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甲子園優勝経験者・宮本慎也さんに聞く高校野球の見どころは「大逆転」と「翌年」

2026.03.27

WBCでは惜しくもベネズエラに敗れた侍JAPAN。その興奮冷めやらぬ中、春のセンバツが開幕、その後はプロ野球やメジャーリーグの開幕と、まさに球春が到来する。現在発売中の雑誌『DIME』5月号では、「超マニアック野球観戦ガイド」を大特集! 野球解説者に聞く観戦のポイントやYouTubeやデータを活用したディープな観戦術、各球団のマーケティング戦略やあだち充作品と甲子園との絆など、知れば観戦が10倍楽しくなる舞台裏を徹底取材した。

本記事では春のセンバツの見どころを解説する。高校野球は幾度となく、そのとりまく環境が変わってきた。それに応じて、観る側の心構えも変わってくる。どうすればより楽しめるのか。高校野球を知り尽くすレジェンドが語る。

センバツでがらりと雰囲気が変わる選手を観るのが楽しみですね

宮本慎也さん

元プロ野球選手
野球解説者
宮本慎也さん

1970年、大阪生まれ。PL学園では2年夏に甲子園優勝。同志社大からプリンスホテルを経て、94年ドラフト2位でヤクルト入団。ベストナイン1度、ゴールデングラブ賞10度。2014年アテネ五輪、06年WBC、08年北京五輪代表。

〝将来のプロ〟が今、どんな輝きをみせるのかに注目

「高校野球の魅力とはまず、甲子園球場の魅力ではないでしょうか。同じスタジアムなのに高校野球とプロ野球ではまるで雰囲気が違います」

 そう話すのは野球解説者の宮本慎也さんだ。立浪和義さん(元中日)や片岡篤史さん(元阪神ほか)らを擁し、大阪のPL学園が春夏連覇を達成した1987年──。当時、2年生だった宮本さんも大会途中からケガを負った先輩に代わって三塁を守り、決勝では三塁打も放って全国制覇に貢献した。

その後、同志社大、プリンスホテルを経て東京ヤクルトで活躍し、2012年には2000本安打を達成。翌年の現役引退後は、中学生を指導する機会も増え、23年には長男が東海大菅生の一員として春のセンバツ大会のマウンドに上がった。選手や解説者、そして父として、甲子園球場とは縁の深い野球人生を送ってきた。

「高校球児は全国大会を目指しているのではなく、甲子園を目指している。時代は変われども、高校球児が目指す場所は変わらない。『春はセンバツから』という言葉もあるようにまだまだ肌寒い春には春の甲子園球場の顔が、入道雲が覆うこともある夏の甲子園には夏の顔があるんです」

 思い入れの強い球場だからこそ、酷暑対策として検討されているドーム球場での開催には断固反対だ。

「ただ、日本の夏がかなり暑くなってきているのは間違いないので、7回制にするぐらいなら、屋根付きの球場に変更してもいいのかなとは思いますけどね(笑)」

 宮本さんの高校時代はPL学園の黄金期だ。桑田真澄さん、清原和博さんというKKコンビが5季連続で甲子園に出場し、入れ違いで全国屈指の名門にして人気校に入学した。

「多感な高校時代の2年半という時間を野球に費やした。いろいろなものを我慢して、白球を追いかけた日々というのは、たとえ甲子園に出場できなくてもかけがえのない経験であり、青春そのものでした。野球を辞めたあとの人生にも必ず生きるものだと思う」

 近年、高校野球で起きた変化といえば、打球直撃による投手の負傷を防ぐべく、24年のセンバツから打球速度の低下を目的とする低反発バットの導入だ。従来の金属バットに比べ真芯にあたらなければ打球が飛ばなくなってしまった。低反発バットになれることで大学・社会人以降の野球界で使用される木製バットに移行しやすく、バッティング技術の向上も期待されたが、宮本さんは「逆効果ではないか」と言う。

「飛ばない低反発になったことで、過度な〝スモールベースボール〟になってしまった。せっかく日本が23年のWBCでパワー野球によって世界一になったというのに、日本のU−18という高校生年代の野球は時代に逆行するようにバントを多用する小さな野球になってしまった。本来高校野球というのは、速い球を投げる、その球を強く打ち返す。その中でいろいろな技術を覚えていくものなんです」

 守り抜く野球ではなく、打ち勝つ野球でなければ高校野球は勝ち抜けない時代に突入している。

「甲子園に出てくるような学校はどこも守りはしっかりしている。そのうえで点が取れなければ全国は獲れないと思います」

宮本慎也さん

 PLといえば初めて全国制覇を達成した78年夏、終盤に展開をひっくり返す試合が続いたことから、「逆転のPL」が代名詞となった。

「高校生って、野球の技術はまだまだ未熟なんですよ。いくら(低反発バットの導入で)ボールが飛ばなくなったとはいえ、試合終盤の大逆転劇というのもプロに比べれば起きやすいと思います。ゲームセットまで気が抜けないのも高校野球の面白さですね」

 高校野球では近い将来、7回制の導入が検討されている。宮本さんは大阪桐蔭を率いて史上最多となる通算70勝を挙げている西谷浩一監督とは同学年(宮本さんは同志社大、西谷監督は関西大)でしのぎを削り合った仲だが、共に7回制の導入には反対だ。

「7イニングしかなければ、複数の投手をどんどんつぎ込むことのできる私立の優位は揺るぎない。投手の完封や完投はなくなり、高校野球の魅力であるジャイアントキリング(大番狂わせ)のようなドラマが生まれ得なくなる」

 間もなくセンバツが開幕する。宮本さんが注目するのは神奈川の横浜高校だ。中学時代から名を馳せたエリート球児──織田翔希や一塁を守る小野舜友ら、昨春の日本一を経験しているメンバーが数多く残り、今回のセンバツでも優勝候補筆頭だ。

「一昔前は、大阪桐蔭に入学して甲子園に出場し活躍すれば、プロでも活躍できると中学生に思われていた。しかし、現在、オリックスで活躍する森友哉が卒業(2014年)して以降、プロで活躍している選手は少なく、S級と呼ばれるような有望中学生の目は今、横浜に向いていると思います」

 センバツ出場校を選ぶうえで参考となる前年の秋季大会から一冬を越えて、大きく成長して雰囲気がガラリと一変する選手がいる。「そういう選手を探すのもセンバツの楽しみ方」と話したあと、宮本さんは次のように続けた。

「一春、一夏というわずかな期間で高校球児が見違えるような成長をするのが甲子園です。『すごい』と思った選手がその後、どんな野球人生を歩むのか。プロや大学に進んだあとまで追うことももちろん、下級生で出場していた球児が、その後、在学中にどんな活躍をするのか注目していくとより野球観戦が楽しくなる。例えば、現在、福岡ソフトバンクに在籍している前田悠伍は大阪桐蔭で1年秋から活躍していましたが、22年のセンバツでは下級生ながら日本一に導き、翌年のドラフトでも1位指名されるぐらいの可能性を秘めていた。彼には森友哉以来、プロの世界で輝きを放つ選手になってもらいたいと期待しています」

 ある意味でそれは子どもの成長を見守る親の気持ちになるような経験でもある。特定の選手に感情移入することで勝利に歓喜し、敗北に涙するのだ。

【POINT 1】「ダメかな」と思ってからが大勝負!

「ダメかな」と思ってからが大勝負!

秋田・金足農と滋賀・近江の18年夏準々決勝。9回裏に金足農は無死満塁から逆転サヨナラツーランスクイズで試合は決した。

【POINT 2】「来年はどうなる」と球児の成長を見守る

「来年はどうなる」と球児の成長を見守る

プロになる選手もいれば、大学、社会人と野球を続ける者も。保護者の気持ちで見守ろう(上はソフトバンク前田)。

取材・文/柳川悠二 撮影/藤岡雅樹 編集/千葉康永

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