ミニチュア写真家・田中達也さんの活動15周年を記念した作品集『MINIATURE LIFE 365』の発売をきっかけに、アートテラー・とに~さんとの対談が実現。アートを通じて意気投合したお二人。田中さんの作品をテーマに、熱いトークセッションとなった。
活動15周年で実現!記念日をテーマにした作品集

『MINIATURE LIFE 365』
著/田中達也 小学館 4950円
田中さんがSNSに作品を毎日投稿し始めたのは2011年4月20日。それから15年、1日も休むことなく「日用品を別のものに見立てる」アートを配信し続けている。今回、膨大な作品群の中から366点を厳選し、1冊にまとめた。
『MINIATURE LIFE 365 田中達也の今日の1枚』
薯/田中達也
頁数:394 ページ
ISBN 978-4-09-682520-4
発売日:2026年4月20日
田中さんはアート界の常識を変えていますよ

アートテラー
とに〜さん
1983年千葉県生まれ。美術の魅力をわかりやすいトークで伝えるアートテラーとして活動。よしもと芸人時代に培ったお笑いスキルを武器に美術館などで独自のトークガイドを展開する。
長年あたためてきたテーマが完成しました

ミニチュア写真家・見立て作家
田中達也さん
1981年熊本県生まれ。2011年、ミニチュアの視点で日常にあるものを別のものに見立てるアート『MINIATURE CALENDAR』を開始。以後毎日作品をインターネット上で発表しつづけている。
枯山水との出会いから〝見立て〟の作品は生まれた
とに~ 仕事柄、全国の美術館を巡っていますが、田中さんの作品を初めてレポートしたのが、2019年に横須賀美術館で開催されたグループ展『センス・オブ・スケール展』でした。公立美術館での展示はあれが初めてでしたか。
田中 そうですね。それまでは百貨店がメインでした。『センス・オブ・スケール展』の頃から、美術館での展覧会が増え始めました。
とに~ SNSを使った作品投稿からスタートして、公立美術館での展覧会を成功させた作家はあまり先例がないんです。その点でも田中さんの存在は衝撃的でした。SNSで頭角を現す作家が増えていく転換期をつくったともいえますね。当初から美術館で展覧会を開くという目標はあったんですか。
田中 2011年からはじめた「MINIATURE CALENDAR」は、あくまで趣味の延長で、作品を美術館で……という野望はまったくありませんでした。
とに~ 毎日更新するモチベーション維持の秘訣はありますか。
田中 作品制作が日常になったことですね。毎日つくるからこそ、新しい発想が湧いて出ると感じています。とに~さんもブログ『ここにしかない美術室』を20年近く、毎日つづけられているので、共感いただけるかもしれません。
とに~ 身近にあるものをまったく別のものに見立てて作品を作っていますが、何がきっかけで〝見立て〟に着目したんでしょう。
田中 大学時代に三味線で『枯山水』という曲を演奏することになり、調べているうちに、水を使わずに石や砂などで山水の景色を見立てる世界に引き寄せられました。この時に〝見立て〟の面白さをはっきり意識したと思いますね。
とに~ ポップな作風でありながら、どこか和の情緒を感じる謎が解けました。平安時代の『源氏物語絵巻』に見られる斜め俯瞰で室内を描く吹抜屋台の手法など日本画の影響も感じます。
田中 日本画は意識しているかもしれませんね。特に余白が好きです。木の枝に鳥がとまっている絵があるとして、その脇に余白があれば、この後、鳥は飛んでいくんだなって想像ができます。シンプルな背景の方が、見る側がストーリーを想像しやすいですよね。

鹿児島にあるアトリエで創作活動をする田中さん。壁面の収納には、作品で用いるフィギュアや食品サンプルなどがぎっしり詰まっている。出張がある時は撮りだめるが、基本的に毎日、新作を撮り下ろしている。「毎日撮影するからこそ、アイデアが生まれてくるんです」と田中さん。
記念日をテーマにした作品集
とに~ 田中さんは見立てに日用品や文房具を使っていますが、どんな思いが込められていますか。
田中 作品を制作することで日用品の価値を上げたいという狙いもあります。コロナ禍でネガティブな印象になった衛生マスクを、プールに見立てたことがありましたが、マイナスイメージをプラスに変えられると一番いいと思っています。
とに~ 影響を受けた作家は?
田中 ルネ・マグリットは、見ていると純粋に楽しくなりますね。
とに~ 僕もマグリットは大好きですね。美術史に名を刻む大御所はYouTuber的というか、自分が好きなもの、面白いことを放り投げているような気がするんです。でもマグリットは、見る人のリアクションを期待している感じがあって、芸人っぽいんですよね(笑)。
田中 僕は「作品から自由に何かを感じ取ってください」というのは放り投げすぎかなと思うので、何のために作品をつくり、作品から何を伝えたいか、どう見てほしいか常に発信しています。
とに~ 展示した以上、作家はメッセージを伝える責任があると思っています。それを投げ出すと、来場者に何も伝わらず、アートの裾野が広がらない危惧もあります。
田中 今回の作品集『MINIATURE LIFE 365』でも、1日1点、こちらがベストだと思う作品を選んでしまうと、共感されないと思ったんです。作品に合わせた記念日名を入れることで、選んだ意図が多少は伝わるといいですね。
とに~ セレクトの基準は?
田中 自分で記念日に合った作品を当て込んで1日1点に絞り込み、最終的には全体のバランスを考えながら決めました。記念日のための日めくり作品集ですから、SNSの評判は意識しませんでしたね。
とに~ 15年分の作品を見返して、どんな変化を感じましたか。
田中 一番の違いはタイトルです。今思えば、変だなと思ったタイトルは改めました(笑)。ジオラマは年を追うごとに人形のサイズバリエーションが増えて、発想当時はあきらめたアイデアを、後で実現できたことも。つづけてきてよかったなと実感しました。
『MINIATURE LIFE 365』の見どころ
多くの作品が「今日は何の日」とリンク
「自分基準の傑作選にしたくなかった」という田中さんは、毎日、必ず何かしらある「○○の日」に着目し、それにリンクする作品を選んだ。「15年間に撮った膨大な作品群の中でも、ぴったりな作品が見つからなかった場合は、新作を撮影しました」
国際熱帯デーだから南の島を想起させる見立ての作品に!!

背表紙に文字をあしらったコデックス装
384ページもあるので背幅が分厚い。今回、本の背を糸で綴じ、そこに薄く糊を引いて固める特殊な製本方法である「コデックス装」を採用。加えて、背表紙には書名の『MINIATURE LIFE 365』と印刷することで、特別感を演出した。

万年カレンダーとしても使える
コデックス装のため、各ページが180度近く開き、日々の気分でお気に入りの作品が掲載されるページを開いてディスプレイできる。毎日ページをめくれば、万年カレンダーのように使えるのもうれしいポイント。とに~さんは「プレゼントにも最適です」と評価した。

取材・文/安藤政弘 撮影/大崎あゆみ 編集/寺田剛治







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