ホンダの2ドアスペシャリティカー「プレリュード」が24年ぶりに復活した。私の友人や同級生たちの中には、初代「プレリュード」や2代目、ヒットした3代目などに乗っていた者も少なくないので、とても懐かしい。
いよいよ、2023年秋のジャパンモビリティショーでコンセプトカーが初公開され、2025年1月の東京オートサロン2025の「Honda SPORTS プレスカンフ…
とはいえ、24年も経っているので、懐かしがってばかりもいられない。6代目になる新型は「プレリュード」を名乗るものの、昔の「プレリュード」とはずいぶんと違っているのだ。
機械として優れているか? ★★★★ 4.0(★5つが満点)
まず、ボディが違う。歴代の「プレリュード」はみなノッチバックの3BOXタイルで独立したトランクを備える形をしていた。新型はハッチバックの2BOXで、テールゲートを開けて荷物を出し入れする。新型のほうがユーティリティが高いから、好都合なのは理解できるけれども、それだったら24年も経ってわざわざ「プレリュード」を名乗る必要はない。あえて「プレリュード」なのだから、5代目まで続けてきたことを大切にしてほしかった。
しかし、その点は措いておいたとしても、この時代に2ドアクーペを造ったことは高く評価したい。日本車メーカーによる2ドアクーペは実に久しぶりだ。それだけで大きな価値がある。税込みで617万9800円~648万100円という価格は、昔の若者のように競って買っていたようにはいかないだろうけれど、中高年になって余裕がある人には向いている。だからがゆえに、ボディの形式が変わってしまったのが個人的には残念である。素直に懐かしがれない人もいるのではないだろうか。
当然、パワートレインも様変わりした。新型は4気筒エンジンに2基のモーターとバッテリーを組み合わせたホンダ独自のハイブリッドシステム「e:HEV」が採用されている。前輪を駆動する点は変わらない。空いたワインディングロードで運転に集中して走っている時のプレリュードは素晴らしいのひとことに尽きる。走るほどクルマとの一体感が強まっていく。まさに「意のままに」運転できるのだ。
それでいながら乗り心地などとはバランスが取れていて、快適性も確保されている。「SPORT」「GT」「COMFORT」「INDIVIDUAL」という4つの走行モードのどれを選択しても、スムーズな路面での良好な乗り心地は変わらなかった。
ただ、荒れ気味の舗装の上を走るとタイヤと、路面が発するゴーッというノイズが一気に高まって、車内に大きく入ってきた。また、路面上のハンプや舗装のつなぎ目などを通過すると、そこからの瞬間的なショックを抑えきれずに車内に強く伝わってきていた。心地良さのためには路面を選ぶようだ。
ハイブリッドシステムやトランスミッション、サスペンションなどは「シビック タイプR」などの既存のホンダ車をベースとしているところが多いが「プレリュード」独自のものとして設けられているのが「S+Shift」という制御技術だ。シフトスイッチの横で目立っているボタンで操作する。
「プレリュード」のトランスミッションは2基のモーターを組み込んだCVTだから、無段で変速していく。モーターと接続されている相乗効果もあって、きわめてスムーズに変速していく。しかし、それでは面白くないと不満を抱く人のために、この「S+Shift」が開発されたのだろう。8段の変速が行われたかのようにエンジン回転数をコントロールし、従来タイプのMTの変速機の段があるかのようなダイレクトな駆動レスポンスと変速感を演出している。
併せて、エンジン回転数と同期したサウンドをスピーカーから流す「アクティブサウンドコントロール」システムや、コースティング制御なども採用している。いじらしいまでのエンジン車時代の運転フィーリングへの執念と執着だ。たしかに「S+Shift」は狙い通りに仕上がっていて、面白い。ただ、最初は面白がれるが、ずっと楽しめるかは疑問が残った。燃費が良くなるとか、静粛性が向上するなどの効能がないので、ギミックの要素が強い。それも、面白かったとしてもドライバーだけの面白さだ。同乗者には何ももたらされない。
商品として魅力的か? ★★★3.0(★5つが満点)
「プレリュード」のシフトスイッチは、最近のホンダ車に共通するもので、これが使いやすく、操作間違えしにくく優れている。使い慣れてると、従来型のレバーやボタンなどには戻れなくなるだろう。だが「プレリュード」の操作系統には難点も備わっている。ADAS(運転支援機能)の作動状況を示すメーターパネル上の表示が小さいまま切り替わらないことだ。これは他のホンダ車にも共通している古いところ。
他にも、安くはない車両価格にもかかわらず手動で調整しなければならないシートや、その掛け心地が芳しくないことなども不満点だった。AppleのCarPlayをBluetooth接続できる点は他車並みに便利で、Googleアシスタントやマップ、プレイなどが使えるのも助かる。ただ、他に用意されているアプリが少ないのは寂しい。
新型「プレリュード」は6代目として復活し、ヒットした2代目と3代目にならって「令和のデートカー」を標榜している。
「デートカーといっても、恋人同士に限らず親子だったり友人同士だったり相手はさまざまであることを想定しています」と開発責任者・山上智行氏は新型「プレリュード」に込めた新しいイメージについて説明していた。誰かと一緒に乗った時に喜びを共有できるクルマということだ。その例えは令和らしく、よく理解できた。
理解できたが、その通りに「プレリュード」が仕上がっているかどうかはわからなかった。操縦性や走行性能などが素晴らしいことは体感できた。しかし、それを享受できるのはドライバーだけだ。助手席の人には関係ない。素晴らしい性能や走りをドライバーが堪能すればするほど、同乗者は蚊帳の外に置かれてしまう。「S+Shift」など、その最たるものだ。ドライバーと同乗者の二人が主人公のはずなのに、ドライバーとクルマが主人公になってしまう。
普通の道を普通に走っている時の快適性と利便性を高め、移動している時間を充実させるのが「プレリュード」の、そしてデートカーの大切な役割のはずである。
■関連情報
https://www.honda.co.jp/PRELUDE/
文/金子浩久(モータージャーナリスト)







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