高速道路の「完全キャッシュレス化」は、可能性としてあり得ることだろうか?
現在、各地の高速道路のICでは「ETC専用化」が進められている。現金やクレジットカードでの支払いができる一般レーンを廃止し、ETCレーンのみの整備に踏み切るICが多く登場するようになった。
一見、大幅の利便性が導入されるようになったかに見えるこの現象。しかし、よく考えてみれば現行のETC車載器は2030年に使えなくなってしまうのではなかったか!?

全国各地に「ETC専用料金所」が次々と
1月29日、JAHIC日本高速情報センターはこのような記事を配信した。『【首都高】ETC専用入口を拡大へ 2026年度に44箇所、永福本線料金所も撤去方針』というタイトルである。
首都高速道路株式会社は、ETC専用入口の拡大を進めるとともに、中央自動車道と接続する4号新宿線の永福本線料金所を撤去する方針を示しました。
ETC専用化による安全性・快適性の向上に加え、本線上の料金所撤去によって慢性的な渋滞解消が期待されています。
(【首都高】ETC専用入口を拡大へ 2026年度に44箇所、永福本線料金所も撤去方針 JAHIC日本高速情報センター)
中央自動車道から4号新宿線に至るルートは、「東京の大動脈」である。筆者は医学には全く明るくないが、心臓につながる血管が人体にとっては非常に重要であることくらいは知っている。
それに等しい部位にメスが入り、旧態依然とした非効率な血液弁を大改造しようという取り組みが首都高速では既に始まっているのだ。
さらに、西日本でも同様のことが起きている。以下はNEXCO西日本がPR TIMESで配信したプレスリリースだ。
NEXCO西日本(大阪市北区、代表取締役社長:芝村 善治)は、新たに30料金所をETC専用料金所として令和8年3月17日から4月8日の間で順次運用開始しますので、お知らせします。
(令和8年春から新たに30料金所がETC専用料金所になります PR TIMES)
これは関西・中国・四国・九州の広いエリアの料金所がETC専用になるもので、今後はキャッシュレス化による交通のスムーズ化が期待される。
2030年「頃」という表現
COVID-19によるパンデミック以前、日本は「キャッシュレス後進国」と言われていた。
しかし、ことETCに関しては世界の最先端を行っていた。日本から海外に密輸された盗難車が、現地で転売後もETC車載器をつけているためETCカードの挿入を求める電子音声が鳴り響く……ということもあるそうだ。また、海外でもETC車載器のついた車がより高く売れるという。現地でETCを使うというわけではなく、車載器自体が「これは正真正銘の日本車」ということを裏付けるからだ。
我々日本人と日本在住者の身近に、ETCはある。が、そんなETCの一部が2030年から使用できなくなってしまうという話がある。そのために「多くの車のETC車載器は、今後数年以内にそれを更新しなければならない」というような噂も。
結論から言えば、その噂はいささか曲解されている。
これは、ETCのセキュリティ規格の変更に伴う措置で、NEXCO東日本の公式サイトにはこう書かれている。
ETCにおいてお客さまの決済情報を将来にわたり安全に保護するため、セキュリティ規格の変更を最長で2030年頃までに行う予定です。
将来実施されるセキュリティ規格の変更に対応した新セキュリティ対応車載器が既に販売されております。
車載器管理番号および識別マーク等により、現在お使いのETC車載器が新セキュリティ規格に対応しているかご確認下さい。
(ETCセキュリティ規格の変更について NEXCO東日本)
この問題に関して、国土交通省の公式サイトでは以下のような見解が掲載されている。
将来実施されるセキュリティ規格の変更とは具体的にいつか?
具体的な時期は未定ですが、現行のセキュリティ(車載器、カード)に問題が発生しなければ最長で2030年頃までとなる予定です。ただし、セキュリティに問題が発生した場合は、変更時期が早まる可能性があります。
(よくあるご質問 国土交通省)
NEXCO東日本と国交省とでやや言い回しが異なる点はどうしても気になってしまう。また、「2030年頃」という具合に具体的時期を断定していない。「最長で2030年頃」とすると、2032年も可能性として考えられるということか。
官僚的言い回しを気にかけつつ、ここからは「新・旧セキュリティ対応車載器の識別方法」を見ていこう。これについては、国交省がPDF資料を公開している。
その中の一つ、「●●●」のマークがあるかどうかは一番簡単な見分け方だ。
上は筆者のダイハツ・初代コペンのETC車載器。パッと見、「●●●」のマークは見当たらない気がするのだが……。そこで次に車載器管理番号を確認する。19桁の始まりの番号が「1」であれば新規格、「0」であれば旧規格だそうだ。なるほど、分かりやすい!
「ある日突然使えなくなる」ことはあり得ない!
上の話を蒸し返してしまうようだが、やはり「最長で2030年頃」という言い回しが筆者としては非常に気になる。
筆者は、@DIMEとは別のメディアでGovTech(行政のデジタル化)に関する記事を執筆していた。そのメディアの編集部で散々叩き込まれたのが、「官公庁が公開するPDF資料の探し方」である。その仕事を通じて筆者は、日本の民主主義とは基本的に問題提起→有識者会議→たたき台作成→パブリックコメント募集という流れを踏むことを骨の髄まで知った。中国やロシアのように、指導部の命令で呆気なく法改正できるような仕組みにはなっていない。
もしも旧規格のETCを特定の日時に使用不能にするとしたら、その前段階としての議論やパブコメ募集を国交省が行うはずだ。そこで「新規格ETCを購入するための補助金」の話が出てくる可能性も考えられる。
以上の理由から、2030年というタイムリミットを過度に意識して今すぐETC車載器を買い換える必要はないのでは……というのが筆者の意見である。
参考
【首都高】ETC専用入口を拡大へ 2026年度に44箇所、永福本線料金所も撤去方針 JAHIC日本高速情報センター
令和8年春から新たに30料金所がETC専用料金所になります PR TIMES
ETCセキュリティ規格の変更について NEXCO東日本
よくあるご質問 国土交通省
新・旧セキュリティ対応車載器の識別方法 国土交通省
文/澤田真一
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