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「モータースポーツの話が通じる人に初めて会った」関西唯一のモータースポーツバーに行ってみた

2026.03.30

大画面でスポーツを観戦できる「スポーツバー」が、ひそかな人気。バーの軒数も増加傾向で、いまや全国で約千店もあるという。

通常、観戦できるのは、サッカー、野球、バスケットボールといった球技がメイン。そのなかで、モータースポーツに特化したのがモータースポーツバーだ。

「モータースポーツバーって初めて聞いた」という方も多いかもしれない。それもそのはず、全国でも数は少なく、認知度はまだまだ低い。筆者の住む関西圏で探してみると、(完璧に精査したわけではないが)わずかに1軒しか見つからなかった。

その店の名は、ル・マン24時間レースのコーナー名にちなんだ「ミュルサンヌ」。大阪メトロの天神橋筋六丁目駅からほど近い、雑居ビルの2階にあるとのことでお邪魔した。

落ち着いた雰囲気の店内

応対に出たバーのマスターは、山口香さん。2012年のオープンからここを切り盛りしている女性店主である。

細長い店内は、カウンター席が10席あり、奥のほうに小さなテーブル席がある。天井からぶら下がる、タイヤの形をしたシェードを備えた照明が、あたりに薄暗い光を放っている。

カウンター向こうの壁には、2面の巨大なディスプレイが掛かっている。開店前の訪問なので画面はオフになっているが、18時になると迫力あるレースの光景が映し出される。

山口さんによれば、やはり関西で現役のモータースポーツバーはここだけのようだ。過去に何店か開業したが、ほどなく撤退したという。

「日本では、あんまりモータースポーツって流行らないんですよね」と山口さん。リスクを負って店を立ち上げた理由をうかがうと、「他にこういう店はなかったから」とのこと。

もう1つの真の理由は、ご自身が「モータースポーツが大好きだから」。この世界に心底ハマって、「こうしたバーがあれば通い詰めたのに」と思っていたが、「それがないからつくった」というわけ。

モータースポーツの「話が通じる人」に会える

開業当初の山口さんは、元F1ドライバーのジャンカルロ・フィジケラの大ファン。今も店内に陳列されている未開封のミニカーは、フィジケラが乗っていたマシンがメインだ。

山口さんのモータースポーツ熱は、最初は F1のみに向けられていた。それから、オートバイのF1とされるMotoGPなどへと展開していく。店を運営してから、同好の士が増えたことが大きいという。お客様と一緒にレースを見に行く事もあるそう。

先日は、今年のワールドスーパーバイクの第1戦となる豪州GPの観戦に遠征したという。

ちなみに、F1のシーズンは毎年3月から12月までの長期にわたる。開幕戦の豪州GPの次は中国GP、そして日本GPとなる。

20を超える国々で連戦するというから、目まぐるしいが、4月の中東2か国は国際情勢により中止になった。そうした事態はあっても、F1の観客動員数は年々増加しており、昨年は670万人に達したとか。

そんなウンチクも聞けるのが、モータースポーツバーの良いところ。モータースポーツを酒の肴に会話する場所を求めて来る常連は多く、「ここに来て、話が通じる人に初めて会ったという方は結構いらっしゃいます」と、山口さんは語る。

もし、「ちょっと興味がある」なら狙い目は週末。どのレースも、たいてい週末しか開催されないので、この日にどっとお客さんが来店してくるからだ。

「流行らない」と、しょっぱなで打ち明けた山口さんだが、状況は変わりつつあるようだ。

「若い層のファンが増えている感じですね。Netflixのドキュメンタリーや映画でこの世界を知ったり、角田裕毅さんという日本人ドライバーが注目を浴びたり、追い風があります」

語らい合える居場所づくりに注力

何も注文しないまま話し込んでしまったので、ひとまずドリンクを頼む。出されたのは、ふつうのラガービール。だがグラスは、ル・マンのレース場で購入したレア物だ。このあたりに、店主のこだわりが感じられる。

「うちは、ドリンクとかそんなに凝ってないんですよ。とりあえずビールで、サッポロビールが一番飲まれています。代わりに、レースを観戦しながら、趣味の合うお客さん同士が語り合える雰囲気づくりを大切にしたいですね」

ここならではの企画として、店では不定期のイベントを行っている。先日は、「カメラマンが見るモタスポの世界」というトークイベントを開催。レース専門のカメラマン3名が来店され、盛り上がったという。

最後に山口さんは、初心者がモータースポーツを楽しめるコツを教えてくれた。それは、推しのチームやドライバーを見つけること。

日本国内では、毎月のように何かしらレースが開催されているので、試しに行ってみて、お気に入りを探す。ひとつでも見つかれば、「すごく楽しくなり」、また行きたくなるし、観戦仲間もつくりやすい。そうして輪が広がってきたら来店し、さらに輪が広がる好循環が生まれる。そのための場として、ミュルサンヌを利用してほしいそうだ。

取材協力/ミュルサンヌ
公式サイト:https://mulsanne.amebaownd.com
Instagram:https://www.instagram.com/msbmulsanne
X:https://x.com/msbmulsanne

取材・文/鈴木拓也

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老舗翻訳会社役員を退任後、フリーランスの仕事人となる。ライターとして手掛けるテーマは、トラベル、ガジェット、著名人取材、アートなど幅広い。また、クリエイターとしての活動にも力を入れている。ライフワークは秘境と神社仏閣めぐりで、撮った写真をInstagramに掲載している。 https://www.instagram.com/happysuzuki

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