東日本大震災から15年という節目を迎えたが、ニュース番組などで震災特集が組まれるなど社会全体でいまだに関心は強い印象だが、若年層に目を向けると記憶の欠如が顕著になる懸念が生まれている。
当時と比較してスマートフォンの普及で情報収集のデジタル化は進んだが、通信途絶時の備えやAI・SNS時代の「フェイク情報」に対する不安など新たな課題も生まれた。気象情報や災害情報などを提供しているウェザーニューズは、いざという時の避難行動や災害対策の一助とすることを目的として、防災・減災への意識の実態や変化を調査する「減災調査2026」の情報を公開した。
この調査は、2026年2月21日から2026年2月25日にかけてウェザーニューズのアプリやウェブサイトを通じて10269人に実施したものだ。
20歳未満の約8割は震災の「記憶なし」で風化の懸念
東日本大震災の記憶については、全体で85.0%の人が「はっきりと覚えている」と回答しており、いまだに多くの人の心に強烈な記憶として残っていた。だが年代別に見ると、「ほとんど覚えていない」と回答した人の約68%は20歳未満に集中しており、20歳未満の回答者だけで見ると約8割が震災の記憶がないという。5年前の調査結果の21%から大幅に増加しており、震災の教訓を後世に伝えることが急務といえる。
被災地とそうでない地域で復興の認識にギャップ
“被災地の今”に関する認識についての調査では、「あなたは東日本大震災当時、大きな被害に遭いましたか?」と質問して「遭った(今もほぼ同じ場所にいる)」、「遭った(今は離れた場所にいる)」、「被害はなかったが、生活が一変した」、「遭っていない」から選択して回答してもらい、「震災から15年経過し、被災地での生活はどう変わりましたか?」あるいは「震災から15年経過し、被災地での生活はどういう状況だと思っていますか?」と質問。それに「震災発生直後とあまり変わらない」、「ほぼ、震災以前の生活に戻っている」、「震災前と同じ生活になっている」、「復興してより良くなった」、「よくわからない」の5択で回答を集計した。
被災地で生活を続ける当事者は、「震災前と同じ生活になっている」(44.8%)、「ほぼ、震災以前の生活に戻っている」(28.5%)、「復興してより良くなった」(4.1%)と8割近くが生活の再建や復興を実感していることがわかった。だが被災地以外の地域では、同様の認識を持つ人は約半数だった。被災地以外では、3割以上が「よくわからない」と答えており、歳月の経過によって被災地の情報の減少や関心の風化が進み、被災地と被災地以外の地域の人で復興に対する認識の違いが大きくなっていることが浮き彫りになった。
地震発生時の情報収集はアプリが主流
地震発生時に何を使って情報を取得するかについては、「天気・地震アプリ・サイト」(33.0%)や「ニュースアプリ・サイト」(16.8%)などスマートフォンやインターネットを経由した情報収集が主流だ。5年前の「減災調査2021」でもインターネットを経由した情報収集の割合が増加し、テレビ・ラジオが減少傾向だったが、情報収集のデジタル化は確実に定着しているようだ。年代別でみると各年代で差が大きかったのが「SNS」、「ライブ動画配信」、「テレビ」の選択肢。若い世代ほどライブ動画配信やSNSなどのインターネット上のメディアから情報収集し、世代が上がるほどテレビやラジオから情報を得ている割合が高いようだ。
通信断時の連絡手段では過半数が「未決定」
スマートフォンやインターネットが使えない停電や回線混雑の時の家族との連絡手段では、53.1%が「決めていない」と回答しており、過半数は通信が途絶えた時のことを考えていないことがわかった。連絡手段を決めている人でもっとも多かったのは「災害用伝言ダイヤル『171 』」(20.0%)で、それに「事前に決めた『集合場所』で直接落ち合う」(18.9%)が続いた。「公衆電話を探す」や「震災時は固定電話や公衆電話で連絡を取り合いました」といった東日本大震災時に繋がりやすかった公衆電話を頼りにする声や「自宅ポストに油性ペンを常備しているので、アナログに伝言を書き残して避難する」などデジタルに頼らない工夫をしている意見もあった。
通信断時の次の手段は半数以上がラジオ
通信インフラがダウンした時の情報取得手段ではトップは58.5%の「ラジオ」で2位は「テレビ」(22.8%)だった。「自家用車のナビでテレビかラジオ」や「車のエンジンをかけてテレビをみる」など車を情報源や電源として活用する声が多かったという。
8割以上がSNS上のフェイクを見抜く自信がないと回答
災害時は「情報の質」が命にかかわるが、SNSのフェイク画像やデマを見分ける自信が「ある」と回答した人は16.5%だった。「ない」( 28.3%)と「わからない」(55.2%)を合わせた80%以上が情報の真偽を見極める自信がないと考えていた。AI技術の進化で実際の被害とは異なる精巧なフェイク画像や悪質な救助要請のデマが拡散しやすくなっているが、公式の自治体や報道機関など「信頼できる情報源」を平時から確認しておく必要はあるだろう。
帰宅困難の対策率は震災経験の有無で地域差あり
東日本大震災などで首都圏でも大きな問題となった「帰宅困難」への対策では、「十分に対策している」と回答した人は4.5%しかいなかった。「ある程度対策している」と回答した人も27.9%で、対策を考えている人は約3割だった。もっとも多い回答は「意識はしているが、具体的な対策はできていない」(47.2%)で、「特に対策をしていない」(20.4%)と合わせると7割近くが具体的な対策をしていなかった。対策している人の都道府県別の割合では、宮城県(47.0%)など東北エリアが高く、東京都(40.1%)も全国トップクラスの対策率だった。神奈川県(37.4%)や千葉県(35.1%)も全国平均以上の水準で、東日本大震災時に大混乱を経験した首都圏では比較的意識が高かった。熊本地震などで都市部でも災害を経験した熊本県(40.0%)も対策率が高かった。
見直すきっかけは「大地震のニュースを見た時」が最多
防災行動や備えを見直すきっかけでは、「大きな地震のニュースなどを見た時」(40.9%)がトップで、それに「定期的に見直している」(16.2%)、「防災の日や『東日本大震災から15 年』など節目の機会」(14.4%)、「実際に大きな地震があった時」(13.2%)が続いた。回答者の多くは、自分が直接被害に遭わなくても他地域の災害ニュースや震災の節目をきっかけに“自分ごと”として備えを見直しているようだ。
いつ襲ってくるかわからない災害だが、この調査では情報収集などをスマートフォンやインターネットに頼る人が多かった。だが災害による不測の事態を想定して、デジタルに頼らない「代替手段」を確保しておくことも現代の防災対策としては重要だ。SNSやインターネットの情報では、真偽を見極める「デジタル防災リテラシー」の重要性も高まっている。「自信を持って見分けられる」と思っている人も普段と状況が違う災害時には冷静な判断ができない可能性があるので、日頃から情報を正しく取り扱うことを心掛けることも大切な災害対策といえる。
■ウェザーニューズ「減災調査2026」
・大震災の記憶と認識
・情報収集や連絡手段の実態
構成/KUMU







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