ChatGPTとGeminiをどう使い分ける? 投資家・本郷喜千氏が明かす「AI株式投資」の極意
AIの進歩が止まらない。
いまでは、仕事や生活の多くの場面でAIが活用されているのは周知のとおり。
その流れは、株式投資においても同様だ。膨大な情報の分析が悩みの種であった個人投資家にとって、AIの登場は福音といえる。
では実際の話、どのように活用したらいいのか?
今回は、AIシステムの教育やコンサルティングを手掛けるインディ・パ(株)の代表取締役、本郷喜千さんに、投資におけるAI活用のイロハをうかがった。
二強はChatGPTとGemini
――いまや、生成AIといっても多くの種類があります。なかでも、株式投資に向いているものはどれでしょうか?
本郷さん(以下、本郷):私の著書『ChatGPTではじめるAI株式投資』にも書きましたが、ChatGPTとGeminiが二強です。ChatGPTは、質問に対し柔軟に答えてくれる点が一番の魅力。特に、メモリ機能をオンにしておけば、ご自身が過去にした質疑応答も、価値判断の目安も覚えていてくれるので、より的確な回答を返してくれます。それから検索が得意ですね。以上の2つの特性は、どちらも非常に重要です。
他方、Geminiの得意技はビジュアル化で、企業のリサーチにはぴったりです。 例えば、A社はどのようなビジネスモデルで、何で収益を上げているか、弱みは何かなどを、分かりやすくインフォグラフィックで示してくれます。音声による言語化も得意で、電車に乗りながら説明を聴けるのはありがたいです。Googleが開発したAIではありますが、検索そのものよりも、情報の可視化や整理に強い印象ですね。
それからXのGrokも使います。ここからは、Xで発信された、リアルで本音ベースの生々しい情報が得られます。
現在、これら3つの生成AIをメインに使い分けており、みなさんにもおすすめできます。
無料版でOK、有料版を使い倒すのもアリ
――ChatGPTとGemini、両方とも有料版がありますが、有料版を使った方がいいですか?
本郷さん(以下、本郷):株式投資に役立たせるぶんには、無料版と有料版では機能はほとんど同じです。
なので、無料版でまったく問題ないのですが、無料版は利用回数の上限がありますね。その制限のせいで、活用したい気持ちにブレーキをかける可能性があります。その場合は、有料版にして使い倒すのがおすすめです。
答えを出すAIに「役割」を与える
――どの生成 AIを使うにせよ、プロンプトの巧拙が大きく影響すると思います。プロンプトの基本というのを教えていただけますか?
本郷さん(以下、本郷):聞きたいことを細分化していくのがポイントです。AIにどんな役割を与え、何をどう調べてほしいのか。調べた結果を、どんな形式で出してほしいかも明記しましょう。
AIは、証券アナリスト、ファンドマネジャー、個人投資家など様々な役割を担えます。そこで、まず「役割:証券アナリスト」などと書きます。それだけで、AI が探し回る範囲を絞れ、精度が上がります。それから、調べたい企業の財務諸表を分析し、収益性、成長性、株主還元を評価せよといった指示も、漏らさず記します。情報の出力形式も、表がいいのか、リストがいいのかなど具体的にします。この際、「各項目を100字以内で分析」というふうに制約条件も出すといいでしょう。
指示内容が細か過ぎるからといって、AIは悩むことはありません。むしろ、的を絞った、本当に必要な回答が返ってくる確率が、ぐっと高まるくらいです。
その意味では、プロンプトを書く人の国語力、作文力が問われてきます。さらに、知りたいことが頭の中に明確にあるかどうか。AIの回答が期待どおりでないとき、ハルシネーションがあるときは、質問自体がぼやっとしている可能性があります。聞き方を精査してみましょう。
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ファクトチェックは複数の生成AIで
――ネット上の株式情報は、新旧・正誤混じっているでしょうから、AIが生み出す回答も誤りはあるかと思います。AIの情報の正しさをチェックする方法はありますか?
本郷さん(以下、本郷):AIが出す回答には、根拠となった情報へのリンクを加えるようプロンプトで指示しておきましょう。それらをクリックして、出所が一次情報かそれに近いものかどうか確認するのが一点。リンク先の全部を確認するのは大変なので、その一部でもチェックしておきます。
それから、AIを用いたファクトチェックもします。つまり、別の生成AIに同じプロンプトを入れて、出た情報を見てみるのです。 自分は、ChatGPT、Gemini、Grok、Claudeの最低4つで検証します。ChatGPTのバージョンを変えたりなど、多い時は20個ぐらいの生成AIに、同じプロンプトを入れてチェックします。
それから、生成AIは、計算が苦手という前提で考えてください。当たり前のように計算を間違えるので、そこはあてにせずご自身で検算しましょう
「投資の軸」をまず決める
――日本だけでも4千社余りの上場企業があって、どの銘柄を選ぶべきか迷う投資家も少なくないでしょう。絞り込むには、どのようなかたちで AI を活用すればいいでしょうか?
本郷さん(以下、本郷):最初に決めておくべき重要な点があって、それはご自身の価値観です。「投資の軸」と呼んでいますが、ご自身は企業のどの要素を重視しているのかが大事。売上の大きい企業か、営業利益率が高い企業か、税引き後利益が優れた企業かなど、いろいろな要素があるなかで、どこに重きを置きたいでしょうか。
全要素を反映して選ぶというのは AI にもできないですし、全要素において完璧な銘柄もありません。私は、営業利益率や配当性向を軸に置いていますが、万人にとっての正解はないでしょう。そこで、まずご自身の投資の軸を決め、それに優先順位の重みをつける必要があります。
軸が決まったら、それに沿ってAIを活用していきます。
AIといえども将来の株価は予測できない
――「投資の軸」が定まったところで具体的に、銘柄のスクリーニングや売買のタイミングに関して、AIをどのように使うといいでしょうか?
本郷さん(以下、本郷):スクリーニングについては、ChatGPTのプロジェクト機能がいいでしょう。その中で、例えば証券会社のサイトにあった特定銘柄のスクリーンショットを貼り付けて評価させるとか、ポータルサイトのInvesting.comなどで取得した CSV 形式のデータを読み込ませて分析してもらうなどします。
売買のタイミングについてですが、AI は過去データに基づいてある程度の予測はしますが、確実な未来を教えることは不可能です。こればかりは「当たるも八卦、当たらぬも八卦」なのです。この限界があることを知っておくのは、非常に重要です。
AIの予測データを丸ごと信じてしまうと、売買に失敗したら、AIのせいにしだすものです。これは、投資を長く続けられない人のパターンです。最終的には、勝っても負けても自分の責任という考え方でないと、投資活動は持続できません。前提として、この点はふまえておいてください。
売買のタイミングについては、証券会社やYahoo!ファイナンスのチャートをスクリーンショットし、これをChatGPTのプロジェクトに入れて相談します。AIにはトレーダーの役割を与え、データをもとに総合的な意見を出すように指示するわけです。「今は調子の良いこの銘柄、下落リスクが高まりそうか」など、AIトレーダーは、飽きずに議論に付き合ってくれます。人間のトレーダー相手と同じように対話を続け、納得したら、最後はご自身で決断します。
ところで、日本国内の株価は2012年からおおむね上昇しており、全体として高値圏にある印象です。しかし、将来のいつかの時点で下げ相場となる可能性はあります。そうなったときこそ、AI が真価を発揮するのではないでしょうか。今から、AIになじんでおく意義は大きいと思います。
■お話を伺った方:本郷喜千(よしゆき)さん
中央大学法学部卒業後、光通信キャピタル、SBIホールディングスを経て独立。現在、インディ・パ株式会社代表取締役 。AIコンサルタント、プロンプトエンジニア、投資家の顔も持つ。投資助言・代理業の登録のもと、FX自動売買システムの開発・提供、システムトレード教材の制作に従事。データドリブンな投資判断の重要性を説き続けてきた。著書『ChatGPT はじめてのプロンプトエンジニアリング』『EasyLanguage プログラミング入門』『ChatGPTはじめてのGPTsのつくりかた』(いずれもスタンダーズ刊)。最新の著書は『ChatGPTではじめるAI株式投資』(同社刊)となる。
取材・文/鈴木拓也
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