ケアeスポーツ
超高齢化が進む日本で、高年者の身体機能維持以上に「意欲の減退」が深刻な課題だ。予防のためと理屈を説いても、受動的なリハビリは長続きしない。この課題に対し、「ケアeスポーツ」は高齢者を守るべき弱者ではなく勝負の世界で生きるプレイヤーとして再定義し、解を示した。
なぜ、90代が最新の格闘ゲームに没頭するのか。本取り組みを主導するケアeスポーツ協会広報の浜進平氏は、成功要因を「リハビリ概念からの脱却」と解説する。
「導入してすぐ、これを機能訓練や認知症予防とするのは悪手だと認識しました。強制されたリハビリは苦痛な作業ですが、勝負となれば話は別です。『あの人に負けて悔しい、次は絶対に勝ちたい』。この感情こそが、明日への希望や能動的な意欲になるのです」(浜さん)
従来の高齢者ケアはリスク回避を優先し、彼らから挑戦の機会を奪ってきた。しかし彼らが潜在的に求めていたのは、「ヒリつくような勝負の手応え」だったのだ。悔しさは自己向上を諦めていない証拠であり生きがいの源泉ともなる。「勝ちたい」欲求があれば、IT機器への不慣れさやゲーム操作の理解に悩む〝デジタルディバイド〟の壁も容易に越えられる。
また、組織マネジメント観点でも示唆に富む。eスポーツという共通言語の前では、高齢者施設の職員と入居者の間に、家族のような良い関係性が作りやすくなるためだ。
「職員は管理者にならず、一緒に遊ぶ仲間であることが重要です。手加減なしの真剣勝負が、部活動のような一体感を生み、結果として職員の働きがいや離職防止にも繋がります」(浜さん)
高齢者施設内に限らず、オンラインでのコミュニケーション場があれば、在宅高齢者にも役割や競争の場を提供できるので、社会的孤立を防ぐソリューションだともいえる。シニア層を過剰に保護せず、対等なプレイヤーとして巻き込み、共に熱狂する。その先にこそ、持続可能な超高齢社会の新たなモデルケースがあるはずだ。
【DIMEの読み】
高齢者に限らず、障がい児や休職中の社会人等の社会的弱者へのケアや保護の常識が覆る。彼らがプレイヤーとして覚醒し、新たな市場が広がり、eスポーツが多世代交流の標準語になっていく。
国内eスポーツ市場規模は約200億円にのぼる規模

出典:一般社団法人日本eスポーツ協会「eスポーツの市場と推移」
特にシニア層は未開拓のブルーオーシャン。観戦だけでなくプレイヤーとしての参入が、広告収入などを通じ市場を底上げしていく。
60歳以上でも潜在的に10%ほどの人が興味アリ

出典:株式会社ネオマーケティング「シニアのeスポーツに関する調査」
機会があればやってみたいシニア層をどう取り込み、社会に波及させるか。シニア層のハードルを下げる環境作りが、興味がある人を増やし、ビジネスチャンスに直結する。
高齢者住宅等の入居者と職員との一体感が自ずと作られやすい

面会に来た家族が、職員とゲームに熱狂する親の姿を見て驚き、共通の話題で会話が弾むなど予想外のコミュニケーション効果も。
勝負の世界に年齢は関係なく、本気でぶつかりあって楽しむ

「ボタンを押せば画面が動く直感的なUIは、高年者のハードルを下げ、想像以上に前向きにプレイし熱狂してくれます」(浜さん)
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取材・文/久我吉史 編集/轡田緒早







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