ステーブルコインが大注目されている。
ステーブルコインはビットコインやイーサリアムのような暗号通貨、とする解説はかなり乱暴だ。そもそも、役割が異なる。ステーブルコインは法定通貨や現物資産と常にペッグされることが設計され、ビットコインのように投機的な購入には全く不向きである。日本円連動のステーブルコインの場合、1円=1ポイントが堅持される。
故にこれは、日本では資金決済法により「電子決済手段」と位置付けられ、暗号通貨とは別のカテゴリーに置かれている。そんなステーブルコインを活用する実証実験が、全国で実施されるようになった。
マイナンバーカードをタッチ対応デビットカードのように利用する

今年1月23日、24日にかけて、福岡県福岡市の照葉積水ハウスアリーナでステーブルコインを使った小売決済の実証実験が行われた。
これはPR TIMESで詳しいプレスリリースが配信されている。配信日は2026年1月16日。
三井住友カード株式会社(本社:東京都江東区、代表取締役 社長執行役員 CEO:大西 幸彦、以下「三井住友カード」)と、マイナウォレット株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:橘 博之、以下「マイナウォレット」)は、マイナンバーカードを活用したステーブルコイン決済の社会実装に向け、連続的な実証実験プログラム(以下「本プログラム」)を共同で開始します。
(中略)
連続実証実験プログラムの第一弾として、福岡市およびライジングゼファーフクオカの協力のもと、2026年1月23日、24日に開催されるライジングゼファーフクオカのホームゲームの会場にて、マイナンバーカード×ステーブルコイン決済の実証実験を実施します。
実証実験の内容(予定)
●実施場所:照葉積水ハウスアリーナ(福岡市東区香椎照葉6丁目1-1)
●決済端末:三井住友カードのstera端末
●ユーザー認証:マイナンバーカードおよび公的個人認証(JPKI)
●決済手段:ブロックチェーン上に発行されている日本円連動型ステーブルコインJPYC を用いた、マイナンバーカードによるタッチで決済
●利用イメージ:
▪マイナンバーカードを用いてユーザー登録した来場者にJPYCを付与し、来場者が会場の売店等でstera端末の画面上で金額を確認して、マイナンバーカードをかざし決済を実行
▪裏側では、ブロックチェーン上でステーブルコイン残高の移転を実行
(三井住友カードとマイナウォレット、マイナンバーカードを活用したステーブルコイン決済の連続実証実験を共同で開始 PR TIMES)
何と、マイナンバーカードをタッチ対応デビットカードのように使うという方向性の実証実験である。
「なら、最初からクレカタッチ決済を使えばいいのでは?」という声もあるだろうが、ステーブルコイン決済の店舗手数料はクレカのそれに比べて非常に安く抑えられることで知られている。中には「店舗に課す手数料は無料」としている決済プラットフォームも。
クレカを始めとするキャッシュレス決済利用手数料は店舗にとっては負担以外の何物でもなく、近年の世界情勢を考慮してキャッシュレス決済の対応を注視してしまう店舗すら存在する。穀物価格や原油価格が上がれば、店頭に並ぶ商品の価格も上がる。それを少しでも抑制するため、現金決済のみの対応にせざるを得ない……ということがここ数年で相次いでいる。
筆者がこの記事を書いている今も、アメリカ軍とイスラエル軍がイランを攻撃している。イラン革命防衛隊がホルムズ海峡を封鎖し、各国の友好度を5段階に分けて通過を認めるかそうでないかを決めるという報道もある。
そして先ほど、商船三井の船舶がホルムズ海峡を通過したというニュースが飛び込んだ。良かった、これで日本のシーレーンは安心……などと言ってはいられない。情勢が不安定なことには一切変わりなく、日本船籍の船の海峡通過が原油価格の下落につながるとは到底思えない。
つまり、「店舗手数料の低廉化」は既に既定路線となっている……ということだ。
既に実施されている「地方都市での実証実験」
2024年11月13日、マイナウォレット株式会社はPR TIMESで『新潟県長岡市山古志にてマイナウォレットの実証実験を実施』という題のプレスリリースを配信した。
a42x株式会社(本社:東京都)は、新潟県長岡市山古志地域において、マイナンバーカードをデジタル資産ウォレットとして活用するサービス「マイナウォレット」を用い、ステーブルコインによるタッチ決済のフィージビリティ検証を行いました。
ブロックチェーン技術を用いたステーブルコインや NFT(Non-Fungible Token)は、お金や権利などの「価値」をデジタルで扱う新しい手段として注目されており、その応用性や相互運用性により、特に DX(デジタルトランスフォーメーション)を促進する技術として期待されています。
一方で、DX の推進には一般的に専用アプリや設定の複雑さが障壁となり、特に小さな子どもや高齢者には利用が難しいという課題があります。そこで、a42x株式会社では、広く普及しているマイナンバーカードをタッチするだけでデジタル通貨のチャージや決済が可能な仕組みを開発することで、このような課題を解決し、誰もがステーブルコイン等のデジタル通貨を利活用できる社会の実現を目指しています。
(新潟県長岡市山古志にてマイナウォレットの実証実験を実施 PR TIMES 太字は筆者)
このような内容の実証実験を、一昨年に実施しているという事実に我々はもっと注目すべきである。
ステーブルコインの発行アプリをウォレットアプリに紐付けして、利用するブロックチェーンネットワークを自分で選択して……などということは、デジタル機器の利用が苦手な人には困難だ。しかし、マイナンバーカードを使ってステーブルコインを簡単にチャージできる仕組みが確立すればどうだろうか? 話は大きく変わってくるはずだ。
ステーブルコインは、日本の法的区分においては暗号資産(仮想通貨)とは全く異なる。それは下の図(『暗号資産制度について』金融庁)にある通りだ。
ステーブルコインは「電子決済手段」であり、投機的な時価変動がある代物では全くない。金融庁の厳格な審査を経た上でそう認定されるもので、極めて大きな重みがある(が、それを理解していない会社経営者も見受けられる……)。
そう、これは「現金」なのだ。「電子化された現金」という表現はややこしいかもしれないが、しかし「価値は法定通貨とペッグする」仕組みは日本の大都市経済圏だけでなく——いや、むしろ地方部こそこのような仕組みが求められているはずだ。
2030年代を見据えるなら
さらに先の未来を考えた時、個人への給付金や助成金、税金の還付などもステーブルコインで受け取れるという光景もあり得るのではないか。
そして、それは最初からマイナンバーカードと紐付けされている。つまり、給付金を受け取った直後からマイナンバーカードを使ってキャッシュレス決済ができるという構想が存在し、それは仕組みとして少しずつ確立されていくはずだ。
マイナンバーカードが交通系ICカードのようになっていく、ということも考えられるだろう。
たとえば、自治体が高齢者に対する交通給付金を捻出する段になった時、それをマイナンバーカードと紐付けのステーブルコインにすればどうか。対象の人にスムーズかつ確実な給付が可能になるはずだ。煩雑な公的給付のプロセスを単純明快にできるだけでなく、それにかかるマンパワーを削減する効果も見込めるだろう。
残念ながら、2026年の現在では自治体に余力は——予算面でも人員面でも——あまりない。もうじき訪れる2030年代を見据えた時、ステーブルコインは「地域のDX化」に必要不可欠なパーツであると理解することができる。
上に挙げた形の実証実験は、今後全国各地域で続々と企画されるはずだ。
参考
三井住友カードとマイナウォレット、マイナンバーカードを活用したステーブルコイン決済の連続実証実験を共同で開始 PR TIMES
マイナウォレットにおける公的個人認証活用イメージ デジタル庁
新潟県長岡市山古志にてマイナウォレットの実証実験を実施 PR TIMES
暗号資産制度について 金融庁
文/澤田真一
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