■連載/阿部純子のトレンド探検隊
身近にあるモバイルバッテリーの発火・爆発のニュースを見て不安を感じる人は多いかもしれない。日常的に利用しているものだけでなく、家に保管したまま使っていないモバイルバッテリーも、保管方法によっては危険をはらんでいる。
春の引っ越しシーズンを迎えて、自宅に保管されている放置バッテリーが引っ越しの荷物の中に紛れ込み、発火リスクを抱えたまま移動する可能性もある。モバイルバッテリーの正しい保管、処分の方法など専門家に話を聞いた。
「不安はあるが、捨てられない」不要なモバイルバッテリーはどうする?
モバイルバッテリーのシェアリングサービス「CHARGESPOT(チャージスポット)」を運営する、INFORICHが、モバイルバッテリー所有者300名を対象に、バッテリーの保管・廃棄実態に関するアンケート調査を実施した。
複数のバッテリーを所有している人は46.7%で、半年以上使っていない放置バッテリーが「1個以上ある」と回答した人は37.6%おり、日常的に使用しないまま自宅に保管されていることが多いとわかった。
保管場所の第1位が「引き出しや棚、収納ボックスに他の物と一緒」(42.7%)と半数近くになり、引っ越しの荷物整理で初めて存在に気づく可能性も考えられる。
バッテリーの安全判断の方法では、「見た目(膨張など)で判断」58.7%、「使用時の発熱で判断」44.3%が多い一方で、「特に確認していない」13.3%、「判断方法がわからない」8%を合わせると、約21%が安全確認をしていないことがわかった。
劣化・危険サインを「特に知らない」も8.3%おり、古いバッテリーをそのまま自宅で保管し続ける可能性もある。
「不要になったバッテリーはない」を除く171名の処分方法を見ると、自治体の指定回収や、家電量販店の回収ボックスを利用したケースが7割近くになっているが、未処分(自宅に保管したまま)が35.7%、「可燃ごみで捨てた」も1.8%おり、春の時期は引っ越しのタイミングで「ごみとして出してしまう」人が増える可能性もある。
発火・爆発のニュースを見て「不安を感じたことがある」と答えた人は74.7%。しかし正しい廃棄方法の認知と実践状況を見ると、74.1%の人が、正しく廃棄できていないと回答し、「不安はあるが、捨てられない」ジレンマが浮き彫りになった。
この状態での保管は要注意!発火リスクは熱、圧迫、ショートの順で高まる
製品事故情報の収集、調査、分析を行う、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)製品安全センターの宮川七重氏に、モバイルバッテリーの保管時にリスクが高まりやすい状況や、取り扱い上の注意点について解説してもらった。
「自宅保管における発火リスクの要因ですが、それぞれにリスクが想定されますので、大まかに3つのグループに分けました。状況にもよりますので断定はできませんが、リスクが高い順としては、1番は外部から熱・エネルギー、2番は熱がこもる・物理的に圧迫される、3番は電気回路がショート、になるかと思います」(以下「」内、宮川氏)
〇外部から熱・エネルギー
リチウムイオン電池が発火する要因として、高い温度と、高い充電(満充電に近い)状態のときが挙げられる。「充電ケーブルにつないだまま」「車の中」「陽が当たる場所」 は、この状態に該当する可能性がある。
〇熱がこもる・物理的に圧迫される
衝撃や圧力で内部がショートすると局所的に発熱し、周囲に物があって放熱できないと温度が上がり続け発火することがある。また、強い外力で電池が変形すると、急激なショートで短時間に発熱・発火する場合もある。 「引き出しや棚で他の物と一緒」「バッグの中」「本や荷物の下」の状態に該当する可能性がある。
〇電気回路がショート
リチウムイオン電池の充放電を制御する回路がショートして、発火に至ることがある。 「金属と一緒」「水回り付近」はこの状態に該当する可能性があるので要注意。
2023年8月の熊本県での事故では、モバイルバッテリーを高温下の自動車内に放置したことにより、自動車内でバッテリーを焼損する火災が発生。詳細な事故原因の特定には至らなかったが、モバイルバッテリーに内蔵されているリチウムイオン電池セルが異常発熱し発火したものと推定される。
※下記画像は自動車内でモバイルバッテリーが発火する様子の再現実験
2021年9月の沖縄県での事故では、膨張したモバイルバッテリーに衝撃を与えたことによる、モバイルバッテリー及び周辺を焼損する火災が発生した。使用者が膨張したモバイルバッテリーを押し込んで元に戻そうとした際に、内部のリチウムイオン電池セルに外力が加わったため、電池セルが内部ショートし、異常発熱して発火したものと推定される。
※下記画像は膨張したモバイルバッテリーの再現実験
アンケート調査では、劣化・危険サインを「知らない」人が8.3%いたが、充電や使用時は時々様子を確認して、異常を感じたらすぐに充電・使用を中止することが重要。
充電・使用時に以下のような異常を発見した場合は、充電・使用を中止して、購入した販売店や製造・輸入事業者に相談する。
□ 充電できない。
□ 充電中に以前よりも熱くなる。
□ 膨らんで、変形している。
□ 落とす、ぶつけるなどで強い衝撃を与え、一部が変形している。
□ 不意に電源が切れる。
「モバイルバッテリーに使用されているリチウムイオン電池は、可燃性の材料でできており、『高温』と『衝撃・圧力』に弱いデリケートな製品ですので、丁寧に扱っていただくことが大切です。
現在、業界や地方自治体によるリチウムイオン電池搭載製品のリサイクルや廃棄の体制の整備が進んでいます。新生活や引越しの時期に不要なバッテリーを見つける機会があれば、もう使用しないとわかっているものや、充電時間が長くなったなど、劣化の症状が出てきたものは、メーカー、家電量販店やお住まいの地方自治体に確認をして、適切に処分することをお勧めします。安全のため、一般ゴミにポイ捨てする行為は控えてください」
【AJの読み】春から夏にかけて気温の上昇とともに事故が増加する傾向が
今回は事故が最も多く発生しているモバイルバッテリーを例に取ったが、発火リスクはリチウムイオン電池を動力源にして使用する製品すべてに当てはまる。身近なものだと、スマホやノートパソコン、携帯用扇風機、ワイヤレスイヤホン、ワイヤレススピーカー、電動アシスト自転車、ポータブル電源などがある。
「近年の、リチウムイオン電池搭載製品の需要増加や多様化の影響を受けて、事故も年々増加傾向にあります。製品別では『モバイルバッテリー』の事故が最も多く、2024年は2022年比で2倍以上に増加しています。これは、2023年5月に新型コロナウィルス感染症が5類感染症になったことで行動範囲が広がったことや、防災用品としての需要が高まっていることなどが要因にあると考えられます。
2020年から2024年までの5年間にNITEに通知された製品事故情報では、『リチウムイオン電池搭載製品』の事故は1860件ありました。事故の約85%(1860件中1587件)が火災事故に発展し、事故発生件数は春から夏にかけて気温の上昇とともに増加する傾向にあり、6月~8月にかけてピークを迎えます」
これから気温が上がっていく季節に伴い、スマホ、モバイルバッテリーだけでなくハンディファンを持ち歩く人も増えていく。携帯するもの、家に保管しているものと、リチウムイオン電池搭載製品の扱いには十分注意したい。
取材・文/阿部純子







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