WBCでは惜しくもベネズエラに敗れた侍JAPAN。その興奮冷めやらぬ中、春のセンバツが間もなく開幕、その後はプロ野球やメジャーリーグの開幕と、まさに球春が到来する。
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本記事では、メジャーリーグベースボール(以下、MLB)でもプレーした五十嵐亮太さんに、投高打低や若くして球界を去る選手が増えている背景について、特に評価する選手の詳細とともに話を伺った。

野球解説者
五十嵐亮太さん
1979年生まれ、北海道出身。千葉・敬愛学園を経て、1997年にヤクルトスワローズに入団。2004年に最優秀救援投手を受賞。MLBの4球団やソフトバンクなどでのプレーも経て、現役引退。現在は野球解説者として活躍中。
投手のデータ活用が進む近年投高打低の傾向が顕著に
2025年はセ・パ両リーグ合わせて3割打者がわずか3人(規定打席到達者)。極端な投手全盛時代が到来している。その背景を五十嵐さんは次のように語る。
「投手のレベルが上がっているのは間違いありません。トラックマンやホークアイなど最新の測定機器が導入され、投手が自分に合った球種やフォームを分析・追求できるようになりました。トレーニング面の進歩もあり、投手の平均球速も上がっています」
近年では回転数や回転軸など、球の質が数値化される。
「現役時代、上原浩治さん(元巨人ほか)が僕より球速が遅いのに、空振りを取れるのが不思議だったんです。でも今なら『スピン量が多いから』と説明ができるようになりましたから。そんな環境での投手の成長スピードに、打者が追いつけていない印象があります」
今後も投高打低の時代は続くのか。MLBでの経験もある五十嵐さんはこんな見方をしている。
「MLBでは投手の球の速さや変化球の軌道を再現するピッチングマシンが、全球団に導入されています。一流投手の球にいきなり対応するのは難しいですが、事前にイメージできるのは大きい。このマシンが日本でも浸透すれば、おもしろくなると思います」
なお、投手だけに限らず、日本人打者の考え方についてもアップデートが進んでいる模様だ。
「近年は打率よりOPS(出塁率+長打率)を追求する打者が増えて、アベレージヒッターでも長打率を上げようと肉体強化している選手も多くなりました」
投手にやられっ放しではいられない。打者の逆襲に期待しよう。
投打の成績比較


2016年を見ると、チーム打率.250以上が9球団あったのに対し、2025年は.250未満が9球団に。それに相反するようにチーム防御率は約10年で大きく良化。7球団が2点台の防御率(1試合当たり3点未満)に。投高打低が明らかに進んでいる。
ここ数年は外国人強打者がなかなか活躍できない!?
かつては屈強な外国人打者が本塁打王を争った時代もあった。しかし近年はNPBで大成功する外国人打者が減った印象がある。
「NPB全体のレベルが上がったこともありますが、やはりMLBとの年俸格差は大きいです。MLBの最低保障年俸は78万ドル(約1億2000万円/NPBの1軍最低保障年俸は1600万円)。そこへ円安も絡んで、いい選手を呼ぶには高いコストが必要です。昔はマイナーとMLBを行き来する選手が『日本のほうが稼げる』と来日するケースが目立ちましたが、今は日本を選ばなくなっているように感じます」
そんな中、2025年はフランミル・レイエス選手(日本ハム)がパ・リーグ本塁打王に輝いた。
「パワーだけでなくコンタクト能力も高く、日本向きですよね。僕の古巣のヤクルトでは、ホセ・オスナ選手、ドミンゴ・サンタナ選手が長く活躍中です。彼らのように成功すべく、来日前から日本の野球にアジャストするため、情報収集する選手もいます」
戦力外&現役引退が低年齢化。高出力を求める風潮が原因!?
NPBが発表したデータによると、現役引退する平均年齢は2016年に29・6歳だったのが、2024年には26・3歳まで下がった。ドラフト上位指名で入団した選手でも早期に戦力外通告を受けるケースも目立つ。引退年齢の若年化はなぜ進んでいるのか。
「投手も打者も選手の出力が上がっているため、故障のリスクが大きくなっていると考えられます。投手は痛めたひじの靭帯を『トミー・ジョン手術』で再建し、1年以上も戦線離脱するケースが多い。それでも、プロの厳しい世界で戦う以上、選手はリスクを承知で出力を求めざるを得ないわけです」
故障者が出てしまうのは不可抗力にも思えるが、球団によって取り組み方に差があるという。
「キャンプを取材していると、阪神タイガースはストレッチの時間が長かった。藤川球児監督が、故障者を減らすために取り組んでいるのでしょうね。今は体のケアを個人に任せる球団も多いですが、もっとチームとしてケアに時間を費やしてもいいと感じます」
一方、故障者が続出しても、昨季の日本シリーズを制したソフトバンクのような例もある。
「故障者をカバーできる選手層の厚さも大事ですね」
五十嵐さんが特に評価する投手
福岡ソフトバンクホークス
リバン・モイネロ投手
キューバ出身のNPB最高峰左腕。昨季は12勝を挙げ、パ・リーグMVPに。「ストレートのスピン量と角度、カーブの変化量が素晴らしく制球もいい。何より故障をしないため、年間通して戦えるのが大きい」
北海道日本ハムファイターズ
有原航平投手
ソフトバンクに在籍した昨季は2年連続最多勝を受賞。今季から古巣・日本ハムに電撃復帰する。「先発として長いイニングを投げられるのが魅力です。調子が悪くても、最低限試合を作る技術があります」
北海道日本ハムファイターズ
伊藤大海投手
日本ハムの大黒柱。14勝を挙げた昨季は、投手として最高栄誉である沢村賞を初受賞した。「球種が豊富で、しかもすべての質が高い。ここ一番の大事な試合で力を発揮できる勝負強さも頼もしいです」
中日ドラゴンズ
松山晋也投手
屈強な体と反骨心を備える剛球クローザー。育成ドラフトで入団し、昨季は46セーブを挙げる大活躍を見せた。「ボールに強さと角度があって空振りを奪える。守護神にとって重要な要素を備えています」
五十嵐さんが特に評価する打者
福岡ソフトバンクホークス
近藤健介外野手
完全無欠の打撃職人。打撃主要タイトルの首位打者、本塁打王、打点王をすべて受賞経験がある。「NPBで一番の打者でしょう。コンタクト能力が高いし、投手からすると簡単に打ち取れない実に嫌な打者です」

近藤健介外野手
五十嵐さんが特に評価する若手選手
中日ドラゴンズ
金丸夢斗投手
キレのある快速球と総合力で勝負する先発型左腕。「体は大きくないですが、野球に真摯に向き合う姿勢が素晴らしい。WBCメンバーに追加招集されましたが、大会を通じて伸びてもらいたいですね」

金丸夢斗投手
東京ヤクルトスワローズ
鈴木 叶捕手
攻守に高い潜在能力を秘めた強肩捕手。高卒3年目で20歳という若さも魅力だ。「体の強さを持っていて、練習に取り組む姿勢もすごくいい。年間通して戦うタフさが出てくれば、1軍定着が見えてきます」
東北楽天ゴールデンイーグルス
宗山 塁内野手
甘いマスクで魅了する次世代のスター候補。昨季は新人ながら遊撃のベストナインに輝いた。「正確な遊撃守備もシュアな打撃もすでに一流のプロレベル。自分のビジョンがあり、球界を代表する選手になるはず」
セ・リーグがDH制を導入することでパ・リーグとの戦力差は縮まるか!?
かつて「人気のセ、実力のパ」と呼ばれたセ・パ両リーグ。昨季の交流戦では上位6チームがパ、下位6チームがセと、明暗が分かれた。なぜ両者に差が出るのか?「パは常にDH制のため、投手が打席に入るセと比べると強打者と対戦する機会が多い。そこで差が出ているのかも」と五十嵐さん。2027年からはセでもDH制が導入されるので格差は縮まるのだろうか。「急には難しいかもしれませんが、変わってくると思います」

取材・文/菊地高弘 撮影/藤岡雅樹 編集/田尻健二郎 写真提供/時事
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