昨今、AIの進化発展が加速しているが、音声通訳・翻訳領域でも目覚ましい。先日は、世界的な自動翻訳の先進企業であるドイツ発のDeepL(ディープエル)社が、AIによる同時通訳ソフトの日本語版を年内にリリースすると発表し、話題になった。
すでに日本でも手に入る画期的なAI活用の音声翻訳ツールがあり、もはや英語学習は不要になる未来も見えてくるほど。今回は、2つのツールについて、ビジネスパーソン必見の利用シーンや活用のポイントを紹介する。
自分の声がペラペラ外国語をしゃべる「Vasco Translator Q1」
ポーランド発のVasco Electronicsが手掛けるAI翻訳機「Vasco Translator Q1」は、音声クローニング機能が搭載されていることで話題だ。人間が日本語でしゃべれば、それをリアルタイムで指定の言語に自動翻訳してくれる。しかも自分の声そっくりに再現された音声が再生されるという。
同社の広報担当者は次のように解説する。
●AI翻訳の仕組み
「Vasco Translator Q1は業界初のボイスクローニング技術『Vasco My Voice』を搭載しています。これは、自分の声を録音して忠実に再現する技術です。自分の声で54言語の翻訳音声を生成できるため、機械的な合成音声ではなく、まるで自分自身がその言語を話しているかのような、温かみのある自然なコミュニケーションが可能になります。
Vascoの翻訳機は10種類のAI翻訳エンジンから最も適した翻訳を表示しているため、翻訳アプリなどの1つのエンジンのみで翻訳するものと比べて精度の高い翻訳を実現します」
●ビジネスパーソンにおすすめの活用シーン
ビジネスパーソンに役立つ主な活用シーンは次の3つがある。
1.国際的な職場環境の支援
「多国籍従業員のいる職場に導入すれば、現場のコミュニケーションを向上し、言語ギャップをなくします。円滑な会話により業務フローの最適化、安全性・生産性の向上も見込めます。1台でカメラ翻訳やテキスト翻訳も可能なため、マニュアルなどの社内資料の翻訳にも役立ちます」
2.インバウンド需要に対応
「インバウンドを迎え入れる観光業界などで利用すれば、円滑なコミュニケーションによって滞りのないお客様対応が可能になります。その結果、業務のスムーズ化やサービスの質の向上が見込めます。
緊急時など迅速な対応が求められる場面においても、その場で会話を翻訳することができるため、適切なサービスを提供できます。110以上の言語に対応しているため、日本語だけでなく英語の話せないお客様を含め、様々な国の対応が可能になります」
3.教育・医療・交渉などの現場での活用
「教育・医療・交渉など、1対1の対応が求められる現場において利用すれば、ミスコミュニケーションを軽減し、スムーズな対応を実現します。個人のニーズを正確に聞き取り、必要事項を多言語で伝えることにより、信頼関係の構築が望めます。また通訳者など第三者なしでの対応が可能になり、プライバシーへの配慮も確保できます」
●AI機能における今後の展望
AI機能はどのような方向へと発展していくだろうか。
「Vascoは、ユーザーエクスペリエンスの向上と製品の実用的価値の拡大を目指し、AI技術を事業の中核に積極的に統合しています。この分野における最も重要な開発の一つが、新機能『Vasco Assistant』です。この機能は、ユーザーが撮った写真からAIが文脈を分析し、さらにユーザーの質問に答えることができます。単なる翻訳にとどまらず、文脈理解を提供することで、ユーザーの情報解釈を向上させ、より自然で直感的な実生活で役立つコミュニケーションを実現します」
「Vasco Assistant」は、今年1月に開催された世界最大級のテクノロジーの祭典「CES 2026」で初めて発表され、来場者や業界関係者から非常に好評を博したという。今後の開発に期待がかかる。
多言語翻訳された字幕をリアルタイムに表示「VUEVO Display」
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社が手掛ける「VUEVO Display」は、窓口対応時に役立つビジュアルコミュニケーションを可能にするAI翻訳ツールだ。
現場では、「突然の外国人の訪問に対応できない」「英語以外はしゃべれない」などの課題に直面しがちだ。このディスプレイを設置すれば手軽に訪問客をもてなせる。
VOV事業部 ディレクター 佐治春香氏は次のように仕組みを語る。
●AI翻訳の仕組み
「VUEVO Displayは、独自マイクによる『音源分離アルゴリズム』と音声認識・AIを組み合わせた透明翻訳ディスプレイです。自社で開発した専用マイクが360度全方位の音声を解析。発話者の方向を特定しながら複数の発話でも音声情報を分離し、発話が混ざることなく高精度に検出します。このクリアな音声データを音声認識・AIと組み合わせることで、リアルタイムでスムーズな窓口対応を実現します」
言語は100種以上に対応。透明なディスプレイに会話の内容の字幕を表示することで、相手のジェスチャーや表情を見ながら自然な対面コミュニケーションが可能になる。
●「渋谷PARCO」での導入例
昨年は、売上の約4割を海外顧客が占めるという「渋谷PARCO」に導入された。決済や免税手続きなど複雑な説明が必要な場面に役立っているという。
外国人客からは「クール」「面白い」といった高評価の声も挙がっており、大好評。コミュニケーションがうまくいくと自然と笑みがこぼれ、接客の質向上にも寄与しているそうだ。
デザイン性も抜群。洗練された装いの館内にもマッチする。
●AI活用に関する今後の展望
AI機能は今後、どのような方向へ発展していくだろうか。
「今後は、AIによる発話言語の自動判別を高度化し、最低限の操作で翻訳を開始できる等、さらなる体験値向上を目指します。現在は限られた言語のみ対応していますが、今後は自動識別可能な言語の拡大も進めていく方針です。
また、単なる文字起こしの枠を超え『専門用語の自動補完』や『会話内容の分析』などのAI連携を強化や、対面コミュニケーションの精度向上にとどまらず、業務活用につながる情報整理や分析まで支援する高度な体験へ進化させていきます」
ただの接客ツールにとどめておくのはもったいない。翻訳精度向上はもちろんのこと、バックヤードの効率化にも寄与するのはありがたいところではないか。
2つのAIによる音声通訳・翻訳ツールは、ビジネスにおけるグローバルコミュニケーションを円滑にし、「もっと英語力を上げなきゃ。でも業務で手一杯で勉強する時間がない」と悩むビジネスパーソンを救ってくれそうだ。“英語学習キャンセル界隈”が進むことは、吉と出るか?
取材・文/石原亜香利
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