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なぜ、自治体がボードゲーム?福井県庁発「協力型ボドゲ」が教育現場で注目される理由

2026.04.11

顔と顔を合わせて卓上で駆け引きやコミュニケーションを楽しむ「ボードゲーム」(以下、ボドゲ)の人気が、20〜30代を中心に右肩上がりだ。ボドゲ専門家の安藤哲也氏によると、国内では2019年頃からステイホーム需要でヒットし、市場は約3倍に拡大。日本最大規模のアナログゲームイベント『ゲームマーケット』には1300もの出店者がいる。

このトレンドの波に乗り、近頃では自治体発の〝学び〟目的のボドゲが誕生し始めているという。楽しみながら、地域のことを学べるボドゲとは、一体どのようなものなのか?

今回は、福井県庁が発信する、SDGsをテーマにした『ふくい温暖化クライシスボードゲーム』にフォーカス。企画者である福井県庁 SDGsディレクター(製作当時)北川愛子さんと、製作者の「ちゃがちゃがゲームズ」新出純一さんに話を伺った。

福井県でSDGsのボドゲが誕生したワケ

ボドゲと一口に言っても、さまざまなテーマのものがある。その中でも、なぜ福井県で、SDGsのボドゲが誕生したのか?

北川愛子さんによると、ことは2021年にさかのぼる。

福井県庁・北川愛子さん

「福井県では、令和3年度(2021年)に内閣府の「SDGs未来都市」に選定され、福井の未来を担う次世代の育成を目標にした『ふくい未来人材育成プロジェクト』に取り組んでいます。

これは、SDGsの達成に寄与する活動を行う企業や団体、学校などが官民一体となって協力し、それぞれがもつ技術やノウハウ、ネットワークを活かしながら、子どもたちが学べるプログラムをつくっていくもの。豊かな自然など、よいところを残して、若い方々から選ばれる福井県を目指して活動しています」(北川愛子さん)

2025年、北川さんは、福井県のSDGsの旗振り役としてSDGsディレクターに就任した。

「わたしが就任する前に行われていた出前授業のプログラムは、その場限りでプロジェクトが終わっていました。せっかく民間の方々と協力できる貴重な機会です。参加してくださっている皆さんの成長になりつつ、形に残る、ずっと長く使ってもらえるものを作りたいと考えました。

そんなとき、SDGsにまつわるボドゲを体験する機会があって。これだ!と閃いたんです」(北川愛子さん)

『ふくい温暖化クライシスボードゲーム』とは?

だがしかし、ボドゲを作るといっても、北川さんはボドゲ初心者。プレイしたのは一度で、作ったことはもちろんない。

そこで得意な人を巻き込もうと、パートナー企業や団体に声をかけ、制作チームとして10名を招集。さらに課内に声をかけると、ボドゲ好きな職員から「ちゃがちゃがゲームズ」の名が挙がった。

ボドゲ制作のチーム。年齢も職種もさまざまだ。

「『ちゃがちゃがゲームズ』は、福井に拠点を置き、さまざまなボドゲを手掛けていらっしゃると教えてもらいました。地元の方と作りたいと思っていたので、声をかけたら、代表の川口さんから即お返事をいただいて。お会いしてすぐ、おもしろそうとご快諾いただき、とんとん拍子に新出さんや川口さんと制作することになりました」(北川愛子さん)

2001年からボドゲを制作している「ちゃがちゃがゲームズ」新出純一さん。

当時のことを、「ちゃがちゃがゲームズ」新出純一さんはこう振り返る。

「北川さんから最初に言われたのは、ファシリテーターがいなくても、お子さんでも誰でも気軽にプレイできること。そして、SDGsを表現するという意味でも、みんなで協力して解決できること。ひとりでは達成できないボドゲにしたいというご希望がありました」(新出純一さん)

「そもそもファシリテーターがいないとプレイできないというのは、手間もお金もかかります。ゲームをするたびにファシリテーターを呼ぶとなると、持続的な活用が難しくなってくる。だからファシリテーターがいなくても、誰でもプレイできるボドゲにしたかったんです」(北川愛子さん)

そうして出来上がった『ふくい温暖化クライシスボードゲーム』は、地球温暖化の危機を参加者で一丸となって解決する、協力型のボドゲだ。

ルールはシンプル。各プレイヤーは福井県の市や町の「温暖化対策リーダー」となり、福井県の地図を模したゲームボード上で自分のコマを移動しながらSDGsアクション(アイディア)カードを2つ集めることで担当する市町の課題を解決する。

毎手番に1回、温暖化が進行する「温暖化進行サイコロ」をふる。課題を放置していると、温暖化がどんどん進行してしまう!
刻一刻と上がり続ける温暖化進行ゲージが上がり切る前に、全員で5つの課題を解決せよ!
SDGsアクションが書かれたカード

しかし、一人だけで解決しようとすると時間がかかり、刻一刻と上がってゆく温暖化進行ゲージによって福井は滅亡してしまう。つまり、解決のカギは「協力」というわけ。ちなみに個々の勝ち負けがないので、一緒に遊んだみんなが仲良くなれるのも『ふくい温暖化クライシスボードゲーム』のよいところだ。

「一度ルールを覚えれば、子ども同志でも遊ぶことができますよ。SDGsについての深い理解という意味で、対象年齢は10歳以上に設定していますが、ルール自体はシンプルです。1ゲーム20分で終わるので、ワークショップや授業、ご家庭での遊びなど、幅広く世代問わず遊んでいただきやすいと思います」(新出純一さん)

また、『ふくい温暖化クライシスボードゲーム』には、福井県らしさやSDGsゲームならではのこだわりも詰まっている。

例えば、木の温もりを生かしたコマは恐竜の形にして、日本最大の恐竜化石発掘現場であるご当地の魅力を表現。また、SDGsカードにも、越前蟹、恐竜、若狭フグなどといった、地域ごとにちがう5つのコンテンツを入れている。さらに、福井県の地図になっているボードを行き来することで、「プレイした子どもが地域の名前を覚えてくれたら」と北川さんは考える。

愛らしい5色のコマ。
県民にとって、親しみのある市町が舞台だ。

もう一つが、SDGsカードのイラストだ。5つのコンテンツごとに、それぞれちがう福祉施設で働くイラストレーターにイラストを描いてもらい、説明書には製作者のペンネームや施設の連絡先も入れている。これにより「仕事につながれば」と北川さん。

「この絵を見た人から仕事につながれば」

ふるさと納税の返礼品にも

自治体ボドゲの中でも、『ふくい温暖化クライシスボードゲーム』がすばらしいのは、誰でも購入でき、プレイできるところだろう。

というのも、多くの自治体ボドゲは地元の魅力を楽しみながら学んでもらうためのツールとして、地域の学校や街のイベントなど、クローズドなシーンでのみ活用されているからだ。つまり遊んでみたかったら、その土地にいかねばならない。

「せっかくつくったボドゲですし、継続的に遊んでもらうには、やはり活用範囲が広がってこそ。新出さんのご協力もあり、Amazonでも販売していますし、ふるさと納税の返礼品にもしているんですよ。

環境に対する意識の高い方はもちろん、ボドゲ好きな方にも遊んでいただいて、実はSDGsの要素も入っているんだと気づきに繋がればいいですね」(北川愛子さん)

また、『ふくい温暖化クライシスボードゲーム』の出前授業に関するマニュアルは残してあるとのこと。つまり万が一、北川さんが異動になったとしても、後任者にスムーズに引き継げるのだ。

「今後は、『ふくい温暖化クライシスボードゲーム』の遊び方の選択肢を増やしたい」と北川さんは目を輝かせる。遊び方が創意工夫次第で広がるのも、アナログなボドゲならではのよさだろう。

気になった方は、『ふくい温暖化クライシスボードゲーム』のHPをチェックしてみよう! ボドゲを通して福井の魅力を知ることができるにちがいない。

ふくい温暖化クライシスボードゲーム
https://boardgames.al-design.jp/fukuon/

取材・文/ニイミユカ

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