませんよね?」
最近葬儀会社でおこる金額トラブルはこんな簡単な一言で解決するのかもしれない。
知らなければ「選択できない」ことも起こる
3つ目の理由として、知らないと追加で費用が発生したり、トラブルになる可能性があることを学んだ。
例えば病院によっては葬儀社を紹介されることがあるが、「病院が言うならそこにしなければいけない」というわけではない。
特に故人を移動させる手段である寝台車も自分で選択した葬儀社のもので良いそうだ。もし提示されても「決めているところがあれば、“そこに頼みます”で大丈夫です」とのこと。
焦って決めると、搬送距離やプランの積み上げで、想定以上の金額になることもある。事前相談は、テンパった状態での判断を防ぐ意味でも有効だ。
結論!事前相談に今行くべき理由は「漠然とした不安」が「具体的に準備できる不安」になるから
今回、事前相談を体験して一番大きかったのは、「葬儀の知識がついた」というより、「漠然とした不安」が、「具体的に準備できる不安」に形を変えたことだ。
理由は大きく3つある。
1つ目は、差し迫っていない今だからこそ、冷静に話を聞けるということ。
「余命幾ばくです」というタイミングでは、精神的にも時間的にも判断が難しくなる。だからこそ、親が元気なうちに「選択肢を知る」だけでも、心の余裕が違う。
2つ目は、見積もりを見て「おおよそいくら」を掴めたこと。
「葬儀って結局いくらかかるの?」という疑問は、知らないからこそ不安が膨らむ。内訳が見えると、何に費用がかかり、どこが増減しやすいのかが分かる。
そして「自分がやりたいお葬式がどんなものか」を「自分で選べる」状態になると感じた。
3つ目は、自分では気づかないが、知っておくと備えられることもあるということ。
病院から紹介されても、必ず従う必要はない。寝台車も含めて自分で葬儀社を選べる。けれど、その事実を知らなければ、焦りの中で流され、結果的に費用や段取りで後悔することも起こり得る。
事前相談は「契約しに行く場」ではない。むしろ、何が分からないのかを明確にして、必要なら会場も見て、エンディングノートのような「話し合いのきっかけ」も持ち帰れる場所だった。
親の誕生日に感じた、あの心臓がきゅっとなる感覚。
「いつか」の話をするのは気が重い。でも、いざという時に一人で抱え込まないために、そして「その時」の判断を少しでも楽にするために。
漠然と不安があるなら、まずは一度、事前相談に行ってみてほしい。それだけで、「怖い」が「備えられる」に変わるはずだ。
取材・文/三島はなえ
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