実際にシネマリスの地下へ降りてみて
筆者もシネコンからミニシアターまで幅広く通う学生生活を送っていた。ただ、サブスクの配信サービスが日本に上陸して以降、明らかにその回数は減っていた。
仕事や日常生活に忙殺されている中、どこかに心の拠りどころが欲しい。そんなタイミングで、シネマリスへと足を運んでみた。
神保町駅から歩いて5~10分程度。少し狭い路地を入った場所に、その映画館はある。外からは一見して「映画館がある」とは思えない瀟洒な建物だ。
小さな看板を頼りに中へ入ると、大きならせん階段が見えた。「本当にここで合っているのか?」と少しドキドキしながら地下へと下っていく。階段を下りて上方を見ると大きな吹き抜けになっていて、とても解放感がある。

入り口の扉を開けると、ミントグリーン色の小さなフロントが現れた。灰色基調の外観や階段とは一風変わった雰囲気だ。そこには数席の椅子と大きめのテーブル、飲み物などの販売所がある。建物の外観シネマリスやほかのミニシアターで上映されている映画のチラシを眺めながら、静かに上映を待つ。
何気なく入った女性用トイレには魅了された。やや手狭で、ほかのお客さんとすれ違う時に荷物や体が触れる距離になってしまい、思わず「すいません」と言い合うような近さ。ただ、その色合いや内装がまるで映画の中のように美しいのだ。鑑賞前に用をすますだけで、すっとシネマリスの世界観に入っていけるような感覚を味わえた。
上映直前になると、フロントは人でいっぱいになった。これぞまさにミニシアターという親密な空気感だ。どこから来たのかはわからないけれど、1本の同じ映画を見るために神保町という街に集まった人たち。著者は今回は1人で訪れたが、見知らぬ他者と静かに趣味を共有しているような、不思議な連帯感と心地よさがあった。
当日に選んだ映画は旧作の『Smoke デジタルリマスター版』(1995年公開、ウェイン・ワン監督作品)。大学生時代にDVDで観たお気に入りの作品で、映画館のスクリーンで観られることに心を躍らせながらシアターに足を踏み入れた。
旧作・準新作を上映するシアター2には、青いソファーが並んでいた。座り心地はよく、スクリーンも見やすい。もちろんシネマコンプレックスのような派手さはないが、これで十分だ。思い出の作品を改めてシネマリスで見ると、その映像の美しさやノスタルジーはひとしおで、かなり没頭できた。この作品は「サブスク」対象の映画だったが、筆者はサブスク会員ではないものの、旧作料金の1500円で鑑賞できた。映画のチケットが2000円に達した時代に、この値段で名作をスクリーンで見られるのは本当にありがたい。
上映後は「やっぱり映画館で映画を観るのは良いなあ」とジーンとしながら映画館を出た。神保町という文化的な街がより美しく見えて、より楽しく歩けるような気がした。交流が好きな人は、フロントやエントランスでほかの観客と感想を共有しあうのもよさそうだ。
ミニシアターの聖地「神保町」で紡がれる、新たなつながり
映画は単なる物語や映像の消費ではなく、見知らぬ他者と同じ空間で感情を共有し、人とつながる体験だ。スマートフォンの電源を切り、暗闇の中でスクリーンと向き合う。映画が終わった後、言葉を交わさずとも同じ空間にいた観客同士が何かを共有して街へ出ていく。
動画配信サービスが私たちの生活を便利にする一方で、シネマリスのようなミニシアターは、私たちが本来必要としている心の居場所と、未知との出会いを取り戻してくれる気がした。これから多くの映画ファンを惹きつけ、新たな文化の発信拠点として街と共に育っていくことに期待したい。
文/田中節子
ロック雑誌の聖地・神保町のエモすぎる古本屋「ブンケン・ロック・サイド」が守り続ける文化
古書の街として知られる神保町の中で、独特の存在感を放つ店がある。その名も「文献書院&ブンケンロックサイド」。 ロック、アート、アイドル雑誌、インディーズ雑誌——…







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