冬になるとスタッドレスタイヤに履き替え、春には再びサマータイヤへ戻す。日本のドライバーにとって季節の“懸念事項”に対して、新しい選択肢を提示したのがダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」だ。路面状況や温度に応じてゴムの特性が変化する新技術「アクティブトレッド」を採用し、従来のオールシーズンタイヤの弱点とされてきた氷上性能にも一歩踏み込んだ性能を示した頼りになる存在。昨年の冬に装着から約1年2か月、雪道から高速道路まで約1万キロを実走行して、2度目の冬もクリアした、新世代オールタイヤの実力をレポートする。
タイヤが環境に“同期”して性能を変えるという発想がオールシーズンタイヤの概念を一新
●冬タイヤとしての性能アップを実現
“沖縄県を除く都道府県”では、雪道をノーマルタイヤで走行することは条例違反となり、罰金も科される日本において“冬タイヤの主役”といえば「スタッドレスタイヤ」だ。一方で、雪道や凍結路では絶大な安心感をもたらすスタッドレスタイヤも、ドライ路面ではゴムの柔らかさやトレッドパターンの影響で操縦安定性がやや曖昧になることもある。
その弱点を補う存在として普及してきたのが「オールシーズンタイヤ」だが、従来の製品は“夏も冬もそこそこ”という評価を受けることが多く、とくに氷上性能に関してはスタッドレスタイヤに大きく及ばないという印象が強かった。
そうした中で登場したのがダンロップの「シンクロウェザー」だ。最大の特徴は、路面状況や温度によってゴムの性質が変化する「アクティブトレッド」技術だ。ウェット路面では水に反応してゴム表面が柔らかくなり、排水性とグリップ力を高める。一方、低温時には温度変化に応じてグリップ特性を変化させ、弱点だった“氷上性能”を大きく高めて冬用タイヤに近いグリップ特性を発揮。結果として冬用タイヤの国際基準である「スリーピーク・マウンテン・スノーフレークマーク」だけでなく、氷上性能が確認されたタイヤに与えられる「アイスグリップシンボル」も取得。従来のオールシーズンタイヤとしてはでは珍しい仕様であり、メーカーの自信がうかがえる部分でもある。
ここで、各タイヤの「雪道走行性能」を簡単にまとめてみた。

※なお、「全車両チェーン装着規制」が発令された場合、スタッドレスを含むすべてのタイヤはチェーン装着が必要。またSUVに装着されているタイヤの中には「M(泥)+S(雪)」とだけ刻印されているものもある。これは英語で「Mud(泥)」と「Snow(雪)」を示し、確かに夏タイヤに比べれば雪上での性能も優れているが、「スノーフレークマーク」の付いたタイヤよりも雪上では性能は落ちるので、さらに慎重な運転が求められる。
●シンクロウェザーを装着して新世代タイヤの実力を雪道でチェック
実際の性能、とくに冬タイヤとしての実力は最も気になるポイントを確かめるため、FF(前輪駆動)のコンパクトカー(MINIクーパー)にシンクロウェザーを装着し、東京から関越自動車道を北上。群馬から新潟方面へ向かう冬のルートを走った。当時、新潟県内には大雪注意報が出ていた。
まず印象的だったのは、ドライ路面での完成度の高さだ。オールシーズンタイヤにありがちな腰砕け感はほとんどなく、乗り味はむしろコンフォートタイヤに近い。段差や継ぎ目でわずかに硬さを感じる場面はあるものの、全体としてはしなやかな乗り心地で、ロードノイズも高くは感じなかった。
ステアリング操作に対するレスポンスも自然で、コーナリング時の挙動も安定。高速道路での巡航でもストレスは少なく、長距離のグランドツーリングにも十分対応できる印象だ。オールシーズンタイヤでここまでドライ性能が整っていることには感心した。
●雪・圧雪・凍結路でも確かなグリップ
そんな良好な印象を抱きながら関越道を北上すると、天候は雨から雪へと変化。路面もウェット、シャーベット、圧雪、そして凍結路へと刻々と変わっていく。こうした条件でもシンクロウェザーは安定したトラクションとブレーキ性能を発揮した。とくに圧雪路では想像以上のグリップ感があり、スタッドレスタイヤに近い安心感を得ることができる。
さすがに凍結路では横方向のグリップはスタッドレスほど強くはないが、前後方向のグリップ、つまり加速やブレーキングでは、想像以上にしっかりと路面を掴んでくれていた。速度を抑えた慎重な操作を心掛ければ挙動は安定している。メーカーの「一世代前のスタッドレスタイヤに匹敵する凍結路での制動力」という説明も、実際の走行で納得できる印象だった。もちろん、常に氷と向き合う豪雪地帯では最新スタッドレスタイヤが理想的だろう。しかし都市部や準雪国では、実用上十分な安心感を備えていると感じた。
こうして装着後、初めて迎えた冬を無事に乗り切ることができた。実はシンクロウェザーを装着するまでは、冬用タイヤとして3シーズン目に入ろうとしていた欧州タイヤメーカーのスタッドレスタイヤを装着していた。もちろん、まだまだ現役であり、交換直前までは「もし、シンクロウェザーが期待どおりでなかったら……」という懸念はあった。しかし、実際に試した新生代のオールシーズンタイヤは、期待以上のパフォーマンスを発揮。月に数度のスキー行や帰省、さらに出張先での突然の降雪など、ほとんどストレスなく走り切ることが出来た。
夏タイヤとしての高い性能も求められるオールシーズンタイヤ
●オールシーズンだからこそ、雪のない3シーズンが重要
そんな冬タイヤとしてのパフォーマンスで満足を得た上で、夏タイヤのシーズンに突入した。ドライ路面での印象は大きな変化はなく「乗り味のいいコンフォートタイヤ」という個性が維持されていた。ロードノーズが少し高くなっていたり、ざらざら感などが増しているはずだが……。ところが、普段使いの足として乗っている車両だけに、よほど大きな変化がない限り、その違いを感じ取ることは難しい。
当初の印象どおり、段差などで少しだけ硬さを感じるが、それ以外の走行ではしなやかで快適。コーナリング時にもタイヤがよれるような感覚もなく、的確にスムーズにコーナーをクリアできる。ドライ路面では相変わらずMINIクーパーらしいレスポンスのいい軽快な走りを実現。もしスタッドレスタイヤを装着しながらの走行では、もちろんこうはいかない。
そのまま猛暑日が連続した夏を過ごし、突然のゲリラ雷雨も経験。ウェット路面では水に反応して表面が柔らかくなる“水スイッチ”が働き、排水性とグリップ力を高めるのだが、雨水がたまった路面でもハイドロプレーニングによるタイヤが浮き上がったような印象もなく走行できた。
そして秋には、新東名の最高速度120km/h区間での素行も経験。しっかりとした手応えを感じながら、高速での車線変更をスムーズにこなしながら心地よく走れるなど、走行安定性に不安定な感じはほとんど無かった。雪のない3シーズンに渡っての快適さは、装着したばかりの印象のままで、ストレスを感じることはない。
●いよいよ2シーズン目の冬に突入
2年目の冬を迎えることになったシンクロウェザーをまず目測でチェック。日常的な使用がメインの車両だけに、急発進や急ブレーキもスポーツ走行もあまり行わない。そのためかトレッド面の片減りや大きな削れなどもなく、ひびや亀裂、さらには硬化も見当たらない。
次にタイヤとしての使用限界を示す「スリップサイン」、そしてスタッドレスタイヤやオールシーズンタイヤといった冬タイヤの使用限界を示す「プラットホーム」をチェックしてみた。装着以来約11ヶ月で、その走行距離は8千キロオーバーの時点で各ポイントともにまだ十分にゆとりがある。ちなみに冬タイヤにしかない「プラットホーム」について、その存在自体を知らない人も結構いるとのこと。このマークが出てきたら冬タイヤとして使用できないことを認識して欲しい。
●2度目の冬を迎え、シャーベット、圧雪、凍結路へと向かう
早速、適正空気圧に調整して雪道へと向かう。ルートは昨年と同じく東京をスタートして関越自動車道を北上。新潟方面には雪の予報が出ている状況で埼玉から群馬、新潟方面を目指した。相変わらずドライ路面での快適性に大きな変化なしであり、その「乗り味のいいコンフォートタイヤ」というパフォーマンスは、現在も維持されている。
そんなドライ路面の走りを味わいつつ関越自動車道をどんどん北上。この日は幸いにして群馬と新潟県の県境までは晴天だったため、月夜野インタチェンジで国道17号線に降りるまで完全なるドライ路面だ。幹線道路もほぼ無雪状態だったが上越新幹線の上毛高原駅周辺から水上温泉エリアにある脇道やワインディングルートへ入ると、数日前まではかなりの降雪があり、路面にはしっかりと雪がついていた。
さらにテスト走行日は前夜から晴れ上がり、放射冷却によって気温が下がっていたようで日の陰った部分はしっかりと凍結路が顔を見せるという路面状況だった。約1年前、下ろし立てのシンクロウェザーが難なく走り抜けたような雪道だが、果たして今回はどうか?
速度超過に気をつけて走ればほぼ冬タイヤとしてストレスなし
●圧雪と凍結の入り交じった路面もクリア
まずは慎重に圧雪路へと走り込んだ。足で踏むと細かい雪がキュッと泣くような路面状況で、ちょっと手で雪面を掘ると凍結路面が所々に顔を出すような状態。しかし、そんな路面で試した発進でも、わずかな空転もトラクションコントロールの制御によってクリアしつつ、スッとスタート。タイヤはグリップしながら発進し、それは登坂路でも大きくスリップすることはなかった。
一番の懸念、下りのブレーキングにおいてもABSの作動は予想の範囲内であり、問題なく安定した制御が行われ安全に減速できる。もちろん速度に関してはコーナー手前で十分に減速するし、通常走行でも30~40%減で走る。凍結路はありつつも、この日の路面状態は総じて穏やかであり、シンクロウェザーにとっては「たやすい路面状況」だったようだ。
当初は“かすかな心配”を抱いていたが、走行距離も使用の頻度もほとんど一般ユーザーと同じレベル。この時点で大きな性能低下があるようでは、当然困るわけだが、2年目の雪道レポートも「問題なし」と報告できるだけの走りを示してくれた。
●その上で自分にとって最良の“冬タイヤ選び”を考えてみる
もしスタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤで迷った場合には自分の生活エリアと以下の条件を当てはめて考えてみてほしい。
1 頻繁に3℃以下になる地域
2 凍結路面や圧雪が多い地域
3 雪が積もりやすい地域
といったエリアに居住しているとか、仕事やレジャーなどで、頻繁に積雪地域を走るようであれば迷わず「スタッドレス」をお勧めする。日常的に凍結の可能性のある北海道や雪国の人に「シンクロウェザー」を積極的に薦めようとは思わない。
一方で一冬に数回、5センチ程度の積雪があるだけ、というようなエリア、例えば東京をはじめとした大都市圏のユーザーや、箱根あたりでノーマルタイヤのまま立ち往生したり、事故の当事者になっている状況を見るにつけ、「このような人にこそシンクロウェザーを試してほしい」という気持ちになる。改めて言うが「ノーマルタイヤでの雪道走行」は違反行為。冬用タイヤがなければタイヤチェーンを用意するか、車での外出を諦めるか……。それ以外に手段はないと言うことを自覚して欲しい。
しかしシンクロウェザーのようなオールシーズンを装着していれば、ドライ路面での快適な走りも含めて、どこに向かおうとも“突然の降雪に不安”を抱きながら走らなくていい。その安心感は大きなゆとりになる。
また雪国に隣接するエリアの人たちにも「四季を通じて安心できるマテリアル」として検討することをお薦めする。
気がつけば3月も半ばを過ぎ、春を迎えようとしているが、まだ降雪のニュースが入ってきている。そんな状況でも「シンクロウェザー」を装着して1年と2ヶ月、約1万キロを走り切った今、無事に2シーズン目の冬を過ごし、春を迎えられそうだ。そして今度は2度目の夏タイヤとしての活躍に期待したい。
【プロフィール】
佐藤篤司(さとう・あつし)/男性週刊誌、男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。







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