2026年3月末日頃から、Xが大きく変わった。海外言語で書かれたポストの翻訳がデフォルト機能になったのだ。
この翻訳機能は、Xにとっては特段新しい機能というわけではない。外国語のポストには「翻訳を表示」をタップすることで、Grokが文章を訳してくれる仕組みだった。それが当初から翻訳された状態でタイムラインに出てくるようになった、ということだ。
たったそれだけの仕様変更なのに、Xでは「大革命」と呼ぶに相応しい現象が巻き起こっている。
ステレオタイプを打破した「自動翻訳機能」
4月に入り、Xでは日本人でない人のポストをリポストする日本人ユーザーが相次いでいる。
いや、この表現は正確ではない。「自分の言語設定の外にあるポストをリポストする人が増えた」と書くべきか。
たとえば、海外では今でも「武士=日本刀」というイメージで語られることのほうが多い。しかし、それをステレオタイプな見方として否定的に捉え、さらに「封建時代の日本の武士は火縄銃で武装し、しかも10万以上の兵力を動員することができた」というポストがこの記事を執筆している最中に拡散されている。元の言語はスペイン語だ。
参考文献も記載したこのポストに対して、日本人からの称賛の声が上がっている。こうした角度から日本の武士を取り上げられるのは、日本人にとっても新鮮な体験である。世界にはこのような歴史マニアが数多く存在するが、今年3月までは彼らがどのような発信をしようとも、そこに「言語の壁」が立ちはだかった。
それが実にあっけなく取り払われたのだ。
インフルエンサーの「国際化」
このようなことも起きている。
日本でかつて放映されていたテレビCMの動画をアップしているポストが、海外のユーザーの目に留まり、その出来栄えを称えられるという現象である。
しかも、「僕の国にもこんなCMがあったよ」といったように、それぞれの国の「テレビCM自慢」まで発生している。言葉が自動翻訳されることにより、それぞれの国の国民が視認していなかった光景がはっきり見えるようになったのだ。これは立派な「文化交流」である。世界各国の人の日本に対するステレオタイプ、そして日本人の各国に対するステレオタイプを打破する出来事だ。
「インフルエンサーの国際化」という現象も、既に起きている。
3月まで、日本語のポストを発信するインフルエンサーは日本のユーザーにしか影響を及ぼさなかった。が、文章の自動翻訳によりポストが日本人ユーザーの枠から飛び出し、それに従って海外ユーザーも日本のインフルエンサーをフォローするようになったのだ。見方を変えれば、韓国や台湾のインフルエンサーをフォローする日本人ユーザーも相次いでいるということである。
こうした流れで、英語やスペイン語といった複数ヶ国で使用されている言語が母語ではないインフルエンサーも「国際化」しているのが今現在の状況である。
また、世界各国の流行を伝えるポストも、Xの自動翻訳機能が各国の言語にローカライズしてくれるようになった。どのようなゲームが流行っているのか、テレビではどのようなアニメが放映されているのか、人気の歌手は誰なのか。「流行の伝搬」がより高速化されることは、間違いないだろう。
「世界は多様である」ということを明らかにするのに、政治的な働きかけも大衆に対する啓蒙活動も必要なかった。博士号を持った社会学者も、前衛的なアクティビストも、彼らが制作を監修したポスターも不要だった。「ポストの翻訳機能のデフォルト化」で、それがあっさりと証明されてしまったのだ。
炎上ポストが世界を燃やす
ただし、これはさらに言い換えれば「炎上ポストも国際化する」という意味でもある。
アメリカのトランプ大統領が、自身をイエス・キリストのように描いたイラストを投稿した際、アメリカのXユーザーはどのように反応したのか。そうしたことも自動翻訳され、世界中に拡散された。「アメリカのXユーザー」といっても、居住地や思想、宗教、職業などで考え方も多種多様だが、Xはそうした内情すらも容赦なく翻訳してしまう。
そこに待ち受けているのは「世界的な規模の議論」だ。
我々が今後気をつけるべきは、ベッドに横になりながら何気なく投稿した文章が、世界のどこかにいる人もしくはコミュニティーの心情に火をつけ、それが大火事になってしまうという事態である。炎上が世界的規模のものになり、もはや個人で対応し切れる事故ではなくなってしまう可能性も考えられる。
「つぶやき」から「演説」へ
日本では、Twitter時代の習慣から今でもXでのポストを「つぶやき」と称されている。
しかし、此度の仕様変更はポストが「つぶやき」程度の規模ではなく、まさに世界に向けた「意見発表」もしくは「演説」としてしまうものではないか。
日常生活の些細なことをつぶやくという使い方は今後もできるだろうが、たとえば「ちょっとしたイタズラを収めた動画」が日本国内だけでなく、世界中のXユーザーの目に留まって国際的な非難を受ける……ということも考えられる。そのような見方からも、Xの利用方法には今後より一層の注意が必要だ。
文/澤田真一
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