WBCでは惜しくもベネズエラに敗れた侍JAPAN。その興奮冷めやらぬ中、春のセンバツが開幕、その後はプロ野球やメジャーリーグの開幕と、まさに球春が到来する。現在発売中の雑誌『DIME』5月号では、「超マニアック野球観戦ガイド」を大特集! 野球解説者に聞く観戦のポイントやYouTubeやデータを活用したディープな観戦術、各球団のマーケティング戦略やあだち充作品と甲子園との絆など、知れば観戦が10倍楽しくなる舞台裏を徹底取材した。
本記事では、日本プロ野球(以下、NPB)で今年から導入されるいくつかの新制度でNPBの試合はどう変わろうとしているのか。新制度の問題点を含めて、里崎智也さんの意見を伺った。

野球解説者
里崎智也さん
1976年生まれ。鳴門工高(現鳴門渦潮高)から帝京大を経て1999年から2014年まで千葉ロッテでプレー。正捕手として日本一2回、日本代表では2006年のWBC第1回大会(打率.409)で優勝に導く。引退後は野球評論家やYouTuberとして活躍中。
リプレーセンターが導入されても結果は今までと変わらない!?
昨年、プロ野球12球団と日本野球機構による理事会・実行委員会によって「リプレーセンター」を都内のNPB事務局内に設置することが決まった。今までは各球場で審判団が映像検証を行なっていたが、今シーズンから〝球場外の一括判定〟へと舵を切る。この導入について里崎さんは「遅いくらい」と指摘。先駆けてリプレー検証を実施済みのメジャーリーグベースボール(以下、MLB)の導入は2008年から。当初は本塁打の判定のみだったが、2014年からは適用範囲が拡大。アウトorセーフだけでなく細かい判定にも適用されることとなった。
一方、NPBでは2010年から本塁打のみの判定で導入され、2018年からは「監督が審判の判定に異議がある場合、ビデオ映像によるリプレー検証を求められる」新ルールが施行された。
数年遅れでNPBも追いついてきた感はあるが、実際は「あまり変化がないのでは」と里崎さん。
「MLBのように何十億円もかけてシステムや施設を構築するのではなく、観られる映像が今までどおりの中継映像のみで、ジャッジする人も審判員であるなら、現場の審判員からセンターの審判が判定するというかたちに変わっただけではないでしょうか」
こうしたビデオ判定は、むしろ高校野球の試合こそ導入を急ぐべきだと力を込める。
「地方大会のベスト4ぐらいからは、どの都道府県でもテレビ中継が入るわけだし、できる範囲でビデオ検証をやったほうが、正直、審判が救われると思います。今は甲子園でも審判が誤審で叩かれる時代。選手を守るというより、審判を守るためにも必要です」
ペナントレース1位チームのCS突破率が90%以上に!?
2007年から始まったクライマックスシリーズ(以下、CS)の制度変更の議論も進んでいる。主に、レギュラーシーズンの1位チームに与える優位性を高めようという方針だ。しかし里崎さんは「全く意味がない」と一刀両断する。
「CSの開始から約20年間のうち、日本シリーズに進出した確率(セパ合算)は、レギュラーシーズン1位が平均80%、2位以下は約20%。これは公平性とエンタメ性の両立する最高の割合だと思います。2位以下の割合が20%を下回ると『下剋上があるかもしれない』というドキドキ感がない。しかも95%くらいの可能性で 1位が突破する仕組みならCS自体やらなくていい。なお、セ・リーグで3位以内のチームが勝率5割を下回るケースは、往々にして(パ・リーグとの)交流戦で負け越した結果を入れているだけですから。そこまで考えて議論されているのかどうか。考えが全部浅く感じます」
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牽制回数が3回に制限され100盗塁する選手も!?
すでに国際試合などで使われているピッチクロックをNPBの試合に導入するうえで最大の論点になっているのが「投手から走者への牽制球を3回まで」の付随ルールを容認するかどうかだと里崎さんは言う。
「これを〝呑めない〟なら、ピッチクロックだけを導入しても、時間が来れば(走者なしで15秒以内/走者ありで18秒以内)プレートを外してリセットすればいいだけとなり、形骸化してしまいます(つまり牽制制限があることでプレートを何度も外せず、時間内に投げなければならない)。逆に牽制制限を導入すれば(結果的に牽制死の可能性が低まり)、走者は走りやすくなる。導入後のMLBでは捕手の盗塁阻止率が下がりました。NPBの試合で導入したら、年間100盗塁できる選手も複数出るのでは?」
ピッチクロック導入の主目的として言及されがちな〝試合時間の短縮〟を実現したければ「今すぐでもできる」と里崎さんは言う。
「イニング間の花火やダンスなどのパフォーマンスをやめて、高校野球のようにテンポよく進めれば、10~15分は縮められますから」
エンタメを削ってでも時間を短縮するか。それも含めて興業と考えるか。確固たる信念や方向性のもとに議論が進むべきだろう。
リプレーセンターの導入
[現状]
判定を下した各球場の審判団がテレビ中継用の映像をもとに検証する
[今季から]
リプレーセンターの審判員が遠隔で映像を検証して判断を下す
リプレーセンターとは各球場と別の拠点に設けられる判定検証専用施設のこと。ビデオ判定(リクエスト)があった際、2人の常駐審判員が各球場から送られてくるテレビ中継の映像を複数のモニターで確認し、最終的な判定を下す。いわば中央集約型へと移行することによって、判定の迅速化と公平性の確保を目指す仕組みである。MLBではすでに導入されており、今季から日本でもその流れに追随するかたちとなった。

昨季、リプレー判定について大きな問題となったのが、5月27日開催の東京ヤクルトスワローズと中日ドラゴンズの試合。中日・川越誠司選手が放った打球は、外野スタンドに入ったようにも見えたもののファールの判定に。リプレー検証でも覆らず、現行制度への不満がファンを含めてより高まった。
CS制度の見直し
【1】ファーストステージに勝率5割未満のチームが進出した場合
→1敗のディスアドバンテージ
→3勝勝ち上がり制に
【2】各リーグ優勝チームが2位以下に10ゲーム差以上のつけた場合
→2勝のアドバンテージ
→5勝勝ち上がり制に
NPBがCSの制度変更を検討している背景には、レギュラーシーズンを大差で優勝したチームがCSで敗退するケースがあり、シーズンの価値をより反映すべきとの声があるから。優勝チームへのアドバンテージ拡大や、勝率・ゲーム差に応じた優位性の調整などが議論の中心で、早ければ今季からの導入を検討している。

過去約20年を見てみると、セ・パの上位3チームは実力が拮抗しているケースが多く、3位のチームが日本シリーズに進出した際は上位とのゲーム差が5以内だった。なお、昨年に行なわれたCSの試合は白熱。特にセ・リーグ1stステージ 第2試合は壮絶なシーソーゲームに。球場は大いに盛り上がった。
ピッチクロックの導入を検討

具体的な付随ルールは「投手は球を受け取ってから走者なしの場合は15秒、ありの場合は18秒以内に投球を始めなければいけない」「打者は残り8秒になるまでに打撃姿勢を完了しなければいけない」といった内容だ。投手・捕手のサイン交換も迅速に行なう必要があり、ピッチコム(サインの伝達機器)も採用される。
2軍リーグが3地域制に変わる!

ファーム(2軍)では、従来の2リーグ制(イースタン/ウエスタン)ではなく、3地区制に移行。2024年に新加入したハヤテ(静岡)とオイシックス(新潟)に関し、移動負担や日程の偏りが課題になっていたことが背景にある。今後ほかの球団が拠点を移すことになれば同様の懸念も出てくる。
取材・文・編集/田尻健二郎
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