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メーカーの垣根を越えて住まいが〝パートナー〟に!?AIと標準化が切り拓くスマートホームの未来を体験してきた

2026.03.22

2026年3月18日、パシフィコ横浜にて「Connectivity Standards Alliance(以下、CSA)横浜 Media Day」が開催されました。本イベントは、スマートホームのグローバル標準規格「Matter」や、新スマートキー規格「Aliro」を推進するCSAが主催し、AmazonやNECプラットフォームズなどの企業が協賛する中で行われています。

会場では、AIと標準化が切り拓く「スマートホーム2.0」の展望が語られた基調講演をはじめ、QRコード一つで完了するデバイスの簡単セットアップや、スマホをポケットに入れたままの「ハンズフリー解錠」など、生活を豊かにする技術のデモンストレーションが披露されています。

さらに、各業界を牽引するリーダーたちによるパネルディスカッションでは、スマートホーム普及を阻んでいた過去の壁と、設定の手間が消滅した先にある究極の「UX(ユーザー体験)」競争への期待が熱く交わされました。

2つの基調講演:AIと標準化が切り拓く「スマートホーム2.0」

最初の基調講演には、CSAのCEO兼プレジデントであるトビン・リチャードソン氏が登壇しました。CSAには、AppleやGoogle、Amazon、パナソニックといった世界の主要テック企業が加盟しています。

同氏は、アライアンスが現在54カ国から900社近い企業と1万人以上のエンジニアの参加を得て、地球規模で業界標準を牽引している圧倒的なスケールを強調しています。

トビン・リチャードソン氏

最新のトピックとしては、カメラなどの接続やエネルギーマネジメントをサポートする「Matter 1.5」がリリースされたことが挙げられました。Matterとは、2022年にリリースされたアプリケーション層のプロトコルで、メーカーを問わず、対応デバイスが相互に連携できる仕組みを提供します。

リチャードソン氏は「技術の進化は非常に早いですが、だからこそMatterのような信頼できる標準があることが重要です。これにより相互接続性やセキュリティが担保されるのです」と語り、生成AI時代においても標準化が重要な基盤になると展望を示しています。

■「スマートホーム1.0」の課題を越え、生成AIが寄り添う「AIホーム」へ

続いて登壇したCSA日本支部代表の新貝文将氏は、これまでのスマートホーム(スマートホーム1.0)が抱えていた「繋がらない」「設定が難しい」「詳しい人しか使えない」といった課題を指摘しました。

これらの課題をMatterが解決することで、いよいよ「繋ぎたいものが当たり前のように繋がる」スマートホーム2.0の世界が実現するとコメントしています。

さらに新貝氏は、世界のトレンドはすでに「AIホーム」へと向かっていると語ります。これまではユーザーが手動で設定やアプリの連携を行う必要がありましたが、これからは自然な会話で生成AIが意図を汲み取り、例えば「寒いね」と言うだけでエアコンの設定が変わり、過去の記憶や個人の嗜好に合わせて家全体がパーソナライズされる未来がやってくると提示しました。

■新規格「Aliro」がもたらす「鍵なしで体験できる」シームレスな世界

本基調講演で最も注目を集めたのが、わずか2週間前にバージョン1.0が発表されたばかりのモバイルアクセスの新規格「Aliro」です。

Aliroは、スマートフォンやウェアラブル端末を「デジタルキー」として使い、あらゆるものを解錠できるようにする規格です。iPhoneのApple WalletやAndroidのGoogle Walletなどにデジタルキーを格納することで、OSの違いを越えて鍵の共有が可能になります。

住宅だけでなく、オフィスや商業施設、ホテルといったあらゆる空間で、「スマホひとつでドアが開く」シームレスな体験がもたらされることが強調されました。

展示とデモンストレーション:メーカーの壁を越えた驚きの体験

会場の展示エリアでは、MatterとAliroがもたらす全く新しい生活体験が、実際の機器を使ったデモンストレーションで披露されました。

■QRコードを読み込むだけ。誰でもできる「超簡単セットアップ」

これまでのスマートホーム機器は、専用アプリをダウンロードし、アカウントを作成し、複雑なWi-Fi設定を行うという、非常に手間の掛かるものでした。

しかし、Matterのデモンストレーションでは、スマートフォンを取り出し、デバイス本体や説明書に付いているQRコード(または11桁のコード)を読み込むだけで、わずか数秒でネットワークへの接続が完了します。

IT機器に詳しくない家族でも、買ってきたその日にすぐ使い始められる直感的な体験が実演されました。

■家族それぞれが好きなアプリを選べる「マルチアドミン」機能

さらに驚かされたのが「マルチアドミン」機能です。例えば、お父さんはAndroidスマホでGoogle Homeアプリを使い、お母さんはiPhoneのApple Homeアプリを使い、リビングではAmazon Alexaに話しかける、といった環境でも問題ありません。

1つのスマートロックや照明に対して、異なるOSやアプリから同時に操作でき、ステータス(鍵が開いているか、電気が点いているか)もリアルタイムに全ての端末で同期される様子がデモで証明されました。

これにより、家族全員が使い慣れたインターフェースを自由に選べるようになります。

■「メーカーの壁」を越え、一声で一斉連動するマルチメーカー連携

Matter最大の魅力である「マルチメーカー連携」のデモでは、異なるメーカー(Aqara、Philips Hue、SwitchBotなど)の照明、扇風機、スマートロックなどが混在していても、「おやすみ」などの一つのコマンドで一斉に連動して動く様子が実演されました。

ユーザーは特定のメーカーに縛られることなく、デザインや機能で自由に製品を選び、それらを組み合わせて自分だけのスマートホームを構築できます。

■スマホをポケットに入れたまま開く、Aliroの「ハンズフリー解錠」

Aliroの展示では、UWB(超広帯域無線)技術を用いた「ハンズフリー解錠」が注目を集めました。

UWBは距離と方向を正確に測ることができるため、「家の外からドアに近づいてきた」ことだけを正確に検知します。

これにより、スマートフォンをポケットやカバンに入れたままドアに近づくだけで自動的に解錠され、家の中から近づいた場合には誤作動で開かないという、極めて賢く安全な動作が実演されました。両手に荷物を持っている時など、その便利さは計り知れません。

■パネルディスカッション:業界リーダーたちが語る普及へのシナリオ

イベントの最後には、各業界を代表する企業(美和ロック、三菱地所、エディオン、パナソニック)と、チャンネル登録者数40万人を誇る人気ガジェット系YouTuber・マメ氏が登壇し、パネルディスカッションが行われました。

■メーカーと消費者が抱えていた「Matter以前」のリアルな苦悩

ディスカッションは、スマートホームが普及しきれなかった「過去の苦労」から始まりました。美和ロックの木下氏は「これまでは通信規格(Bluetooth、Zigbee、Z-Waveなど)やプラットフォームごとに合わせて開発や対応を行うのが本当に大変だった」とメーカーとしての苦悩を吐露しました。

美和ロック株式会社 商品開発本部 取締役 商品開発本部長 木下琢生氏

三菱地所の橘氏も「APIベースで各社の機器を繋ぐための開発やメンテナンスは本当に大変だった」と開発現場のリアルな実情を明かしました。

三菱地所株式会社 住宅業務企画部 統括 HOMETACT事業責任者 橘嘉宏氏

また、YouTuberのマメ氏は「消費者は『スマートホームで自分の生活がどう便利になるのか』がまだ具体的にイメージできておらず、それが導入の大きな壁になっている」と指摘しました。

株式会社Bitta 代表取締役/YouTuber マメ氏

■設定の壁が消滅し、小売店も提案しやすいシンプルな世界へ

しかし、Matterが登場したこれからの未来に対しては、登壇者から強い期待の声が上がりました。

家電量販店の最前線に立つエディオンの安倍氏は、「これまではお客様にどれが最適か説明するのが非常に難しかったが、Matterによって仕組みがシンプルになり、売り場でも非常に訴求しやすくなる」と語りました。ユーザーが製品を選びやすくなることで、普及のハードルが一気に下がることが期待されます。

株式会社エディオン営業本部 商品統括部 執行役員 営業本部 商品統括部 副統括部長 安倍寛氏

■インフラ化するスマートホーム。不動産業界が期待する「Aliro」の可能性

新規格「Aliro」に対する話題では、不動産・インフラ視点からの期待が語られました。

三菱地所の橘氏は、マンションなどの建物内では携帯キャリアの電波が入りにくい場所があるという課題に触れつつ、「Aliro対応でオフラインでもスマートロックが動くようになれば、顧客体験(UX)を損ねずに済む。スマートロック、ひいてはスマートホーム普及のエンジンになるのではないか」と強い意欲を見せました。

■AI自動制御で「人が操作しなくていい」究極のUX競争が幕を開ける

パネルの締めくくりとして、パナソニックの平松氏はエネルギーマネジメントの観点から今後の展望を語りました。

パナソニック株式会社エレクトリックワークス社 上席主幹,博士(工学) 平松勝彦氏

「これまでは繋ぐこと自体が難しかったが、インフラの壁がなくなったことで、これからは『UX(ユーザー体験)』の競争に変わる」と指摘。「人間が中心に操作する世界観と、AIや自動制御によって、昼間の余った電力で蓄電池やエコキュートが自動で動いていくような、人間がいなくても最適な環境が作られる世界観の両立が進む」と締めくくりました。

期待が高まる「家がパートナーになる」未来

今回の「CSA 横浜 Media Day」では、「メーカーの違いを気にせず、買ってきた家電が当たり前のように繋がり、暮らしを自動で快適にしてくれる未来」は、もはや夢物語ではなく、すぐそこにある現実だということが体感できた。

MatterやAliroといった強力なグローバル標準が普及することで、煩わしい初期設定や、アプリの使い分けというストレスから解放されます。そして、そこに生成AIという「頭脳」が加わることで、家は単なる居住空間から、私たちの生活に寄り添い、先回りしてサポートしてくれる「優秀なパートナー」へと進化を遂げます。

「ただいま」と言えば好みの明るさと温度で迎えられ、スマホをポケットに入れたままあらゆるドアを通過できる。そんなスマートホームの新しいスタンダードから、今後も目が離せません。

取材・文/佐藤文彦

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